「西洋骨董洋菓子店」「大奥」「きのう何食べた?」など数々のヒット作を手掛けるマンガ家のよしながふみさん。商業誌での連載のかたわら、プロデビュー以前に始めた同人活動を現在も続けており、今年の年末に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催される「コミックマーケット103」(冬コミ)にも参加予定だという。仕事としてマンガを描き、オフでもマンガを描き、家族からは「ずっとマンガを描いているじゃない」と言われるというよしながさん。マンガを描き続ける理由、仕事をする上でのポリシーを聞いた。
ウナギノボリ
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よしながさんは1971年生まれ、東京都出身。幼い頃から大のマンガ好きで、高校3年生の時に初めて同人誌を執筆。1994年に「花音」(芳文社)に掲載された「月とサンダル」で商業誌デビューした。ボーイズラブ(BL)誌を中心に活動し、1999年に「Wings」(新書館)で連載を開始した「西洋骨董洋菓子店」がドラマ化されるなどヒット。2004~20年に「メロディ」(白泉社)で連載された「大奥」は、映画化、ドラマ化、アニメ化され、第13回手塚治虫文化賞マンガ大賞、第42回日本SF大賞など多くの賞に輝いた。「モーニング」(講談社)で連載中の「きのう何食べた?」もドラマ化、映画化されるなどジャンルを問わず数多くのヒット作を世に送り出している。
2022年11月からは「ココハナ」(集英社)でオムニバス作品「環と周(たまきとあまね)」を連載。家族、友情、恋といったさまざまな“好き”の形を描いた1話完結型のストーリーが人気を集め、コミックスが10月23日に発売された。さらに、2024年には「ココハナ」で芸能界が舞台の新作を連載予定だという。
よしながさんは、同人誌を描き続けるためにプロのマンガ家を目指したという。そして、現在も両方の活動を精力的に続けている。
「商業誌は仕事なので、納期までにきちんと入れるということを心がけてやっていますけど、同人誌は本当に遊びなので。話の本(もと)と末(すえ)が合っていなくてもいいし、自分のやりたいようにやっています。読者さんの反応も、もちろんうれしいですけど、考えなくてもいいという楽しさもあります。同人誌は、まさに同好の士の方たちと一緒に楽しむものですからね。はたから見ると、マンガ描いているだけじゃん!となりますが、私の中では仕事と遊びなので心持ちがだいぶ違う。例えば、旅行へ出掛け息抜きする方たちがいるように、私にとって同人誌は息抜きだから、大変なことは何にもないんです。普通の人が遊びに行くのと同じ感覚で、私もコミケに行くんです」
同人活動も含め30年以上、マンガを描き続けているよしながさんだが、「マンガ家を辞めたいと思ったことは、幸いにもないかもしれないですね。楽しいですね、ずっと」と笑顔を見せる。改めて、よしながさんにマンガを描く醍醐味(だいごみ)を聞いてみた。
「最初の頃は分かっていなかったのですが、自分が“読む”ためにマンガを描いているのだなと思いました。元々マンガを読むのがすごく大好きで、むしろ描かなくても、読んでいるだけでもいいんですけど、『こういうマンガを誰か描いてくれないかな』と頭の中で考えているものって、大概誰も描いてくれないので、自分で描くしかない。自分で形にすると、自分でも読めるようになる。読むために描いていて、描きながら読んでもいる。だから、もちろん生みの苦しみはあるのですが、描くことは読むことと同じなのだなと。以前は、読むと描くは逆だと思っていたのですが、そんなことはなくて、結局ずっと読んでいるんです。そう考えると、やっぱりマンガを描くことが好きだなと思います」
公私ともにマンガを描き続け、数多くのヒット作を生み出してきたよしながさん。「マンガを描く上で大切にしていることは?」と聞くと、「仕事でやっている時は、とにかく締め切りを守ることです」という答えが返ってきた。
「それに尽きますし、それさえやっておけば何とかなるだろうと思って生きています。あとは体調管理。それが結果として出ると思っています。早め早めにやることが、その作品のクオリティーにも関わってくる。締め切りをただただ守るというよりも、締め切りを守ることで、もしアクシデントが起こった時にもう一回頑張れるということだと思うんです。本当にギリギリでやっていると、何か起こった時に完全に破綻してしまうので、何でも早め早めかなと。担当編集者さんにとっても、読者さんに対してもできる“誠実”の一つの形かなと思っています」
自身が描きたいものを突き詰めるためにも、締め切りを守ることが大切だという。
「私が守っている締め切りは“上っ面の締め切り”なので、本当のデッドが後ろにあるわけです。私は同人誌もやっているので『印刷所のギリギリはここ』というのも何となく分かるので、伝えられている締め切りがウソなのも分かっているんです(笑い)。でも、そのウソの締め切りを守ることで『ここをもうちょっとこうしたい』という時にやれるわけですよね。作業中、『ここはやっぱり直したい』という時も精神的に余裕があると直せます。アシスタントさんに『ごめんなさい、ここ全部差し替えて、背景もこうしたい』というようなお願いができるのも、日程に余裕があればこそなので」
マンガを愛し、読者に対して、仕事仲間に対して、誠実に向き合い続けるよしながさん。だからこそ、よしながさんが生み出す作品は多くの人の心に響くのかもしれない。2024年には「ココハナ」で芸能界が舞台の新作がスタートする。次はどんな世界を見せてくれるのか、期待が高まる。
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