解説:「新空港占拠」 覆面がもたらす汎用性の高いフォーマット

「新空港占拠」第5話の場面カット=日本テレビ提供
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「新空港占拠」第5話の場面カット=日本テレビ提供

 櫻井翔さんが主演を務め、2023年1月期に放送されて人気を博した連続ドラマ「大病院占拠」(日本テレビ系、土曜午後10時)。現在続編の「新空港占拠」(同)も放送中だが、両作に共通しているのが覆面テロリスト集団による巨大施設への立てこもりという設定だ。これまでもさまざまな作品で見られたはずのこのフォーマットが、サスペンスドラマに新たな要素を加味している。

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 「大病院占拠」は、色で分けられた鬼の面をかぶった武装集団「百鬼夜行」に占拠された大病院を舞台に、櫻井さん演じる神奈川県警刑事の武蔵三郎が人質を救うために犯人に立ち向かうというストーリー。リーダー格の青鬼を筆頭に、赤鬼、白鬼、黄鬼など10人が大病院に立てこもった。続編の「新空港占拠」でもリーダー格の龍をはじめ、蛇、鶏、牛など“獣”を名乗る10人のテロリストが空港に立てこもっている。

 ストーリーが進むにつれて、犯人たちが一人また一人と覆面を外して正体を明かしていくという展開だ。併せてどうして事件を引き起こしたのかという理由や裏に潜む真相も徐々に明らかになっていく。

 覆面を外すことで犯人たちの正体が一人ずつ明らかになっていくため、物語の進行が非常に分かりやすいというのが特徴だ。真犯人捜しがポイントとなるサスペンスドラマは、中だるみしてしまいがちだが、毎回犯人たちが覆面を外していけば、各話ごとのクライマックスも作りやすい。

 また、犯人役を誰が演じているのかという考察要素が生まれ、役名ではなくキャスト名で呼ばれるのもこの設定ならでは。SNSでは口元や歩き方、身長など、見えているさまざまな要素からファンが正体を推理する考察ブームが起きている。「大病院占拠」でのベッキーさん、「新空港占拠」の竹内まなぶさん(カミナリ)など、キャスティングによってはサプライズをもたらすことも可能だ。

 こうしたフォーマットは決して新しいものではないかもしれないが、汎用性の高いものだ。各国のスターを使ってのローカライズも容易だし、ハリウッドスターや人気キャラを起用すれば世界的なコンテンツにもなり得る。さらに、中だるみしにくいこともあって、サブスクのドラマシリーズにも向いているといえるだろう。

 もっともフォーマットはマンネリにも通じるが、硬派なサスペンスとして人気を博した「ボイス 110緊急指令室」を手掛けたスタッフの作品ということもあり、今回の「新空港占拠」では前作より早いペースで“獣”たちの正体を明かしているほか、前作のキャラクターが“獣”に加わっているなど、バージョンアップを図っている。

 10日放送の「新空港占拠」第5話の予告では「獣、全員面を取る。」とキャッチコピーが記されているが、前作をはるかに上回るハイペースで物語が進むようだ。結局のところ作品の面白さはフォーマットではなく、スタッフとキャストの力量次第。フォーマットから新たな方向に踏み出すストーリーの行方を見届けたい。

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