鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎:残酷描写も「覚悟を決めて」 鬼太郎誕生シーンは悟空!? 古賀豪監督、吉野弘幸、谷田部透湖が語る制作秘話

「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」のトークイベントに登場した古賀豪監督(左)と脚本の吉野弘幸さん
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「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」のトークイベントに登場した古賀豪監督(左)と脚本の吉野弘幸さん

 故・水木しげるさんのマンガが原作のテレビアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」第6期の劇場版「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」のトークイベントが1月21日、新宿バルト9(東京都新宿区)で開催され、古賀豪監督、脚本の吉野弘幸さん、キャラクターデザインの谷田部透湖さんが登壇した。同作は2023年11月17日に公開され、口コミで火がつき、興行収入が22億3000万円を突破するなど大ヒットしている。古賀監督は「本作は我々が純粋に面白いものを作りたいと思って作った映画。そのような作品をここまで皆さんに支持していただけたのは理想的なこと。こんなにすごいことってあるんだと、モノ作りに対する希望をいただきました」と感謝し、制作秘話を語った。

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 「ゲゲゲの鬼太郎」の劇場版が公開されるのは、テレビアニメ第5期の劇場版として2008年12月に公開された「劇場版 ゲゲゲの鬼太郎 日本爆裂!!」以来、約15年ぶりで、水木さんの生誕100周年を記念して公開されることになった。鬼太郎の父(かつての目玉おやじ)と水木が主人公で、“鬼太郎の父たちの物語”が初めて語られることも話題になっている。

 古賀監督は「大人向けのホラーとして作るということ。そのオーダーを受けて、妖怪が出まくるホラーよりも人間関係のドロドロした怖さであればいけると思った。さらに水木しげる先生の生誕100周年という節目でもあったので、昭和の歴史を振り返るテイストも入れ込みたかった」と狙いを明かした。

 吉野さんは、同作に登場する龍賀一族について「プロットの段階から“龍賀一族”というアイデアはあって、『犬神家の一族』のキャラクター配置や人数を見ながら、このくらいの人数がいれば愛憎劇を描くことができるだろうと考えていった」と説明。

 龍賀一族の中でも強いインパクトを残す長男・時磨のビジュアルについて、古賀監督が「お歯黒でおしろいを塗っているという設定はコンテの段階で決めた」と振り返ると、吉野さんは「キャラクタービジュアルが発表された時は驚いた」と笑顔で語った。谷田部さんは「実はお化粧をしていないバージョンもあったけれど、後半になって白粉とお歯黒のオーダーが監督からあった」とキャラクター誕生の経緯を話した。

 バリエーションある残酷な怪死描写も話題になっており、古賀監督は「大人向けなのか子供向けなのか分からない中途半端な描き方では失敗すると思ったので、覚悟を決めて作りました。このようなテイストの作品では人の亡くなり方の工夫も大事な点です」とこだわりを語った。吉野さんも「シナリオ作りの段階からどのように殺したらいいのか、監督と何度も話し合いをした」と明かした。

 不気味なストーリーにさらなる恐怖感を与える独特な演出やカット割りについて、古賀監督は「この作品は怪奇幻想譚(たん)にしたかったので不安げな感じを意識。水木がタクシーで村に入っていく様子も怪奇的幻想世界に入っていく演出を施しました。村にはのどかな田園風景が広がっているけれど、それは単純なのどかさではない。誰かに見られているかもしれない……という怖さをイメージ」と演出を解説した。

 谷田部さんは、エンディングの鬼太郎誕生場面のキャラクターデザインを描く際の秘話を告白。スケッチの参考として、演出スタッフに水木のスーツをイメージしたビンテージスーツを着せてポーズを取ってもらったと話し、「水木が抱き上げる鬼太郎の代わりに、スタッフルームにおいてあった子供時代の悟空のぬいぐるみを持ってもらった」と明かすと、吉野さんがすかさず「鬼太郎は実は悟空だった!?」とつっこみ、観客の笑いを誘った。

 最後に吉野さんは「知らない日本人がいないくらいの認知度の高い作品を作り上げた水木先生と、東映が50年かけて作り上げてきたバックボーンがあってこその今回の大ヒット。改めて『ゲゲゲの鬼太郎』はすごい作品だと思う」とコメント。谷田部さんも「ファンそれぞれの心に思い浮かべる鬼太郎にはいろいろなバージョンがあるはずで、原作にもアニメにもいろいろな鬼太郎がいて、その全部が別世界。そのような世界の広がりが『ゲゲゲの鬼太郎』の魅力の一つ」と語った。

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