マッチングアプリによって増えた“出会い”の裏に仕掛けられた恐怖を描く新感覚サスペンス・スリラー「マッチング」(内田英治監督)が公開中だ。主人公の“恋愛音痴”なウエディングプランナー・唯島輪花を演じる土屋太鳳さん。念願だった内田監督の現場で大きな学びがあったという。「役として生きるときの“呼吸”が変わったと思います」と明かす土屋さんに話を聞いた。
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映画は、内田英治監督が原作、脚本を務めるオリジナル作品。仕事が充実している一方、恋愛に奥手な輪花は、同僚の尚美(片山萌美さん)の後押しでマッチングアプリに登録をすることに。勇気を出してデートに臨んだ輪花の前に現れたのは、プロフィルとは別人のように暗い男・吐夢(佐久間大介さん)だった。
その後も執拗にメッセージを繰り返し送る吐夢に恐怖を感じた輪花は、取引先でマッチングアプリ運営会社のプログラマー影山(金子ノブアキさん)に助けを求めることに。そんな中、“アプリ婚”した夫婦が惨殺される事件が連続で発生する。被害者たちは、輪花の勤める結婚式場で式を挙げていることが判明し……と展開する。
内田監督の作品は見る人の心をキュッとつかみつつも、とても自然な、『この作品の登場人物は、もしかしたら自分の隣にいるのかもしれない』と感じられるようなテイストで役者さん方がお芝居をされているので、一体どんなふうに演出なさっているのか、すごく知りたかったんです。ですので今回ご一緒できたことは本当に勉強になりました!
監督ご本人はもちろん、監督が信頼しているスタッフさん方が世界観を壊さないよう全力を尽くしている姿は本当に印象的で、静かな青い炎のような現場でした。
はじめのうちは「あまり役者さんと話すタイプの監督さんではないのかな」とイメージしていたんですけど、実際はいろいろとお話をしてくださいました。印象に残っているのは、演出に影響を受けたのは音楽のライブだったというお話です。
「俺は音楽のライブを観て、本番には本番の強さがある、一回しかできないことがあるんだなとすごく影響を受けたんだ。太鳳ちゃんにもダンスをやっている人ならではの爆発力があるはずだから、これからそんな感じでやっていけたらいいな」というお話をしてくださいました。
実際、撮影が始まったころは、いろいろ試してくださっていたと思います。「ダンスだと思ってやってみて」「じゃあ、次はこんな感じで」と、一緒に試行錯誤してくださいました。
演技の勢いをつぶさない演出も印象的でした。ワンカットで撮っていたとき、カットをかけず、そのまま次の場面を演じたことがあります。また、リハーサルのときから常に「もっと力を抜いて、もっと声が小さくていい」と声をかけてくださっていて、実は現場では吐夢の声が聴こえないほど小さくて、佐久間さんも「俺の声、聞こえてる?」と心配してくださっていたのですが、映像でみるとその大きさだからこそ成り立っていて、さすがだと思いました。
内田監督の現場で、役として生きるときの「呼吸」が変わったと思います。今までは「役の呼吸」だけを必死で探っていましたが、内田組の現場を体験したことによって、役だけではなく自分自身としての呼吸も一緒にするようになりました。「役であると同時に自分でいることも大切」という感覚を知ることができたのは、大きな変化だと思います。
またいつか内田監督の現場で生きたいです。かなうことを祈っています。
大変というか、本当につらかったです。つらすぎて自分が消えてしまいそうでしたし、家に帰っても輪花が全然抜けなくて、家族も心配するくらい憔悴(しょうすい)してました。
スカイダイビングをしたら人生観が変わるという話を聞いて、輪花と一緒に人生観を変えようと思って移動中にスカイダイビングを検索したらあまりにも費用が高かったのでやめたんですけど、それくらいつらかったです。現場で金子さんと佐久間さんが少年のように明るくなさっていてその様子に心を救われていました。
すごく未熟者ながら、今、一人の人を育てていて思うのは、人間ってこんなに小さな赤ちゃんの頃から周りの状況をちゃんと観察していて、それに応じて反応を変えるんです。
これはずるいとかではなく、赤ちゃんは大人より動物に近いからある意味、本能が研ぎ澄まされているので、生き延びるために起きている反応だと思います。赤ちゃんは自分の周りが味方なのか敵なのかさえ分からないと思うので。ということは、もしかしたら「本当の顔」って、もともと無いのかもしれません。生き延びるためには変化することが大事なのかもしれないから。
でも「ウソの顔」はあると思うんです。自分から作ることもあると思うしどうしても作らなきゃいけないこともある。「ウソの顔を作らないようにしよう」と自分が心がけることはできるから、本当の顔を見つけることは難しくてもウソを選ばない自分を積み重ねていけばいつか「本当の顔」に出会えるかもしれないなと思います。
今もまだまだ時間に追われる日々ですけど、だからこそ、今年はもう少し柔軟に「今」と向き合う1年にしたいと思います。
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