ドラゴンボールDAIMA
第6話 イナヅマ
11月18日(月)放送分
人気アニメ「ガンダム」シリーズの生みの親として知られる富野由悠季監督がこのほど、KADOKAWA・ドワンゴによる“ネットの高校”N高等学校・S高等学校(N/S高)の生徒に向けた特別授業「学園生のための特別授業 富野講座」に登場した。富野監督は、多様性、ニュータイプ論、政治家などについて語った。
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「多様性という言葉がメディアで都合よく取り上げられていると思いますが、富野先生はどう思われますか?」という声に「多様性というのは、お勉強ができる人が勝手に使っている言葉です。おそらくその言葉を意識して使っている人に、多様性があるかどうかはかなり怪しいと思います。つまり先ほど農業の話をしました。農家は野菜のことしか考えていないのかというと、そんなバカなことはありません。我々の暮らしというのはかなりいろいろなことを考えていないと、野菜一つ育てることができないし、成り立っていきません。そうやって、現在までの人類史を作ってきたということを考える必要があります。つまり、わら一つ取っても、わらをなうことによって縄を作ることができますが、人々が暮らしを立てるために、そのことだけを考えていたわけではないですね。売ることも考えなければいけないし、それを一人の人間がやっていたかもしれない。そういうことを言うのに、わざわざ多様性という言葉を使うでしょうか? つまり言葉だけでものを考えているような人たちがたくさんいるわけです。そういう人たちが賢いのか?という問題は、やはり別に置く必要があるんです」と持論を展開した。
「ニュータイプ論に近い話ですが、監督はガンダムエースでも“ニュータイプの芽が出た”というお話をされていました。現代社会から見て、これからの社会に必要なことは何かをお願いします」と聞かれると「今回のプーチンの戦争によって、ニュータイプになるためのハウツーを考えることができました。そこにはある方向性がありました。つまり人類史の中で、なぜ、一番頭がいいといわれる哲学者で政治家になった人が一人もいないのだろうか?ということです。そこが切り口でした。哲学という“考え方を考える”ということを述べる哲学者たちは、全部自分の中だけで完結してしまうので、外に向かって行う政治というものが一切合切できない人たちなんです。ものを考えることができる人が、人を統治する、つまりガバナンスをする、政治をする、という考え方がニュータイプ論を生み出すためのハウツーになると思いました。今回、プーチン大統領は、“ゼレンスキーっていう喜劇役者だった何かちゃらちゃらしてるあいつが大統領になったウクライナなら、ここでやってしまえば一発でロシア領になるかもしれない……”と思ったんだろうと思います。ところが3日目にゼレンスキー大統領が“我々はここにいる”と言ってしまった。つまり“抵抗する”と。その瞬間から1年以上も抵抗している。何度も言います。喜劇役者だったんです。それが政治家になってしまった。政治家になって、ある日突然、プーチン大統領にとっての敵ができてしまったんです」と語った。
「“なぜ哲学者が政治家になれないんだ?”というくらいに、違う資質の人、全く違うタイプの人が政治家になってくれればいいっていう考え方があるわけです。ゼレンスキー大統領のように、経験値がない人が政治家になってくれてもいいのです。今まで我々が信じ込んでいたような、政治家タイプの人間や、政治家の家系の人が政治家になれば間違いなく、今後の日本の政治が良くなるということは絶対にありません。きちんとした政治家が生まれ育つような風土を作っていくことによって、ニュータイプができるのではないかと思っています。つまりゼレンスキー大統領みたいなタイプの人を基準にして考えていくことで、今後の可能性が開けるのではないかと考えています。そういう勉強の仕方をしてくれる人が政治家になってくれれば良いと思っています」と続けた。
「この30年ぐらい、松下幸之助さんのように、実業家が政治塾みたいなものを作って、政治家を育てるということもやりました。けれどもそれも昭和の時代からの伝統のような形の中で、古いタイプの政治家を育てることしかやっていなかったので、有能な人が育っていない気がしています。どうやって有能な人を見つけていくのかというと、少なくとも今までの我々の持っている“何々タイプ”ではない人を見つけ出してくる必要があります。それで皆さん方の世代がとても重要になってくるんです。つまり“そういう私になるんだ!俺になるんだ!”という努力の仕方、勉強の仕方をしていただきたいと思っています」と語った。
「一つだけ分かりやすい人のタイプの基準があります。“お勉強のできる人が、有能な政治家にはなれない”ということです」と語り始めた。
「それだけは覚えておいていただきたい。その前例を日本は前の戦争までやっています。海軍と陸軍の大学に入る生徒たちというのは、全てが才能のある人の集まりでした。そういう人たちが日本を敗戦に導いたんです。つまり勉強ができればいいのではありません。さらに戦後の立て直しをしてきたのは誰だったのか? それは一流大学を出た人ではないのです。ソニーやホンダを作った人は一流大学出ではありません。生え抜きのエンジニアだったりするわけです。つまり、“異能の人を連れてこなければいけない”とか“異能の人であるべきなんだ”ということを、我々はいまだにきちん受け入れることができません。“あいつは政治家タイプなのかもしれない”とか“営業タイプなのかもしれない”というふうに思い込みすぎています。それは、ものすごく危険なことではないかと思っています。このN/S高の出身者の中にも、国家を担えるような人材がいるかもしれません。“国家を担ってもいいんだ!俺に担わせろ!”というキャラクターがN/S高から出てきてほしい! ですから諸君には頑張っていただきたい。そして、おじいちゃんが安心して死ねるようにしておいてください(笑い)。それがないと死にきれません。」
「突然、政治に参入しようっていうのも、全然間違いではないっていうことを知ることができた気がします」という声に「全くそう思います。むしろ、僕のような立場に立った時に、こういう話ができるようになってしまった時に、“まずかったな!”と思ったこともあります。今みたいな理屈で考えるのだったら、“どうして20年前からできなかったんだよ?”と全部自分に帰ってきているんです。僕にそれだけの気力が無かった。“政治家になろう!”というふうには絶対に思えなかった。やはり自分の中に欲がなかったのか?そういうことを真剣に考えていなかったかもしれない……と反省している自分がいる。そう気が付いたから“しゃべるしかない! 同年齢から嫌われてもいいからしゃべろ!”と思うようになりました」と語った。
最後に「今日はこういう形で、僕自身も実をいうと、皆さんのお顔を拝見するまで、皆さんのことを信用していませんでした。言葉だけで誰が信用しますか?“N/S高がこういうことをやっていて、こういうようなカリキュラムがありまして、こういうような生徒がいまして、こういうところの講師をしてくれませんか?”と大人は平気で言います。けれども、こうして皆さん方の顔を見ることができたので信用することができました。これをもっと、実効性のあるものにしていきたいとも思っています。もし次の講義を設定していただけるのであれば出ます。何度も言います。“僕の同年代から嫌われようが何しようが、ウソをしゃべる気はないから、しゃべってもよければ、しゃべりたい!”と思います。僕ね、もう少しここに来る皆さんが、違うタイプの人かと思っていました。すごく安心しました!とてもうれしかった!」と呼びかけた。
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