ダンダダン
第7話「優しい世界へ」
11月14日(木)放送分
インタビュー(1)の続き 中国の動画配信サービス「bilibili(ビリビリ)」で配信された中国のオリジナルアニメ「時光代理人 -LINK CLICK-」の第2期「時光代理人 -LINK CLICK- II」。日本語吹き替え版が、4月からフジテレビ「B8station(ビーハチステーション)」で放送されており、声優の村瀬歩さんが双子の兄妹、李天辰(リー・ティエンチェン)と李天希(リー・ティエンシー)を一人二役で演じていることも話題になっている。村瀬さんは、兄妹の幼少期、さらには妹ティエンシーになりすました兄ティエンチェンも演じ分けている。収録の裏側を聞いた。
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「時光代理人 -LINK CLICK-」は、繁華街の一角の時光写真館を経営する程小時(トキ)と陸光(ヒカル)が特殊な能力で、過去を引きずるクライアントからの依頼を解決する姿を描く。2021年4月からbilibiliで配信され、約4カ月で世界総再生回数が1億6000万回を突破するなど人気を集めている。アニメ第1期の日本語吹き替え版が、2022年1~3月に放送された。
村瀬さんが演じる双子の兄妹は過去の凄惨(せいさん)な事件により両親を亡くしている。兄のティエンチェンは人の体を乗っ取る能力により、トキたちの脅威となる。
村瀬さんは、幼少期の兄と妹、成長した兄と妹、さらには妹になりすました兄と、複数の声を演じ分けている。兄と妹の性格の違いや、過去の事件を経た後、どのように成長したのか?を意識しているという。第2期では、兄ティエンチェンが、妹ティエンシーになりすまし、トキたちを陥れようとするシーンも描かれた。
「もちろん、妹のティエンシーを演じる時とは変えているのですが、お兄ちゃんは見た目もキレイだから、恐らく自分にすごく自信があって、『俺は何でもできる』みたいな全能感があるので、意外と演技もノリノリでできてしまう。彼には能力もあるので、能力を使って相手をはめるためにうまく立ち回れる女性像をやっているという感じですね。妹を演じるというよりは、その意識のほうが強いと思います」
村瀬さんは、一つの作品でさまざまな役柄を演じ分けることに難しさを感じながらも、「すごくやりがいを感じた」と語る。
「基本的に掛け合いは人と人が相手のエネルギーを受け取りながらやっていくんです。この作品では、兄のティエンチェンと妹のティエンシーが二人で話すシーンもあって、掛け合いを自分の中から生まれてくるもので成立させなきゃいけない。自分で“発電”して、それを自分が受け取って、さらに渡して……みたいな感覚で脚本を読んでいるのがすごく不思議で、これはすごく取り組みがいのあることだなと思って。めちゃくちゃありがたい機会だなと思いました」
「時光代理人」の双子の兄妹役もそうだが、村瀬さんはほかの作品でも少年から青年、女性の役までさまざまなキャラクターを演じてファンを魅了し、巧みな印象が強い。声優としてどのように作品、キャラクターと向き合っているのだろか。
「作品レベルで言うと、原作がある作品は原作をちゃんと読むことを大事にしています。オリジナル作品の場合は、分からないことが多いので、それを分からないままにしない。『どういう意図でやりたいのか?』『どういう演出にしたいのか?』というのは、自分の中で行き詰まったらスタッフの方に聞くようにしています。お話を聞いて、その上で自分で咀嚼(そしゃく)する。皆さんの土台がある上で自分が演じさせてもらっているという意識は忘れないようにしています」
キャラクターに関しては、人間の脳の動きも意識しているという。
「人間の脳はすごいので、例えば、理路整然と人と話していて、そのことに集中しながらも、『きょうの晩ご飯、何にしよう?』と考えたりとか、思考の中にチリとかホコリみたいなものがあると考えていて。自分が演じるキャラクターの会話に、そのチリやホコリが要るのか、要らないのか?と。全部なくしてしまうと、本当にただしゃべっているだけになってしまうから、そういう“余白”があるキャラなのか、どうかなのか?と考えます。あとは、キャラクターの目的というか、何のためにそのせりふをしゃべっているのか。ストーリーが流れていくために必要なアシストなのか、それとも場の空気感を成立させるために必要なのかとか。最終的に迷ったら『この人、何したいの?』というところに立ち返るというか」
村瀬さんが「キャラクターに向き合う上で、忘れないように大切にしている」という演技への姿勢は、新人の頃に学んだものだ。
「最初の頃は『みんなどうやってやってんだろう?』みたいな(笑い)。格好良く声を出したい、可愛い声を出したいというところから始めちゃったんです。それも大事なことではあって、全部が全部普通にしゃべってしまうと、それなら声優さんがやらなくてもよくない?と思ってしまうので、格好良く、可愛く決める、必殺技がスコーンとハマるというのは大事だと思います。その上でキャラクターが生きているようにしゃべっている感じを大事にしたいなと。そのためにやらなくてはいけないことは、10年くらいかけて何となく分かってきて。自分の居心地のいい場所が分かってきたっていう感じですかね」
村瀬さんは、初めて主演を務めた作品の音響監督の影響が大きいと語り、台本の読み方を一から学んだという。
「それまではずっと感覚でやっていて『なんか怒ってる』『なんか楽しそう』でせりふを言っていたのですが、それでは一貫性がなくなってしまう。感情も地続きなので、急にバーン!と声を出したとしても、その前に心の中の動きがあって、そのせりふが出てくる。そういうことを音響監督さんに教えてもらって、『あなたはまずきちんと台本読めるようになりなさい』と。最初の頃は、台本を1冊読むのに3、4日かかっていました。『この話は何を伝えたい話なんだろう?』と考える作業をして、地道に積み上げて、トライアンドエラーを繰り返して、すごく成長させていただきました」
最後に今後の目標を聞いた。
「僕は、ありがたいことに『こういう役をやりたい』と思った役はやらせていただいているので、そうじゃない役をやってみたいという思いがあります。今回のような男女の双子ですとか、自分の想像の範疇(はんちゅう)にとどまらない感じの役でお話をいただけたら、すごくうれしいというか。そういうところで覚えていただける役者になれるように頑張りたいなと思っております」
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