三浦翔平:振り切った演技で存在感 「才色兼備の自信家」見る影もなく “堕ちた貴公子”伊周の混乱と悲哀を体現

NHK大河ドラマ「光る君へ」で藤原伊周を演じる三浦翔平さん (C)NHK
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NHK大河ドラマ「光る君へ」で藤原伊周を演じる三浦翔平さん (C)NHK

 吉高由里子さん主演のNHK大河ドラマ光る君へ」(総合、日曜午後8時ほか)。5月26日放送の第21回「旅立ち」では、三浦翔平さん演じる藤原伊周の浅はかで姑息な言動と往生際の悪さに視聴者の注目が集まった。登場した頃の「才色兼備の自信家」は見る影もなく、あまりの転落ぶりが小気味よかったのもまた確か。それらは、三浦さんが伊周の混乱と悲哀を見事に体現したからにほかならない。ここでは“堕ちた貴公子”伊周の変遷と、三浦さんの熱演シーンを振り返ってみたい。

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 ◇当初「わが世の春を謳歌」も“次の関白”にはなれず

 三浦さんは今回が大河ドラマ初出演。演じる伊周は、道隆(井浦新さん)の嫡男で、才色兼備の自信家の青年として、第11回「まどう心」(3月17日放送)から登場した。

 第14回「星落ちてなお」(4月7日放送)では、若くして蔵人頭(くろうどのとう)になるなど、父・道隆の引き立てによりスピード出世を果たし、周りの女房たちも「漢詩も和歌も笛も弓も誰にも負けない腕前なんですってよ」「17歳で? できすぎ~」とうっとり。わが世の春を謳歌していたが、そんな伊周の人生にも、徐々に暗雲が立ち込めてくる。

 道隆亡きあとは、妹の定子(高畑充希さん)への一条天皇(塩野瑛久さん)の寵愛を頼りに、道長(柄本佑さん)と火花を散らすライバルとなる伊周だが、彼には大きな欠点があった。それは自身の傲慢さからくる「人望のなさ」。

 第18回「岐路」(5月5日放送)では、おじの道兼(玉置玲央さん)の死後、“次の関白”になることを望むも、一条天皇は、母・詮子(吉田羊さん)の涙の訴えを聞き入れ、道長に内覧宣旨を下すと、伊周から取り上げた内覧の職を道長に与えたことで、伊周は怒り狂う。

 定子のもとに乗り込むと、自分の人望のなさを棚に上げて、こう切り出す、「帝(みかど)のご寵愛は偽りであったのだな」と──。

 さらに伊周は「年下の帝のお心なぞ、どのようにでもできるという顔をしておきながら何もできてないではないか。私は内覧を取り上げられた上に内大臣のままだ!」とののしるように定子に不満をぶつけ、「こうなったらもう、中宮様のお役目は、皇子を生むだけだ」と決めつけ、父・道隆が憑依したかのように「皇子を産め」「早く皇子を……」との言葉を繰り返した。

 三浦さんは同シーンについて「すごく今まで由緒正しきというか、非常に優雅で美しい伊周としてやってきたのが、どんどん崩れていく序章です」と位置付けている。

 ◇女に「裏切られた」と泣きべそ バレバレのウソに“言い訳”

 すでにこの時点で「貴公子」の仮面が剥(は)がれ落ちた伊周だったが、あることをきっかけに男としての「自信」を失ってしまう。

 それは第19回「放たれた矢」(5月12日放送)でのこと。妾(しょう)である光子(竹内夢さん)の屋敷の前に、見事なしつらえの牛車が停(と)まってるのを目にしたからで、これを光子の“別の男のもの”と勘違いした伊周は「まさかあいつに裏切られるとは」と泣きべそをかくほどのショックを受けてしまう。

 結局、ここでの“勘違い”から、弟の隆家(竜星涼さん)が、前の天皇の花山院(本郷奏多さん)に向かって矢を放つという大騒動へと発展。伊周には、隆家ともども厳しい処分が下ることに。

 そして迎えた第21回。頭巾姿の伊周は「出家」を理由に任地に赴くことを拒むが、はなからウソはバレバレで、「これから剃髪するゆえ、任地には赴けぬ。帝にそうお伝えせよ」との必死の訴えも受け入れてもらえず、定子からも「兄上。この上は帝の命に速やかにお従いくださいませ」と見苦しさを指摘される始末。

 伊周を捕らえに来た実資(秋山竜次さん)も「ただちに、大宰府に向け、ご出立を」と“幕引き”にかかるが、それでも伊周は「嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ!」と大の字で寝転がり、「行かぬ……」と駄々をこねまくり。また、大宰府への道中、母・貴子(板谷由夏さん)と引き離された際も「嫌だ! 俺は病気だ! 馬には乗れぬ!」と“言い訳”を繰り返した。

 第21回では、「春はあけぼの」のフレーズがあまりにも有名な、「源氏物語」と並ぶ平安文学の傑作「枕草子」の誕生が描かれ、大いに話題となったが、その手前で決してかすむことのなかった“駄々っ子”伊周の存在感。三浦さんの振り切った演技なくして、成立しなかったように思える。

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