名探偵コナン
#1146「汽笛の聞こえる古書店4」
12月21日(土)放送分
「西洋骨董洋菓子店」「大奥」「きのう何食べた?」などで知られるマンガ家のよしながふみさんの最新作「環と周(たまきとあまね)」(集英社)のコミックスが10月23日に発売された。同作は「ココハナ」(同)で2022年11月に連載を開始し、今年7月まで隔月で連載された1話完結型のオムニバス作品で、現代、明治時代、江戸時代などさまざまな時代を舞台に、家族、友情、恋といったさまざまな“好き”の形が描かれた。全5話を通して読むと、関係のないように見えていた各エピソードの登場人物たちが輪廻(りんね)転生でつながっていることが分かる……という展開も読者を驚かせた。同作の構想が始まったのは約6年前で、よしながさんが長年温め続けてきた作品でもある。数々の映像化作品を世に送り出してきたよしながさんが「環と周」に込めた思いとは……。執筆の裏側を聞いた。
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「環と周」は、よしながさんが「ココハナ」の河野万里子編集長の長年のラブコールに応え、連載を開始した。よしながさんの新連載は約16年ぶりで、同誌に初登場することになった。河野編集長からよしながさんが最初にオファーを受けたのは、約12年前。当時、よしながさんは「大奥」「きのう何食べた?」という二つの連載を抱えていた。
「最初にお話をいただいた時は、『きのう何食べた?』がコミックス4、5巻分で終わると思っていたので『ちょっと待ってください』と言っていたのですが、なんだか終わらなくなっちゃって(笑い)。10巻、15巻とやっても終わらなくて、これはもしかして『大奥』のほうが先に終わるかもしれないと」
よしながさんが話すように、2020年12月に「メロディ」(白泉社)で「大奥」の連載が終了。そこで、「ココハナ」で新連載が動き出そうとしたが、コロナ禍により当時構想していた企画の取材が滞ってしまった。そんな時、よしながさんの「愛がなくても喰ってゆけます。」を連載していたマンガ誌「マンガ・エロティクス・エフ」(太田出版)の元編集長・上村晶さんとよしながさんが温めていた企画が浮上したという。
「上村さんとも『いつか短編をやろう』という話をしていて、それが『環と周』だったんです。河野さんとの企画の取材が進まないという時に、今この企画を集英社さんに持ち込んだら、とりあえず両方の義理がいっぺんに立つのでは?と(笑い)。『環と周』のような輪廻転生ものは、それこそ6年越しで『ずっとやりたいね』と言っていたので、こういう形で実現してすごくよかったです」
「環と周」は、夫婦、友達と関係性は違えど、「環」と「周」という同じ名前のキャラクターが登場する。エピソードによって、環と周が同性の場合もあれば、異性の場合もあり、舞台となる時代も現代、明治、江戸時代とさまざまだ。全5話の最終話では、江戸時代を舞台に侍の環と、その幼なじみの周の悲恋が描かれ、二人の生まれ変わりがほかのエピソードの“環と周”として登場していたことが分かる。
よしながさんは、輪廻転生を描いた里中満智子さんの「海のオーロラ」などからヒントを得て「一話一話独立して読めるけど、続けて読んだ時、コミックスで読んだ時に味わいがある感じにしたほうが楽しいかな」という思いから「輪廻転生」を題材にした。ただ、6年前、構想を練り始めた時と比べ、ストーリーの趣は変化しているという。
「6年前の時点で、第1話と第5話は既に出来上がっていて、その間をどうするか?と、第2~4話を考えていきました。6年前は、環と周が男女固定で、たまに同性の時もあるみたいな感じで、ストーリーも恋愛に寄っていた気がするのですが、今回打ち合わせをする中で恋愛の縛りもいらないかなと。とにかく『ご縁がある』という感じでいきましょうと。また、6年前は悲劇っぽいストーリーが多かったのですが、そういうのもやめてしまいました。第5話だけがそういう話ですが、人生は特段悲しいことが起こらなくても、なんだかんだでドラマはあるよねと。まさに時代の変化というか、6年間で私自身の心境も変化しているのだと思います」
「環と周」は、江戸時代を舞台とした第5話こそドラマチックな悲劇を描いているものの、ほかのエピソードでは、日常の中で起こるささいないさかい、感情の機微を丁寧に描いている。分かりやすいハッピーエンドではないエピソードも多いが、読後にはそれぞれの登場人物たちの「好き」という思いがじんわりと心にしみる。よしながさんに各エピソードの制作の裏側を聞いた。
明治時代の女学生の環と周が登場する第2話は、運動会の髪を結う速度を競う髪結い競争のシーンが印象的だ。
「当時は、本当に運動会で髪結い競争というのがあったらしくて。髪結いで使うリボンも当時は輸入で関税がかかって高価な物だったので、リボンでおしゃれするのが最高のおしゃれみたいな感じで、このエピソードは服飾がすごく楽しかったです。ただ、明治時代は10年たつと文化が様変わりする時代で、短編なのに資料集めがすごく大変でした」
第3話では、時代が1970年代になり、病気で死期が近い女性の環が、幼い少年の周と彼の母親に出会い、生活を手助けすることになる。
「編集さんのお二人が『この年になると、若い人たちに何かしてあげたくなる』『応援してあげたくなる』とおっしゃっていたんです。それがすごくすてきだなと思って、このエピソードを描きました。確かに、私もいろいろな仕事先で、男女問わず40代、50代になってくると、若い人たちが自分たちの時よりもいい環境で仕事ができるようになってほしいとか、そういうことに尽力したいというお話を聞くことが増えたんです。実は私自身は、アシスタントさんも同年代なので、若い人を目の当たりにすることが少なくて、皆さんのそういう感覚がすごく新鮮で、描きたいなと思いました」
第4話の舞台は終戦直後の闇市で、かつて軍の上司と部下だった環と周が登場する。このエピソードでは、輪廻転生ものならではの苦労もあったという。
「生まれ変わりものなので、第4話の二人が、第3話に登場する1970年代の環と周に生まれ変わらなければいけなくて、ほかのエピソードとの兼ね合いで、ちょうどいい時代設定が戦後すぐしかないという。明治時代も大変だったんですけど、闇市もなかなか大変でした。とりあえず、いい機会だからドラマ『ガラスのうさぎ』や、かたせ梨乃さん主演の『肉体の門』を見たりしました。また、環と周は復員兵で『復員兵と言えば横溝正史』と思って『犬神家の一族』のスケキヨも見ました(笑い)。いろいろな作品を見て、戦時中は厳しい感じなのですが、戦後すぐはちょっと明るいなと、時代の空気を感じました。第2、3話が悲しいお話になっているので、この第4話は未来の希望がある感じの話にしようと思って描きました」
ちなみに、江戸時代が舞台の第5話では、「大奥」で培ったノウハウが使えるかと思いきや、舞台が長屋だったため、そういうわけにもいかず、アシスタントからは「江戸城じゃないのか!」というツッコミが入ったといい、「同じ江戸時代でも、アシスタントのみなさんはやっぱり大変だったみたいで」と苦笑いしていた。
現代を含め、それぞれの時代で生きる人々の空気感を捉え、人物だけでなく舞台設定を細やかに描写した「環と周」。それぞれの環と周に共通しているのは、二人が「出会ってよかった」と感じているという点だ。
「最初に『環と周』を考えた時は、最後のエピソードでようやく幸せになるような生まれ変わりものを考えていたんですけど、いや、そんなこともないなと。どれも『出会ってよかった』という話にしたほうがいいなと。決してハッピーエンドで終わるわけではないけど、『この人と会わなければよかった』と思っている二人はどの時代にいなくて、『あの時、あの人と出会ってよかった』という話にしたかったんです」
コミックスでは、連載された全5話に加えて、描き下ろしエピソードが収録される。描き下ろしを読むことで、「環と周」という物語の印象がまた変化するという。
「描き下ろしまで読むと、今職場で一緒に働いている人、おうちで一緒にいる人が『実は生まれ変わりかも?』と思えるかもしれません。ドラマチックな出会いではなかったとしても、すごい奇跡があって、それぞれの皆さんが今隣にいる人と関係性を築いているのは間違いないと思いますので」
何度も繰り返し読むことで深まる「環と周」。さまざまな「好き」に思いを巡らせてみるのもよいかもしれない。
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