解説:清少納言として大河ドラマ史に名を刻んだファーストサマーウイカ 輝けた理由をひもとく

大河ドラマ「光る君へ」でききょう/清少納言を演じたファーストサマーウイカさん (C)NHK
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大河ドラマ「光る君へ」でききょう/清少納言を演じたファーストサマーウイカさん (C)NHK

 12月15日に最終回を迎えた吉高由里子さん主演のNHK大河ドラマ光る君へ」。キャスト陣の熱演なくして生まれなかったドラマの盛り上がりだが、その功労者の一人が、ききょう/清少納言役で出演したファーストサマーウイカさんであることは否定できないだろう。ここでは、ファーストサマーウイカさんが劇中で輝けた理由を、過去のインタビューの発言などからひもといてみたい。

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 ◇生まれ変わり? シンクロ率の高さは他の追随を許さず

 ファーストサマーウイカさんは今回が大河ドラマ初出演。第6回「二人の才女」(2月11日放送)で初登場し、以降その出番以上に、ドラマの盛り上がりに貢献した印象だ。

 「春はあけぼの」のフレーズがあまりにも有名な、「源氏物語」と並ぶ平安文学の傑作「枕草子」の作者として知られる清少納言だが、劇中における才気煥発な女性としての姿は目を見張るものがあり、「ファーストサマーウイカさんが演じてこそ」という部分は最後まで揺らがなかったようにも思える。

 好演を続けるファーストサマーウイカさんに対しては、SNS上で「生まれ変わり」との声も上がるほど。役とのシンクロ率の高さは他の追随を許さず、その点については本人も自覚的というか、「自分と考えた方、表現の仕方が非常に近い人物だな」とかなりの親近感を抱いてた様子。

 以前のインタビューで「SNSで『生まれ変わり』と言っていただけることもあるんですけど、『いやいや、言いすぎでしょう』とも思わないというか、『かもしれない』と思うというか、それくらいの親近感(笑い)。ドラマの台本を読んでも同じように思えて。歴史上の人物を演じて『自分のことみたい』『自分を見ているよう』となるのって珍しいんじゃないかと言われましたが、ここまで感情移入するとは。いや、もう感情移入どころではなくて、『こういうときはそう言うでしょう』『これ以外はなんていうの』って感じで、本当に自分と清少納言が重なる瞬間があって。彼女を知れば知るほど、不安というものは消えていきました」と話している。

 紫式部が主役のドラマにおける清少納言を演じることへの不安や重圧は、清少納言を知れば知るほど、吹き飛んでいったというファーストサマーウイカさん。

 「『これ、ほぼ私だからな』って思えてから、感情の部分で『全然、この気持ち分からないよ』ってことは一度もなかったですね。これは余談にはなりますけど、学習マンガの清少納言や、平安を題材にしたマンガやイラストの清少納言が、みんなちょっとキツネ目のキッとした顔で描かれていて、どことなく似ていることが多かったんです。それもビジュアル面においての安心材料になりましたね(笑い)」とも語っていた。

 ◇「常に自分に大河を課そうとした…」思いの強さが結実

 物語の中盤以降、忠誠を尽くしてきた定子が亡くなったあとの清少納言の悲しみが、道長に対する憎しみへと変わる過程で、「最初のころの親近感は失われていった」というファーストサマーウイカさんだが、一方で、役の心情に寄り添うことは忘れなかった。

 「ききょう(清少納言)という人間は、あけすけで奔放なキャラクターだと思いますが、人って決してワントーンはない、時と共にグラデーションしていくから、ききょうもきっとグラデーションしていったというのはあると思います。その中で『私だったらこういう態度をとらないかもな』とも思うときもありましたが、それはきっと私の人生ではまだききょうにとっての定子様に匹敵するような“光る君”を失っていないからなのかもと。そんなふうなことを考えました」とクランクアップ後のインタビューで明かしている。

 敵意むき出しで、自らの手で、紫式部(まひろ)との友情さえも壊してしまった清少納言が、第43回(11月10日放送)で「恨みを持つことで、己の命を支えて参りましたが、もうそれはやめようと思います」と“終戦宣言”したシーンについても、 「急に糸が切れる瞬間ってありますよね。ものごとを頑張っていたときにプツンッてなって、『もう無理、や~めた』って瞬間。それに近い諦め、あるいは“引退”のような感覚。台本には描かれていない部分なので、想像でしかありませんが、そんなふうにうらみつらみがふっと消え去ったのかなって」と自身の言葉で説明している。

 インタビューで、清少納言として生きた時間を「ききょうという荷を下ろさずに生き続けた1年間」と表現していたファーストサマーウイカさん。

 「大河のことが頭をよぎらない瞬間はなかったですし、そのために(普段)髪形も“姫カット”にして。そうすると、どこに行っても『なんか和じゃん』と聞かれて、私も『今、大河で、平安を』と答えることになる。そうやって常に自分に大河を課そうとした1年。それが心地よい瞬間もあれば、重圧にもなりましたが、そうじゃないとやれない、忘れたら終わりだという思いもありました」と思いの強さをのぞかせていた。

 「ここで得た経験は特別で、私が今後エッセーを書くことがあるなら、きっとこの大河ドラマ『光る君へ』は必ず章段として書くだろうし、死ぬときには走馬灯に必ず出てくるだろうなというくらい、体に刻まれたと思います」と話していたが、ファーストサマーウイカさん自身、今回の好演によって、清少納言として大河ドラマ史に名を刻んだことは間違いない。

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