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劇場版モノノ怪:中村健治総監督インタビュー 第二章「火鼠」に込めた思い 「もっと自分を許してほしい」

「劇場版モノノ怪 第二章 火鼠」の一場面(C)ツインエンジン

 2007年にフジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」で放送された人気テレビアニメ「モノノ怪」の完全新作劇場版三部作「劇場版モノノ怪」の第二章「劇場版モノノ怪 第二章 火鼠」が公開中だ。第二章は、天子の世継ぎを巡り、大奥の家柄同士の謀略と衝突に焦点を当てたストーリーが展開する“親と子の物語”でもある。中村健治総監督に第二章「火鼠」に込めた思いを聞いた。(※インタビューには本編のネタバレが含まれます)

 ◇理不尽に直面した時 感情ではなく頭で考えることができたら…

 劇場版三部作は「合成の誤謬」をテーマとしている。合成の誤謬は、個人にとっての正解と集団全体の利益は必ずしも合致しない、という経済用語で、「劇場版モノノ怪」では大奥を舞台に個と集団の摩擦、ズレから生まれる“モノノ怪”を描く。第二章は、天子からの寵愛を一身に受ける町人出身のたたき上げの御中臈・時田フキと、老中の娘・大友ボタンがメインキャラクターとして登場し、規律と均衡を重んじるボタンとフキが衝突することになる。

 中村総監督は、第二章「火鼠」では、「マクロ、ミクロの二つの視点で伝えたいことがある」と語る。

 「マクロなところでは、第三章まで含めてなのですが、やはり全体を幸せにする最適な答えは、個人1をマックスに幸せにはしないということ、必ず不快な答えになるということです。しかも、その答えは、個人の感覚で言うと、すごくバカなこと言ってるように思えるのが特徴で、『こいつら何も分かってない』『上に立っているやつらは全員バカなんじゃないか』という答えが、実は正しいんです。でも、世の中ってそういうものというか。もちろん全体の最適な正解をみんなが絶対飲み込まなきゃいけないという話がしたいわけじゃなくて、そこでやっぱりお互いにすり合わせる必要があるんですよね。最適解はなかなかできないし、個人を100%満足させることはできないので、“まあまあ”なところを探さなきゃいけない」

 世の中の理不尽を感じた時、「合成の誤謬」という考え方があると、捉え方が違ってくるかもしれないと説明する。

 「頭の片隅に合成の誤謬があると、『この理不尽な物言いも、ひょっとしたらめっちゃ大事なことを言っているのかもしれない』と感情ではなく頭で考えることができるので、そういう瞬間を人生に作ってほしいなと。とはいっても、僕は大切なものは絶対捨てちゃいけないということもドラマで言っているので、心も全く捨てる必要はない。大切なものを捨てて全体に同化してしまうと、自分がなくなってしまう。病んでしまったり、個人としては健康な状態でいられない人が多くなってしまうと思うので、全体を率いるリーダーの方も、個人の人間も、お互いにお互いの都合を気にしながら話し合っていけると、世の中がよくなるのかなと思っています」

 ◇どれだけ消せない傷があっても生きてほしい

 ミクロの視点では、「みんなに自分をもっと許してほしいと思っているんです」と語る。第二章に登場する火鼠は、過去に大奥の世継ぎを巡る忖度(そんたく)の中で、子供を手放さなくてはならなかった御中臈・西条スズの情念から生まれ出たモノノ怪だった。キャッチコピーの「お前は何が許せない」は、懐妊した直後に火事で亡くなってしまったスズとも関係している。

 「第二章に関しては色のイメージでいうと灰色です。『お前は何が許せない』というコピーなのですが、僕はみんなに自分をもっと許してほしいと思っているんです。だから、体や心にどれだけ消せない傷ができたとしても、できれば生きてほしいなという願いがあります。僕が『火鼠』のシナリオを読んで最初に思ったのは、死んでしまったスズさんに生きてほしかったなということ。ただ、スズさんがお亡くなりにならないとモノノ怪が出ないので作品は作れないんですけど……。でも、それでも生きてほしい。だから、僕が一番むかついているのはスズのお父さんです。でも、作品に出てくる人物なので、むかついているけど、ちゃんと愛しています」

 中村総監督は「自分を諦めてほしくない」と思いを込める。大奥を描く「劇場版モノノ怪」は、現代を生きる私たちへのエールなのかもしれない。

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