ダンダダン
第12話「呪いの家へレッツゴー」
12月19日(木)放送分
アニメ制作会社・ボンズと「機動警察パトレイバー」のメカニックデザインなどで知られる出渕裕さんがタッグを組んだオリジナルテレビアニメ「メタリックルージュ」がフジテレビの深夜アニメ枠「+Ultra(プラスウルトラ)」で放送されている。出渕さんとボンズがタッグを組むのは約19年ぶりということも話題になっている。出渕さんに、同作の誕生の裏側を聞いた。
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「メタリックルージュ」は「キャロル&チューズデイ」などの堀元宣さんが監督を務め、「カウボーイビバップ」などの川元利浩さんがキャラクターデザインを担当。出渕さんは総監修、シリーズ構成として参加する。ボンズと出渕さんがタッグを組むのは、2002年放送のテレビアニメ「ラーゼフォン」以来、約19年ぶりということだが……。
「ボンズと仕事をしていなかったわけではないんですよ。デザインや脚本、企画の立ち上げの時にお手伝いしたこともありますし、南君(ボンズの代表取締役の南雅彦プロデューサー)とはたまに飲みにいきますしね。一から一緒に作るのは19年ぶりということです。ボンズは、南君がオリジナルアニメをやりたくて立ち上げた会社でもあるので、ヤマト(『宇宙戦艦ヤマト2199』)が終わったタイミングで、久しぶりに一緒にオリジナルアニメをやろう!という話から始まっています。その時は、SFをちゃんとやってみようという話をしていました。結果としてSFが肝となる作品ではなくなってしまった感はあるのですが」
まずは世界観を構築するところから始めた。
「以前から自分の中でずっとシミュレーションしていたものがいくつかあり、最初に三つほどの企画を提示しました。三つともそれぞれ全く別のアプローチのものを考えていたのですが、話していくうちに、それを統合して一つ歴史を作っていくことは可能だと気づいたんです。例えば『ガンダム』であれば、宇宙世紀という歴史がありますよね。その縦軸から派生していくことが可能な歴史、世界観を構築していってみようと。その上でだったら、その三つのうちの一つの話を膨らませて、世界観に組み込むことができるんじゃないか……となったのが女の子のアンドロイドの話。つまり今回の『メタリックルージュ』だったんです」
「メタリックルージュ」は、人間と人造人間が混在する世界を舞台に、人造人間<ネアン>の少女・ルジュがバディーのナオミと共に、政府に敵対する9人の人造人間の殺害という任務に当たることになる。作品の中で、世界観が説明されており、見ていると、この世界で何が起きたかが徐々に明らかになってくる。
「過去に戦争があり、地球人と友好的な異星人が共闘して、別の好戦的な異星人と戦った……などと言葉では説明したり、ビジュアルで見せたりはしているのですが、一クールで描ききれないところも当然あります。ベースとして歴史があるのですが、『メタリックルージュ』で描かれているのは、その一部であって、この世界の秘密を解き明かすものではない。今後もこの世界でほかの作品に派生させることができるようなな作りにしているんです」
SFではあるが、ルジュとナオミの“女性バディーもの”として打ち出していこうとしたという。
「最初はバディーではなく、一人のアンドロイド少女の悲哀を描こうとしていました。自分の兄弟のようなアンドロイドを一話ごとに暗殺していく女性のハードボイルド的な作品として組み立てようとしたのですが、それでは、ありがちになってしまいそうだし、それに何よりも作品が暗くなりすぎてしまう危険がありました。そういう作品は、個人的には好きなのですが、哀しいからこそ、どこか軽妙な楽しさが光るような作品にしたいと思ったんです。一人の主人公では、モノローグになってしまうのでやはり内面にこもってしまいがちになりますが、バディーものにすると、そこが解消できますし、二人の掛け合いや関係性によってドラマも生まれるし、テンポも出て、明るい感じの作品にもなります」
人造人間<ネアン>のルジュは、17歳くらいの見た目だが、実年齢は10歳で、世間知らず。相棒のナオミは、23歳で、人造人間<ネアン>を統括する政府機関<真理部>の特務捜査官。男性、女性のバディーではなく、女性二人にした狙いも気になるところだ。
「おっさんと女の子のバディーで、おっさんがぼやいて、女の子がキャピキャピするという形もあるとは思うのですが、同じ世代、同じ目線の女の子同士のノリツッコミのようなものがやはり楽しいしリズムも出るんじゃないかと思います。女の子のバディーものはこれまでありますし、それとは差別化しようとしたところもあります。ルジュは天然で、ボンヤリ系なところもあって、中身はまだまだ幼い子供です。言われたことを正しいと思ってやってしまう。あまりそういうタイプを主人公にはしないものですが、そこはあえてそうして、軽いけど理論肌のナオミとの化学反応を描こうとしました」
出渕さんとボンズがタッグを組んだSFということで、巨大ロボットものかもしれない……と想像してしまうアニメファンもいるかもしれないが、ルジュが巨大ロボットに乗って戦うわけではない。ルジュは赤い戦闘形態<メタリックルージュ>に変身して戦うことになる。
「南君から『変身して巨大になるのはどう?』『ロボットじゃないの?』とも言われました(笑い)。自分自身、特撮、変身ヒーローものに関わってきて、その特撮もののよさをアニメにフィードバックできないのか?と考えていました。グラディエーターデザインの竹谷隆之君、篠原保君という特撮を中心に活躍している非常に優秀な方々に声を掛けて、参加してもらいました。デザインだけパッと見て、巨大ロボットものかな?とミスリードされた方もいるかもしれませんね。僕らの国では文化として巨大ロボがあって、普通に受け入れてしまいますが、海外のターゲットも考えた時、あちらでは巨大ロボットは決して一般的ではない。ですから今回は等身大にこだわって巨大化案は却下させていただきました(笑い)。僕だって巨大ロボットのデザインでデビューした身ですから、巨大ロボットものには愛着はあるし、またやってみたい気持ちがないわけではないんですよ。迷ったところです。南君も僕もロボットアニメのサンライズ出身ですしね」
「特撮、変身ヒーローのよさ」をどのようにアニメで表現しようとしたのだろうか?
「日本の特撮ならではの作法をアニメに取り入れようとしました。竹谷君、篠原君のデザインで、テレビの特撮ではなかなかできないような、ハードで広がりのある舞台もアニメではできる。テック・ノワール、“女性版キカイダー”みたいなことを試みてみたかった。1980年代のOVAでそういうことをやろうとした作品はありましたが、今はあまりない。その世代の方には懐かしさを、そういう作品に触れてない世代には、逆に新しさを感じてもらえたらいいなと思います。最近のアクションはCGも多いですが、ボンズはメカ、アクションを描ける腕のある手描きのアニメーターがいるスタジオなので、ほぼ手描きなんです。村木靖君たちがチームとしてアクションの作画をやっています。これはすごいことなんですが、一方、デザインの線が多い!と言われてしまってます(笑い)。減らしたんですけどね」
「メタリックルージュ」は、緻密に構築された設定、バトルシーン、バディーの会話劇など魅力にあふれている。放送が始まったばかりということもあり、舞台となる世界の全貌が見えていないが、さまざまな秘密が隠されているようだ。今後の展開が期待される。
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