土屋太鳳:「本能的な母性をイメージして演じた」 新感覚サスペンス・スリラー「マッチング」

土屋太鳳さん主演の映画「マッチング」のワンシーン(C)2024「マッチング」製作委員会
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土屋太鳳さん主演の映画「マッチング」のワンシーン(C)2024「マッチング」製作委員会

 映画「マッチング」(内田英治監督)で主演を務める俳優の土屋太鳳さん。マッチングアプリによって増えた“出会い”の裏に仕掛けられた恐怖を描く新感覚サスペンス・スリラーで、土屋さんは“恋愛音痴”なウエディングプランナー・唯島輪花を演じている。「この作品を通して、人の本質を見つめることの大切さ、人間関係を繋ぐことの大切さを改めて見つめてほしい」と語る土屋さんに、今作の撮影で感じたことを聞いた。

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 映画は、内田英治監督が原作、脚本を務めるオリジナル作品。仕事が充実している一方、恋愛に奥手な輪花は、同僚の尚美(片山萌美さん)の後押しでマッチングアプリに登録をすることに。勇気を出してデートに臨んだ輪花の前に現れたのは、プロフィルとは別人のように暗い男・吐夢(佐久間大介さん)だった。

 その後も執拗にメッセージを繰り返し送る吐夢に恐怖を感じた輪花は、取引先でマッチングアプリ運営会社のプログラマー影山(金子ノブアキさん)に助けを求める。そんな中、“アプリ婚”した夫婦が惨殺される事件が連続で発生する。被害者たちは、輪花の勤める結婚式場で式を挙げていることが判明し……と展開する。

 --本作のオファーがあったとき、率直にどう感じましたか?

 「ミッドナイトスワン」を拝見していたので内田監督とはずっとご一緒したいと思ってきましたし、佐久間さんは18歳のときに舞台を拝見してすごく感動して以来、ずっとご活躍を拝見してきたので、お話をいただいたときは『せひ!』とすぐお答えしました。

 ただ、内容的にはすごく難しいなと感じました。マッチングアプリを開発したり利用している方々には誠実に向き合っている方々がいらっしゃるので、マッチングアプリのどんな面に焦点を当ててサスペンスにするのか、それをちゃんと理解して演じないと偏見のような内容になってしまう気がしてその解釈は丁寧にしたいなと思いました。

 --脚本を読んだときの最初の印象を教えてください。

 つらかったです。許せないなと思う登場人物も出来事もあまりにも多くて。でも、なぜかどこか分からなくもないというか、現実にありうる物語かもしれない、自分にも誰にでもこのスイッチはあるのかもしれない、とも思いました。

 --演じられた唯島輪花の印象はいかがですか?

 輪花は基本的に普通の女の子なので、実はいろいろな方が、いろいろな共通点を見つけやすい人物だと思います。私が一番共感できた部分は、家族と仲がいいことです。

 また、公私ともに仲のいい友人がいる点も似ていると感じましたし、その友人を大切にしている姿にも、共感を覚えました。

 --輪花を演じる上で意識したことを教えてください。役作りで自ら提案したことなどございましたか?

 提案というよりは、「台本にはこう書いてあるんですけど、そこまで私は近寄れないと思います」とか、「この気持ちにはなれないと思うんですけど」という感じでお話をして、監督もそれに対して無理をいうことはなく、ああ、大丈夫、という感じで試行錯誤してくださいました。

 内田監督は、人との距離感をすごく意識して場所を替えたりトーンを替えて演出してくださったんですけど、そういった変更を重ねることですごくしっくりくる感覚がありました。

 演じていた感覚としては、私には途中から輪花が何か別の感覚に覚醒するように感じていました。それが何か最初は自分でも分からなかったんですけど、あるとき、もしかして母性かなと感じたんです。

 でも柔らかくあふれるような母性ではなくて、外からどんどん与えられる衝撃があまりにもつらくて輪花が自分の中に逃げ込んだ結果、見つけたのが母性という本能が持つ独特の強さなのかなと感じたので、感情としてというより本能的な母性(動物のような母性)をイメージしながら演じました。

 --さまざまな出来事が起こる中でも進んでいかないといけない、そんな輪花の“強さ”をイメージされたということでしょうか?

 はい。最初は「知りたい」という気持ちから、だんだん「知りたくない」という気持ちになり、最終的に「知らなければならない」という気持ちになったと思うんですけど、「知らなければならない」という気持ちに切り替わる前には、絶望を感じたと思うんです。

 私はなんとなく、人は絶望を感じると生き抜くために本能的になるような気がしていて、輪花の場合はその本能が、母性的な感覚を目覚めさせたんじゃないかなと感じます。この作品を演じていた当初は自分が誰かを育てるなんて想像もしていなかったけれど、今、実際に小さな命を育んでみて、輪花の中に本能的な母性をイメージして演じた解釈は、間違っていなかったような気がします。

 --本作をどんな人に見ていただきたいですか? 見どころを教えてください。

 20代に入る頃から、少しずつ人間関係の作り方が変わってくると思うんです。学校とか家族中心だったものが10代の間に少しずつ変化してきて、個人になって、そして社会に入って……という時期が20代に入る頃だと思うのですが、ある意味自由でもあるけれど、そのぶん孤独でもあるような時期だと思います。

 私もその頃は何ともいえない不安を感じていました。人とどうつながるか、迷う時期だと思うので、20代に入るあたりから大人の方まで、いろいろな立場のかたに見ていただきたいです。

 そしてぜひ、この作品を通して、人の本質を見つめることの大切さ、人間関係をつなぐことの大切さを 改めて見つめてほしいなと思います。マッチングアプリは今すごく身近な存在で、アプリをきっかけにいい関係を築けているかたもいらっしゃいますし、人と出会うツールが増えたという意味では とても良いことだと思うんです。

 この作品が描いているのはマッチングアプリが良いか悪いかではなくて、人の本質をしっかり見て、丁寧につながるということが大事なのかもしれない、という投げかけなのかなと思います。見る人によって違う感想を持つ作品だと思うので、ぜひいろいろな感想を、SNSなどで教えていただけたらうれしいです。

 --20代最後の一年を迎えられました。これまでの人生を振り返ってみて、「あの経験があったから今がある」と感じられる経験がありましたら、教えてください。

 オーディションがなかなか結果につながらなかった10代の頃は、本当に迷ってばかりの時期でした。でもその頃を経験できたから今がありますし、スタッフさんたちの大変さも見てくることができたのだと思います。

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