薬屋のひとりごと
第35話 狩り
3月21日(金)放送分
インタビュー(1)の続き 2007年にフジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」で放送された人気テレビアニメ「モノノ怪」の約17年ぶりの新作となる劇場版「劇場版モノノ怪 唐傘」が、7月26日に公開される。「モノノ怪」は、2006年にノイタミナで放送された「怪~ayakashi~」の一編「化猫」のスタッフが再集結して制作された。薬売りの男がモノノ怪に立ち向かう怪異譚(たん)で、スタイリッシュなキャラクターデザイン、和紙のテクスチャーなどCG処理を組み合わせた斬新な映像が話題となった。約17年がたった今もなお根強いファンを持つ「モノノ怪」の新作の舞台は、情念渦巻く“女の園”大奥だ。「化猫」から同シリーズを手がける中村健治監督、劇場版で薬売りを演じる声優の神谷浩史さんに収録の裏側を聞いた。
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神谷さん 別人とはいえ、薬売りの雰囲気ってあると思うんです。例えば、いろいろな仮面ライダーがいますが、やはり仮面ライダーが醸し出す雰囲気、たたずまいというのは絶対あるはずなので、そういうものはやはり気にすべきかなと。薬売りという存在のたたずまいに共通点を見いだして、今後もし薬売り3号とか、薬売り4号みたいな、別の薬売りのエピソードが描かれるのだとしたら、受け継いでいく何かになったらいいなと思いました。今回は神谷浩史が演じる薬売りということで、もちろんプレッシャーはありましたし、そもそもこの映像にどういう音を当てたら正解なのか、僕の中では決定権がないわけですよ。
神谷さん そんな中で、おおよその方向性を持って提案しているわけですよね。中村監督に「OKです」と言っていただけたらそれが正解なんだなと僕は納得できるんですけど、そうでないと、この映像ならどうとでも成立させられる気がするんですよ。トータルの印象として、大奥という概念みたいなものをワーッとぶつけられた感じがして。その中で、自分の立ち位置は決められるんですけど、正解の音がどれだか分からないという。だから、演出次第によって変化できますよ、という幅を持たせて収録に臨んだつもりでした。あまりにも「これしかできません」だと、このフィルムには失礼な気がしたんです。それでやみくもにやってみて、監督に判断していただくという、まな板の上の鯉(こい)状態で、「料理してください、お願いします」という。
中村監督 そんなことないですけどね(笑い)。本当に収録はスムーズだったので。僕自身はすごく緊張していましたけど。本番収録の前に、特報で何回か神谷さんにアフレコしていただいて、仕上がっていく感じがあったんですよ。変わっていないけど、変わっているみたいな、言語化できない“動き”があるなと感じていて。「じゃあ、当日どうなるんだろう?」と思って、収録で神谷さんの声を聞いて、僕はOKを出しただけです。意外なお芝居もありましたが、むしろ「なるほど!」と思いました。僕らも声優の方に決めてもらうところが多いんですよね。神谷さんと似た話になりますが、僕たちも幅を持たせていて「どこでも着地できますよ」と。
中村監督 朝、神谷さんにあいさつした時に、「なんかもうきてんな」って感じがしたんですよ。神谷さんは、何かそういう空気をぶわーっと出す方ではないんですけど、リラックスしているようでいて、「今できているから、すっとやりたいな」という感じが神谷さんから伝わってきて。これもう、さっと始めたほうがいいと思って、すぐに僕もブースに戻って「スタート!」みたいな(笑い)。神谷さんが「いける」というコンディションのうちに終わらせたい、みたいな。そういう感じがしました。
神谷さん 僕は、中村監督の作品に出演させていただくのは初めてなんです。ただ、何となく周りから漏れ聞こえてくる中村監督のスタジオワークが、あまりにも現実離れしていて。時間をかけて収録をすると。なぜ時間がかかるかというと、収録を始める前に、中村監督の口から役者に説明する時間があるわけです。僕はその時間は、とても大切だと思うのでいいんですが。ところが、今回はそういうものが一切ない状態で始まっているってことですよね。ほかのキャストの方に説明する時間は多少あったのですが、それでも思っていたより早く始まるなと思って。
中村監督 急いでブースに戻ったので(笑い)。感覚としては、釣った魚を早くさばいてもらわなきゃみたいな。これは、冷凍して解凍するとよくないから、一番いい時にお願いします!みたいな。なんというかピチピチしていたので(笑い)。神谷さんは、自分ですごく考えられる方だなというのは、ビリビリ伝わってきていたので、当日にオーダーすることもほぼなかったです。神谷さんの解釈を僕らは聞かせていただこうみたいな感じでしたね。
約17年ぶりの新作「劇場版モノノ怪 唐傘」の薬売りについて、中村監督は「熱がある」と語っていた。情念が渦巻き、モノノ怪が潜む大奥に分け入っていく新たな薬売りが生み出された収録現場もまた熱いものだったのだろう。“新生”「モノノ怪」が見せる世界をスクリーンでじっくりと味わいたい。
中村健治監督×神谷浩史 対談(1)はこちら
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