ドラゴンボールDAIMA
第9話 トウゾク
12月9日(月)放送分
人気アニメ「機動戦士ガンダムSEED」シリーズの完全新作となる「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」が1月26日に公開された。新作は「機動戦士ガンダムSEED」の続編「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」の主人公の一人であるシン・アスカの活躍が描かれることも話題になっている。シンは精神的に不安定なところもあるキャラクターだ。シン役の鈴村健一さんは、約20年前に演じる中で「難しさ」を感じていたという。鈴村さんに「SEEDシリーズ」、シンへの思いを聞いた。
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「機動戦士ガンダムSEED」は2002年10月~2003年9月に放送され、“21世紀のファーストガンダム”とも呼ばれている。鈴村さんは「SEEDシリーズ」に「普遍的な魅力」を感じているという。
「僕はファーストガンダムを見ていたので、ファーストのリブートであることを感じるところが確実にありました。その偉大なファーストガンダムを、今の空気感で描いたらどうなるんだろう?とファンだったら誰もがイメージしたでしょうし、当時の答えの一つだったと思います。『SEED』の魅力的な部分は、メロドラマであることです。毎回、30分の中に山や谷があり、最後は分かりやすく引きがある。端的に言うと、王道のドラマツルギーがあって、僕もハマって見ていました。やっぱり王道はいい!と感じていましたね。だから今見ても、色あせていない。普遍性もあると感じています」
劇場版は、2006年に制作が発表されたが、その後は長らく続報が途絶えていた。2021年5月に「機動戦士ガンダムSEED」の20周年を記念した新プロジェクト「GUNDAM SEED PROJECT ignited(イグナイテッド)」が始動し、劇場版が再始動することが発表された。2023年7月、ついにタイトルと公開日が発表された。
「劇場版が制作されると聞いたのはもう20年ぐらい前ですが、その時は衝撃を受けました。あのムーブメントが一番盛り上がっていた最中に劇場版が発表され、すごいことが起きそうだ!と思ったことを覚えています。そこから20年がたちましたし、いよいよ動く……と聞いた時、最初はまだ本当にやるのか分からないとも思ったんです。20年近く待っていたので、本当にやるのだろうか?という気持ちがあって、少しずつ情報が流れ、本当にやるんだ!という機運が高まり、アフレコができて、やっぱり本当にやるんだとなったのが正直なところです。アフレコを終えた今は、いよいよ公開されるという高揚感があります。20年前に大ヒットした作品のリブートではなくて、地続きの作品です。公開前の気持ちとしては、どんな反応なんだろう? どんなふうに見ていただけるのだろう?と想像すると、すごいことに立ち会えるんじゃないか!となっています」
鈴村さんにとって「SEED」シリーズは代表作の一つで、特別な思いがある。
「すごい作品だと20年たって改めて感じています。端的に言うと“感謝”ですね。20代で、これから声優としてどうやってこの世界で頑張っていくんだろう?という時、僕はシン・アスカというキャラクターに出会い、あの時のムーブメントを体験できたことは、とても大事な経験です。長くアニメの業界にいますが、特別なムーブメントは何でしたか?と聞かれると、『SEED』はかなり上位に入ってきます。アニメの歴史書ができたら、多分『SEED』が載る。そういう作品なんですよね。その作品に関われたことへの“感謝”です。そんな中で、シンというのはとても難しい役でした。本来はとても素直で明るかったはずなのですが、戦争に巻き込まれ、悲惨な形で家族を失い、明るい気持ちを表には出せず、戦争で自分にできることはないのか?と探し続けます。気持ちを抑えつけなければいけない部分が当時の収録はすごく大変でした」
鈴村さんが演じるシンは、2004年10月~2005年10月に放送された「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」の主人公の一人として新たに登場した。当時はプレッシャーも大きかった。
「もう一つ大変だったポイントとしては『SEED DESTINY』が『SEED』の続編だったことです。プレッシャーがありました。『SEED』が大ヒットし、『SEED DESTINY』も大ヒットしますよね……という空気が、現場やファンの皆さんにもあって、注目される中で、作品に関わることが大変でした。僕は脚本家ではないので、シン・アスカがどうなっていくのかをコントロールできないけど、当時は若かったですし、キャラクターがどう見られるのかが、僕のメンタルに直接関わるところもありました。でも、それも20年たって、全部いい思い出ですし、やっぱり“感謝”の一言です。自分の中で、とても大事な作品になっています」
シンは戦争に巻き込まれ、両親と妹を目の前で失い、戦争に身を投じることになる。アスラン・ザラとぶつかることも多かった。キラ・ヤマトと敵対するが、戦後に和解する。「SEED DESTINY」の2年後が舞台となる「SEED FREEDOM」ではラクス・クラインを初代総裁とする世界平和監視機構・コンパスに入り、キラと共に戦いのない世界を目指そうとする。シンは若さ故の不安定さがあり、そこが魅力ではあるが、鈴村さんは「難しいんですよね……」と語る。
「本来はとても明るく元気な男の子だけど、戦争によって抑えつけられ、憎しみを持って、何かに当たり散らす。『SEED DESTINY』は明るく元気なところがほとんど見えなくて、ベースが分からないまま演じなければいけませんでした。彼の本質を捉えてもらいたいと思いながら演じたのですが、ギャップを見せづらいところがあって、ステラとのやり取りで、優しいところも見えるのですが、彼の本質を捉えるのが難しく、演じていて大変でした。そこを整理するのが役者の仕事ですが、まあ、難しい役です」
当時、シンと向き合う中で感じたことがあった。
「年齢は当時の方がシンに近いけど、あの頃の自分のスキルで演じるのが難しいところがありました。キャラクターが多い作品でもあるので、シンが誰かにぶつかっているところ以外が、実はあまり描かれていません。本当はこういう人なんだということを、想像で埋めていかなければいけませんでした。アウトプットしている芝居は、何かにぶつかったり、吐き出すようなせりふが多く、そればかりしていると、視野が狭くなるんです。表現されていない部分を加味していくのが難しくて……」
「SEED FREEDOM」のシンは、本来の明るさが分かりやすく描かれているという。
「素直な子であることが明確に描かれていて、『SEED DESTINY』の頃よりも単純です。『SEED DESTINY』も単純なところがあって、褒められたらうれしく、怒られたら噛みつく。直情的で子供っぽい。『SEED FREEDOM』はそれがより顕著で、愛らしいんです。若い頃は、シンを見て、自分の嫌なところを描かれているように感じるから、共感しづらいかもしれないですが、俯瞰(ふかん)して見られるようになると、何て可愛いんだろう、よしよし……みたいになって(笑い)。可愛いじゃないかと思いながら演じていました。年齢を重ね、おおらかに見えるところもあって、シンがどういう立ち位置で何を求められているかが、よく分かる。少しは器も大きくなったのかな? 少し余裕を持って演じられたところもあります」
約20年たち、鈴村さん自身の変化について聞いてみると「声であってほしいですね(笑い)」と話す。
「まずそこは大事にしなければいけないですしね。ただ、メンタル的に余裕ができたことによって生まれた弊害もあり、技巧的になりすぎてしまう可能性があるんです。20年で積み重ねてきたものがあり、それを削ぎ落とした芝居をすることが必要な時もあるのですが、人は身につけたものを捨てるのが難しいんです。当時と同じキャラクターを演じる時の難しいポイントなのですが、そこを変えないようにすることが今回の僕の大命題でした。ただ、『SEED FREEDO M』のシナリオは、シン目線だとすごく分かりやすかったんです。素直なところがあって、その場の刹那(せつな)な感情が大事で『SEED DESTINY』の時よりもその部分が強かったので、率直に演じようと心掛けました」
収録では、ムウ・ラ・フラガ役の子安武人さんに「当時のままだね」と褒めてもらえたことが、うれしかったという。
「『20年近くたって、またできるっていうことは、すごいことだよ』と褒めていただいて、めちゃくちゃ元気になりました。これまでゲームやコラボなどで、シンを演じる機会はあったけど、本編で再び演じるということで、緊張感があった中で、そういうふうに言っていただけたことが何よりうれしかったですね。でも、皆さん、変わっていないんです。すごいです。びっくりしちゃいました」
「SEED FREEDOM」では、シンとキラは同じコンパスに所属し、アスランとも共闘する。
「良かったなって思います(笑い)。基本はずっと対立していましたし、シンはキラともアスランとも対立して、孤立していました。『SEED FREEDOM』で3人が共に戦うことで、一番感慨深いのはシンなんじゃないかな? 胸熱展開ですし、20年掛かったなあ……となって(笑い)。劇中では20年たっていないんですけどね。3人がここにたどり着けたのは、僕としてもうれしいです。『SEED』の時からあるメローなところも発揮されていますし、こういうの見たい!という王道を見せてくれます」
鈴村さんは「キラとラクスの物語であることがポイントです」と続ける。
「キラとラクスが何をしたかったのか? 世界に対して自分たちがどう関わっていくかを描いた作品です。シンの見どころとしては、後半に大活躍しているのを見ていただきたいです。そこがシンの最大の見せ場です。みんながいろいろなことを悩んだり、大変なことが起きますが、シンに関しては直情的で分かりやすい。一番ヒーローっぽいかもしれません」
劇場版の公開を待ち続けたファンに向けて、鈴村さんは「いよいよ20年の時を経て、劇場版が公開になりました。皆さん、待ちましたよね。でも待った甲斐(かい)はあると思います。『SEED』はすごい作品で、何かしらの展開があったり、テレビつけたら再放送をしていたりして、いつもそばにいたような気がします。ずっと皆さんに支えていただいたおかげで、公開を迎えることになったと確信しています。皆さんの期待に応えられる作品が届くはずです。僕はシン・アスカの声でしかこの作品に力添えできないんですけど、僕のできることは一生懸命やったので、ぜひ楽しんでいただければうれしいです」と語る。
「SEED FREEDOM」は鈴村さんら声優陣、スタッフの約20年分の思いが込められている。
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