鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎:関俊彦×木内秀信 初めて語られる“鬼太郎の父たちの物語” 昭和の映画のように

「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」に出演する関俊彦さん(左)と木内秀信さん
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「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」に出演する関俊彦さん(左)と木内秀信さん

 水木しげるさん原作のテレビアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」テレビアニメ第6期の“エピソード0”となる劇場版アニメ「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」が11月17日に公開される。「ゲゲゲの鬼太郎」の長編劇場版アニメが公開されるのは、テレビアニメ第5期の劇場版として2008年12月に公開された「劇場版 ゲゲゲの鬼太郎 日本爆裂!!」以来、約15年ぶりで、鬼太郎の父(かつての目玉おやじ)と水木が主人公となり、“鬼太郎の父たちの物語”が初めて語られる。舞台は昭和31年、哭倉村(なぐらむら)で、行方不明になった妻を探す鬼太郎の父(かつての目玉おやじ)、帝国血液銀行に勤めるサラリーマンの水木が哭倉村で出会うことになる。鬼太郎の父(かつての目玉おやじ)役の関俊彦さん、水木役の木内秀信さんに収録の裏側を聞いた。

ウナギノボリ

 ◇見る人に覚悟を突きつけるような厳しさ

 --水木さんの作品の思い出は?

 関さん 実写の白黒の「悪魔くん」「河童の三平」は、アニメの「ゲゲゲの鬼太郎」と共に強烈な印象がありますよね。「悪魔くん」は、悪魔くんの役をやっていた子(金子光伸さん)が、その後、夢中になって見ていた実写の「ジャイアントロボ」で大作少年を演じていて、そんなところも面白かったです。「河童の三平」は主題歌も強烈に覚えています。「河童の三平」に出ていたコンビ(金子吉延さんと牧冬吉さん)は、「仮面の忍者 赤影」で青影、白影を演じていて、子供心に不思議なワクワク感がありました。

 木内さん やっぱり「ゲゲゲの鬼太郎」が一番印象に残っています。テレビアニメ2期だと思います。1期も再放送で見ていました。おどろおどろしい印象で、熊倉(一雄)さんの主題歌も印象的で、子供心に怖かったです。今回の「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」もそんな懐かしい雰囲気があって、僕は入りやすかったです。

 --シナリオを読んだ印象は?

 関さん 台本が3冊もあったんです、そんなにあるの!?と(笑い)。最初に渡された台本には、血まみれの地蔵がいっぱいある中に、鬼太郎の父と水木、鬼太郎が座っているビジュアルが描かれていて、鮮烈でした。触ったら血が付くんじゃない?って。監督がおっしゃっていたのは、子供向けというよりも、ちょっと背伸びした「ゲゲゲの鬼太郎」ということで、人間の業、醜さ、愚かさが描かれていて、どうしようもなく悔しいくらいにひどい世の中でも、そこに立ち向かって生きていかなきゃいけない。見る人に覚悟を突きつけるような厳しさのある脚本です。

 木内さん 子供の頃によく見ていた横溝正史の映画のようですよね。「鬼太郎誕生」ということで、どうやって誕生したのか?と楽しみに読みました。結末は言えないんですけど、ああ……となるようなところもありました。皆さんもそこを楽しみにしてください。

 --鬼太郎の父のビジュアルも話題になっています。

 関さん 茶碗に入って、手ぬぐいを頭にのっけている目玉おやじが、元々あった頭蓋骨(ずがいこつ)に入ると、まさにこの感じなんだろうな……と全く違和感がないんですよね。この鬼太郎の父に茶碗に入ってもらって、目玉おやじとの2ショットを見てみたくなります。

 ◇ハキハキしながら早口で

 --演じる際に意識したことは?

 関さん 「昭和30年代の白黒の日本映画のようなテイストをやりたい」ということでして、昔の白黒映画の役者さんのしゃべり方は、印象としてはちょっと早口なんですね。ゆりやんレトリィバァのモノマネみたい……と木内さんは言っていましたよね。

 木内さん そうそう(笑い)。オーディションでも、「昭和の白黒の映画のような雰囲気を出したいので、早口でやってほしい」という話がありました。ハキハキしながら早口でしゃべるんです。

 関さん 尺が短いので大変ですよね。

 木内さん 早くしゃべりながら、分かりやすく伝えるにはそうするんだろう?と考えながらやっていました。僕は長いせりふが多いですしね。ほかの現場ではあまり求められない早さです。オーディションに受かってから、作品をイメージするために「佐田啓二さん主演の『あなた買います』」という映画を見てほしい」という話がありました。求められているのは、戦争が終わり、復興していく中で、強く生きていくような空気でした。

 関さん 僕は、特に資料はなかったのですが「昭和30年代の白黒映画のイメージ」という話でしたので、小津安二郎の映画を家で見ました。せりふは割と淡白なんですよね。感情で説明しないのもポイントで、感情で説明してしまうと、押し付けがましくなることもあります。小津安二郎の映画を見ていると、サラッとしているんです。感情を押し付けなくても、サラッとした言葉でも見ている側に伝わる。あんなサラッとした顔をしているけど、心の中では、いろいろなものがうごめいているんじゃないか?と想像させる。それが当時の映画の手法だったのかな?とも思います。

 --関さんの演技は浮世離れしているようにも聞こえました。

 関さん 監督は「実写的な感覚」とよく言われていました。アニメのせりふ、感情の表現は、2次元のものを3次元にするために、ある程度の誇張が必要になります。いろいろな作品があるので、その作品にもよるのですが、今回は誇張を全部取り払ってしまう。普段は、アクションシーンでは、目を皿のようにして、あらゆるアクションに、自分の息を入れていこうとしますが、今回は画(え)に任せて過剰に入れませんでした。アニメから離れてはいけないんだけど、実写に近いテイストでした。なるべく感情を見せないようにしました。

 ◇丁寧に何度も演じてキャラクターを固める

 --収録の様子は?

 関さん 収録は3日間あって、1、2日目はずっと2人だったんですね。3日目に別のキャストさんも入ってきたんです。まずは、鬼太郎の父、水木のキャラクターを確立するために、何度も繰り返し演じました。鬼太郎の父と水木とは出会い、お互い交流する中で、心がほどけ、バディーになります。けん制し合っている空気から会話を重ね、お互いの目的のために一旦、手を組む。その過程を丁寧に描こうとしていました。そこまでの会話のキャッチボールが、前半の肝になっています。その雰囲気をどうやって作り上げるか? 監督と何度もやり取りしたんです。芝居のさじ加減でして、大さじ2杯だったのを1杯にして、小さじ3杯を足す……というように。

 木内さん 微妙なニュアンスなんですよね。僕も何行かせりふを読んだら、監督の話を聞いて……と何度も繰り返し、そこに関さんが加わり、関さんも監督の話を聞いて……とラリーが始まるんです。とても丁寧に作っていきました。

 関さん 台本の1冊目の後半くらいのところでイメージが固まったら、最初のシーンに戻って、固まったイメージで録(と)り直しました。

 木内さん 鬼太郎の父以外のキャラクターとの掛け合いは、3日目にそのキャラクターの役者が来た時に、録り直しました。

 関さん この2、3年はコロナ禍で別収録も多くなっていましたが、実際に隣にいる人の空気を感じながら。生きた会話をして収録できた方がいいですしね。

 --共演した中でお互いの役者としての印象は?

 木内さん 一緒にああでもない、こうでもないとやっていたので、先輩の演技を間近で見ることができて、とても勉強になりました。

 関さん 実は共演が初めてだったんです。

 木内さん 一緒の番組はあるのですが、会話があるのは初めてですよね。僕は、相手役が関さんと聞いてびっくりしました。

 関さん 監督は「大人向けの実写のような感覚で作ってみたい」という気持ちがあって、だから木内さんなんだな!と一緒に芝居して、感じました。木内さんの芝居力を感じて、監督がこの味を求めていたんだな……と分かったんです。僕の中では「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」イコール木内ですね。

 木内さん そんなことないですよ!

 --最後に公開を楽しみにしている人に向けてメッセージをお願いします。

 木内さん 大人が見ると、より一層楽しめる作品だと思います。怖いです!

 関さん 鬼太郎の父と水木の交流がこの作品の芯になっているので、その関係がどんなふうに変わっていくのかを見てもらいたいです。あと、劇場の明かりがつくまで帰らないでください!


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