ダンダダン
第8話「なんかモヤモヤするじゃんよ」
11月21日(木)放送分
「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載中の芥見下々(あくたみ・げげ)さんのマンガが原作のテレビアニメ「呪術廻戦」の第2期。呪術師、呪詛師、呪霊が渋谷に集結し、かつてない大規模戦闘を繰り広げる「渋谷事変」で、最強の呪術師・五条悟が封印されるという衝撃の展開も話題になっている。10月12日にMBS・TBS系で放送される第2期・第12話(第36話「鈍刀」)では、呪術高専1年生の釘崎野薔薇と呪詛師の重面春太(しげも・はるた)が対峙(たいじ)し、苦戦する釘崎の元に一級呪術師の七海建人が現れる。釘崎野薔薇役の瀬戸麻沙美さん、七海建人役の津田健次郎さん、重面春太役の羽多野渉さんに第12話の収録の裏側、「渋谷事変」に懸ける思いを聞いた。
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瀬戸さん テレビアニメ第1期が放送されている時に、「ジャンプ」本誌の連載では「渋谷事変」が描かれていて、展開されていた内容を踏まえて、アニメのスタッフさんがいろいろ気を遣ってくださっていたこともあって、あえて読み進めていなかったんです。第2期が始まるタイミングで原作を読み始めたら、正直、重い気持ちになってしまいました。野薔薇の大事なシーンに向けて、どうしていこう……と。「渋谷事変」全体を見て思ったのは、あまりにも大きすぎる戦いだなと。みんなこれまでもすごい戦いをしてきたし、パワーがある人たちが集まっているのに、こんなにもかなわないことってある?と、絶望感みたいなものがありました。
津田さん それと同じように、僕もどうしても重い気持ちになってしまうと言いますか、「渋谷事変」がついに来るのかと思っておりました。とはいえ、「呪術廻戦」の持つおどろおどろしさ、残酷さ、スピード感があって、やはり面白い作品だなと思いました。舞台が渋谷であること自体も生々しいと言いますか。僕ら東京に住んでいる人間は、どこで何が起きているのか、なんとなく分かる。僕はハロウィーンに渋谷には行かないタイプですけど、もし、仕事で居合わせてしまったら、僕はどこにいるんだろう?と考えることもありますね。
瀬戸さん どこにいたら生き残れるかなって、考えちゃいますよね。
津田さん ね、思いますよね。渋谷のこの辺だったらギリ大丈夫かなとか。
羽多野さん 津田さんがおっしゃるように読者の皆さんも「渋谷事変」に対して並々ならぬ思いを抱えてらっしゃるのだなと感じます。僕は原作を読んで、非常に情報量の多い、複雑な展開だなと。登場人物たちのそれぞれの戦う目的や、戦わなければならない因果のようなものがあって、一度読んだだけではなかなか頭に入ってこないというか。何度も繰り返し読んで分かってくる非常に深いストーリーだなと感じました。ただ、重面視点になった途端に「ごめんなさい」しか言えなくなります(笑い)。
瀬戸さん 私は原作を読んでいて血塗(けちず)の見た目が可愛いなと思ってずっと好きだったんですけど、アニメになって色が付いたら気持ち悪いなと、おぞましさを感じてしまいました(笑い)。「渋谷事変」では、虎杖(悠仁)とナナミン(七海)です。ナナミンはエピソードを通して好きで、津田さんを前にしてお話しするのもあれなんですけど、どんなお芝居になるのか勝手にすごく楽しみにしているシーンがあります。
津田さん プレッシャー(笑い)。
瀬戸さん 虎杖は「渋谷事変」に入ってから、本当にしんどいことが降りかかってくるので、すごく心配になっちゃって。虎杖を一人にしたくないなって、本当に思いました。「渋谷事変」ですごく気になる、心配なキャラクターになってきたなと思います。
津田さん 僕は野薔薇と虎杖です。野薔薇は「渋谷事変」では、非常に劇的な感じになるので、2人の動向は見逃せないですね。虎杖は、第1期の時から好きなキャラクターナンバーワンです。彼の成長物語でもありますので、やっぱり虎杖には頑張ってほしいなとずっと応援しております。
羽多野さん 原作を読んでいて、涙が思わず流れそうになったのはメカ丸ですね。すごく切ない。なおかつ、この「渋谷事変」においては、彼の生きた証がなければ、どうにもならなかったのではなかろうかと。彼が「大切なものを守りたい」という、生きた証みたいなものが大切に描かれていて、ぐっときちゃいましたね。
瀬戸さん 今までそれぞれの戦いがあった中、「渋谷事変」に突入すると、全員が総力を結集しても、事態が終息しないような物語が繰り広げられます。野薔薇の役どころ的には、この大戦の中でトップの人たちと戦える実力ではないのですが、野薔薇はそれを表には出さない。自分ができることをやる人だし、すごく強いものを持っている人なので、そこはぶれないなと。野薔薇の中にもいろいろな思いがあるだろうけど、せりふとしては描かれないので、私の中でしっかりと野薔薇の描かれていない心持ちを想像して、アフレコに臨みたいと思っていました。
津田さん 「渋谷事変」は、いつ来るのかと覚悟しながら生きてきましたけど、ついに来てしまったという。「呪術廻戦」の第2期、「渋谷事変」は、すごく楽しみにしていて、「早く演じたい」という待ち遠しさと同時に、さみしさも入り乱れる。そんな矛盾した気持ちで挑んでいます。先のストーリーを知っているからこその思いがあります。とはいえ、第1期も非常に楽しんで頑張りましたが、第2期もさらに気合を入れてやらんとなと思っております。
羽多野さん 僕は、普段でしたら、自分の演じるキャラクターがどんなものが好きで、どんなふうに生きてきたのかな?と深掘りをして役作りをするのですが、こと重面春太に関しては、そして「渋谷事変」に関しては、一切合切そういったものを捨て去ることにしました。重面は、その瞬間に自分の欲求を果たすために生きるというキャラクターかなと。ほかのキャラクターは、それぞれが目標、目的を持って戦っているんですけれども、重面に関してはそうではなく、その瞬間自分が楽しめる、自分が弱い者をいじめて快楽を得られるというところだけを抽出して、マイク前に立っておりました。ある意味、いつもの役作りとは真逆のことをしましたね。
羽多野さん テストでは、原作の重面の表情や動きを見てやらせてもらったのですが、テストが終わった時にディレクターさんから、もっともっと表情豊かにしてほしいと。相手が近くにいても、遠くに声をかけているような不気味さというか、「人と人との心の距離感を全く理解していないしゃべり方をしてみてください」という演出をいただきました。本来であれば、掛け合いをする上で人との距離感を考えながらやるのですが、それをあえて壊すというか。「何も人のことを考えていない」という意識で臨ませていただいたので、正直、どんなふうに演じたのか、覚えていないんですよ(笑い)。あの再現は多分二度とできないと思います。
羽多野さん 津田さんが怖かったです。
津田さん その記憶は残っているんですね(笑い)。
羽多野さん ええ。途中から津田さん(七海)がものすごい形相で現れて、すごい怖い目に遭わせられたという強烈な記憶だけは残っています。果たして自分(重面)が何をされたのか、自分がどうなっちゃったのか、全然覚えていないんですよね(笑い)。そのぐらい強烈でした。
瀬戸さん 本当に重面はひどいことをするし、すごく嫌いで、本当に嫌いで。今回掛け合いでご一緒することになったので、思い切り激突していくしかないと思っていたんです。ただ、演じる羽多野さんは、現場でも本当に優しくて、癒やしの空気感がすごく出てらっしゃる。でも、羽多野さんは重面だと、すごいギャップを感じつつでした。いざマイク前に立つと、そこは関係なく、狂気的な感じに恐怖を感じて、すごくすてきだなと思いました。羽多野さんが話されていた、ディレクション受けて変わった距離感というのも、「こういう見せ方もあるんだな」と感じましたし、やはり掛け合いだからこそ引き出されるイラ立ちであったり、緊張感であったりというのは、一人ではなかなか出せないものだと思って、すごくやりがいがありました。
津田さん 僕自身、七海自身も、伊地知や野薔薇、新田(補助監督の新田明)が大変なことになっちゃって、ボンと怒りの火が燃えている感じのシーンで、前面にそれを出していたなと。七海はあまりそうやって感情を出さないので、分かりやすく「怒っているな、この人」というのが出た回だなと思います。あと、重面にはイライラしますよね(笑い)。ろくでもないですよね。
羽多野さん (笑い)。
津田さん 重面は理屈がないのがまたムカつくんです。
羽多野さん 何も大きな目的がないんですよね。
津田さん 一番たちが悪い。野薔薇も頑張って重面と戦うのですが、まだまだだから。
瀬戸さん やっぱり強くはないというか。周りに強い人がたくさんいすぎて、野薔薇は一歩届いていないところがあって、その苦しさはありますね。
津田さん 野薔薇を見ていて苦しい、悔しいというかね。
羽多野さん 本当に「ごめんなさい」と思いながら……(笑い)。
津田さん そういう役割で羽多野くんが僕をイラつかせてくれたから。一緒に収録できてよかったです。
羽多野さん そういえば今思い出したのですが、収録の時に津田さんご本人から「ちょっと、ここのシーンをもう1回やってもいいですか」と最後にリクエストされていて。そのリテークがめっちゃ怖くて。
瀬戸さん 私も覚えています。
羽多野さん 第12話の終盤のシーンなのですが、ゾクゾクしました。
瀬戸さん 原作から応援している方も多いので、期待している場面であったり、せりふであったりがたくさんあると思います。「渋谷事変」は、圧倒的な強さを前にした絶望もあって苦しいですし、現実で起きたら嫌なんですけど、物語として描かれているから、そこが見ている人の心を動かす面白みになる。今回は苦しい方で心が動くとは思うんですけど、皆さん、その絶望感に揺さぶられてほしいなと思います。
羽多野さん いろいろな登場人物の視点で楽しんでいただけるストーリーなのかなと思います。それぞれの戦いの中で生まれているストーリーをぜひ細かいところまで見ていただいて、「これはこういう意味なのかな」「このキャラクターの一言はこういう意味なのかな」と考えながらご覧いただくと、非常に深く、先々のところまで伏線が張り巡らされているのではなかろうかと思います。本当に見どころしかないストーリーだと思います。
津田さん 野薔薇や七海のドラマをしっかり見届けていただけたらなと思っております。いろいろなところで同時多発的にドラマが繰り広げられていて、カタルシスみたいなものもあります。怖くてしんどいシーズンではありますけど、ドラマチックで面白いものになっていると思います。
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