ダンダダン
第5話「タマはどこじゃんよ」
10月31日(木)放送分
2007年にフジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」で放送された人気テレビアニメ「モノノ怪」の約17年ぶりの新作となる劇場版「劇場版モノノ怪 唐傘」が、7月26日に公開された。薬売りの男がモノノ怪に立ち向かう怪異譚(たん)で、スタイリッシュなキャラクターデザイン、和紙のテクスチャーなどCG処理を組み合わせた斬新な映像がファンを魅了してきた。新作の舞台は情念渦巻く“女の園”大奥で、アイナ・ジ・エンドさんが主題歌「Love Sick」を担当することも話題になっている。大奥の女性たちの情念、叫びを表現するかのような「Love Sick」に込めた思いとは?
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新作では、女たちの情念が渦巻く大奥を舞台に、薬売りが“モノノ怪”の正体を追うことになる。物語は、新人女中のアサとカメが大奥に上がり、集団に染まるための儀式として、自分の大切なものを捨てることを強いられる場面からスタートする。アイナさんは、「モノノ怪」の世界観に触れ、「もっと早く出会いたかった」と思うほどに魅了されたという。
「何かを捨てて、何かを取り入れていくとか、アサちゃんとカメちゃんの二人のやり取りに女の子の人間らしさが出ていたりとか、親近感がありました。映像の色彩がとてもいびつで美しくて、ふすま絵を見ても、これがある旅館がリアルに存在するとしたら、絶対泊まりたいと思うくらいきれいなんですけど、お話自体はとても親近感がある。いい意味で生々しい。そのギャップが面白いところだなと思いました」
主題歌「Love Sick」は、「凛として時雨」のTKさんがプロデュースした。アイナさんとTKさんがタッグを組むのは、テレビアニメ「機動戦士ガンダム 水星の魔女」のエンディングテーマ「Red:birthmark」に続き2度目だ。
「この曲もTKさんが、めちゃくちゃ身を削って作ってくださったと思います。最初にいただいたデモは、今の形とは少し違った構成で、もう少しさらっと聴ける歌だったんです。でも、『モノノ怪』という、解き放っていくような作品に対して、音楽も疾走感を絶やさない、駆け抜けるような曲にしたいということで、いろいろなバージョンをいただいて。パズルのピースを組み立てるようにして今の構成になったんです。そこに至るまでのデモの状態もいつか皆さんに聴いてほしいくらい素晴らしいんです。そうした熱量が、TKさんの素晴らしいところで、命を削るように制作してくださるので、本当に尊敬します」
「Love Sick」は、キーがかなり高いのも特徴の一つだ。
「本当におかしくない?と思うくらいキーが高いんです。デモもTKさんが歌ってくださっていて、めちゃくちゃ格好いいんですけど、アイナ・ジ・エンドが歌えるのかな?と思うほどで。ただ、限界のキーで歌っていくことが、『モノノ怪』のヒリヒリ感ですとか、世界観を増していけるようなエッセンスになっているので、一つの魅力かなと思います」
「Love Sick」の歌詞には、「モノノ怪」や「形」「真」「理」といった「モノノ怪」ならではのワードもちりばめられている。アイナさんは「ここまで作品の世界観を歌詞に落とし込むのは難しいと思う。それでいて自分の心から湧き出てくる情念みたいなものも言葉にしていらっしゃる」と“気持ちが宿る”歌詞に心を動かされた。
「女の人の情念って結構怖いじゃないですか。『モノノ怪』に登場するのはほぼ女性で、情念が渦のように巡って物語が進んでいく。私自身、その情念というものを見逃せなくて。ラストの歌詞に『壊れそう でも会えそう?』というフレーズがあるのですが、ここはすごく大切だなと思っていて、最後はちょっと希望があるように終わりたかったんです。情念にも光があるというのを漂わせたかったんです」
レコーディングでは、アイナさんにとって初めての挑戦もあったという。
「ドライブの潔さとか、ギターのエキセントリックさとか、一言では言えないサウンド感になっていて、それに対して自分が言葉を乗せるとなった時に、普通に歌ってしまうと、全然言葉が乗らなくて。それこそ、喉の奥を鳴らしてみるとか、ブレスを変なところで入れるようなことをしないと、言葉が全然聞こえてこなかったんです。だから、厚かましいくらいニュアンスを付けた瞬間もありました。2サビで『Love Sick Love Sick』と歌うところは、ニュアンスを意識しすぎて、『Sick』の『k』を言えていないんです。『k』を入れてしまうと、音符をたどって歌っている感じになるので、あえてそうしたんですけど、そんなことは初の試みでした。これまでのレコーディングは『言葉をちゃんと届ける』ことを大事にする姿勢だったので」
「Love Sick」を歌い上げるために、アイナさんはこれまで大切にしてきたスタンスをあえて崩した。
「その2サビでドラムのリズム感も変わって、ちょっと“もったり”する。だからこそ、大きいアクションが声にも必要だったんです。大きいアクションにするには、ひずませたいし、はっきり発音しちゃうとリズミカルになりすぎるし、いろいろな懸念があって、そうしました。2サビは、ぶち上がりテークだと思うので、ぜひ聴いてほしいですね」
アイナさんの新たな試みの裏には、「TKさんに初めてプロデュースしてもらった前作を超えたい」という思いもあった。
「私は、同じ方にプロデュースをしてもらうのが初めてで、2回目だからこその親和性が今回生まれた気がしています。その中で『アイナ、もっといけるだろう』というTKさんの煽りみたいなものも感じて、『いけますけど、なんですか!』くらいの挑戦心がそこら中にありました。キーが高いのもそうだし、サウンド感に負けないニュアンス作りもそうだし、全てにおいて前作を超えたいという気持ちが強まっていました」
アイナさんは、TKさんが作る楽曲は「ジャンルが分からない良さがある」と話し、それは、「モノノ怪」とも通ずるものがあると感じているという。「分かりやすいけど分かりづらいというか。そこがTKさんの楽曲とすごく共鳴している」と語る。
最後に「劇場版モノノ怪 唐傘」の魅力を聞いた。
「『モノノ怪』は、色彩の美しさもそうですが、声優さんの芝居にも唯一無二の魅力があると感じました。どのキャラクターも好きになってしまうし、嫌いになれない。それはキャラクター自体の魅力もあるけれど、声優さんのパワーもあると思ったんです。劇場で見るからこそ感じられる息遣い、臨場感、キャラの魅力を味わってほしいなと思います。主題歌もエンディングにぴったりなように和のテイストをしっかりと入れてもらっています。歌詞をフルで聞いて『あ、モノノ怪ってこういうことだったのかな』と腑(ふ)に落ちる瞬間があればいいなと、おこがましいながら思っています」
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