ガンダム:海外展開、VR、「閃光のハサウェイ」第2部、ハリウッド版はどうなる? 小形Pに聞く

「機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム」のビジュアル(c)創通・サンライズ
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「機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム」のビジュアル(c)創通・サンライズ

 人気アニメのガンダムシリーズが2024年に生誕45周年を迎える。同シリーズは、全世界に配信する3DCGアニメ、VR、ハリウッド版などさまざまな展開が発表されている。同シリーズを手掛けるバンダイナムコフィルムワークスの小形尚弘エグゼクティブプロデューサーによると、いずれも「これまで見たことがない映像」を目指しているといい、45周年でもとどまることなく拡大し続けるようだ。小形プロデューサーに同シリーズの新展開、さらには“気になる新作”について聞いた。

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 ◇3D、VRは可能性を広げるための挑戦

 富野由悠季監督が手掛けたガンダムシリーズの第1作「機動戦士ガンダム(ファーストガンダム)」は、1979年4月~1980年1月に放送され、2024年4月には45周年を迎えることになった。同シリーズは進化、挑戦を続けてきた約45年の歴史がある。

 2023年に発表された新作で、大きな注目を集めているのが「機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム」だ。シリーズ第1作「機動戦士ガンダム」の一年戦争のヨーロッパ戦線に焦点を当てた3DCGのオリジナルアニメで、Netflixで世界独占配信される。VR新規映像作品「機動戦士ガンダム:銀灰の幻影」の制作が発表されたことも話題になった。

 「50周年に向けて、これまでのファン、シリーズを見てこなかった若い人に向けた作品だけでなく、海外の展開にも挑戦していこうとしています。『復讐のレクイエム』は海外に向けた、これまでとは違うルックの作品です。VRは、ヘッドセット以外にも、イマーシブシアターなどさまざまな楽しみ方がある中で、『ガンダム』としても技術面、映像面で挑戦していきたかった。テレビアニメ、映画など以外の可能性を広げていくための挑戦です」

 「復讐のレクイエム」は、バンダイナムコフィルムワークスとSAFEHOUSEが手掛け、3D制作ツール「Unreal Engine5(アンリアル・エンジン5)」で制作する。

 「アンリアル・エンジンはアニメ制作でも使用してはいるのですが、将来を見据えてしっかり映像を作ろうとしています。3DCGアニメとして『機動戦士ガンダム MS IGLOO(イグルー)』もあり、その路線と言えばそうなのかもしれません。海外に向けてリアルテイストの映像を作り、Netflixという全世界に向けたプラットフォームで配信する挑戦になります」

 「銀灰の幻影」は、「Gloomy Eyes」「Battlescar」などを手掛けてきたフランスのVR制作会社Atlas Vと共同で制作する。

 「それなりに尺が長い映像作品になります。ゲームのようなインタラクティブなものではなく、完全に映像を楽しむ作品になっています。キャラクタールックもかなり面白く、2D、セルルックのような感じなのですが、3DのVR空間が舞台になります。今までにないものになっているはずです。今後、VR映像の需要が高まることを視野に入れた挑戦になります」

 ◇富野由悠季監督の新作は?

 「復讐のレクイエム」「銀灰の幻影」はいずれも挑戦的なプロジェクトだ。「50周年に向けてタッチポイントを増やしていくことが目標」といい、これまでにないガンダムの世界を表現しようとしている。

 海外に向けた展開として、ハリウッド実写映画も注目されている。映画「キングコング:髑髏島の巨神」のジョーダン・ヴォート=ロバーツさんが監督を務め、バンダイナムコフィルムワークスと映画「パシフィック・リム:アップライジング」などのLEGENDARYで共同開発しているということだが、2023年は新情報が発表されなかった。

 「企画は進んでいます。どうしてもバジェット含めて大きな作品なので、制作スタートするまでが長いプロジェクトでして……。走り始めるとすごい速さで走るはずです。50周年に向けてハリウッド版は重要な作品になってきます。『ONE PIECE』のハリウッド版の成功もそうですが、日本のコンテンツにとって海外展開は大きなチャンスの時期になっているはずです。昨年、フィンランドのアニメのコンペティションに参加させていただきましたが、『水星の魔女』のコスプレをしているファンの方がいらっしゃったんです。時差がなくなり、世界に向けてダイレクトに発信できる時代になっている。配信における日本のアニメの役割も大きくなっています。日本語では作ってはいますが、言語の壁を越えられる、アニメーションキャラクター映像という大きな武器を持っている。この武器をうまく使いながら、50周年に向けて展開していきたい。ガンダムの映像作品をできるだけ多くの人に触れていただくことが目的になっています」

 劇場版「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」の第2部の続報も発表されておらず、気になっているファンも多いはず。第1部が2021年に公開され、第2部のタイトルは「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ『サン オブ ブライト』(仮題)」となることが同年に発表されているが……。

 「鋭意制作中です。第2部はキャラクターにとって重要なポイントになりますし、皆さんの期待以上の映像、見たことない映像になるはずです。村瀬監督ともども、現場が頑張っていますので、近い将来、必ず素晴らしいものを見せられることはお約束します」

 シリーズの生みの親である富野監督の新作も気になるところで、劇場版「Gのレコンギスタ」を終えた後のインタビューで、「ヒミコヤマト」という新作を構想していることを語っていた。「実は企画はいくつかあるんです。集中して進めているのが『ヒミコヤマト』です」と82歳の富野監督はまだまだ創作意欲が衰えることはないようだ。

 全く新しい映像作品を含めてガンダムシリーズは進化を続ける。今後も見たことがないような映像で驚かせてくれそうだ。

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