劇場版モノノ怪:90分で2600カット “脳を刺激する”膨大なカット数 中村健治監督×神谷浩史対談

「劇場版モノノ怪 唐傘」の一場面(C)ツインエンジン
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「劇場版モノノ怪 唐傘」の一場面(C)ツインエンジン

 2007年にフジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」で放送された人気テレビアニメ「モノノ怪」の約17年ぶりの新作となる劇場版「劇場版モノノ怪 唐傘」が、7月26日に公開される。「モノノ怪」は、2006年にノイタミナで放送された「怪~ayakashi~」の一編「化猫」のスタッフが再集結して制作された。薬売りの男がモノノ怪に立ち向かう怪異譚(たん)で、スタイリッシュなキャラクターデザイン、和紙のテクスチャーなどCG処理を組み合わせた斬新な映像が話題となった。新作劇場版は、約90分の上映時間で、約2600カットと、通常の同尺のアニメの2倍とも言えるカット数で、圧倒的な映像表現となっている。「化猫」から同シリーズを手がける中村健治監督、劇場版で薬売りを演じる声優の神谷浩史さんに制作の裏側を聞いた。

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 ◇アニメ演出のトレンドの極致 目、耳、五感に訴えかける

 --新作劇場版では、目まぐるしくカットが切り替わり、テレビシリーズよりもカットの切り替えが速いように感じました。カットも膨大になり、カット割りを記載したアフレコ台本は、異例の上下巻仕様になったと伺いました。

 中村監督 たしかにテレビシリーズの時より速いです。2秒くらいで切り替わり、一番長いカットでも10秒くらいです。「モノノ怪」では、元々絵の重心を動かしたいというのがあって、テレビシリーズではそれを緩急でやっていたんですけど、今回はテンポでいきたいなと。それでカットの切り替えを速くしました。今のアニメーションの演出のトレンドの極端な端っこ、極致にいってみたという感じですね。

 --カット割りを細かくすることで、どのような効果があるのでしょうか。

 中村監督 そもそも劇場作品で、アクションシーンでもないのにこれだけカット割りが細かいのは珍しい。でも、僕はいけると思っています。お客さんの集中力を途切れさせたくないという狙いも当然あります。見ている人の目や耳、五感に訴えかける。僕はよく打ち合わせでも言うことなのですが、「とにかく人間の脳にどんな刺激を与えるかだから」と。「脳を考えろ」という話をよくしますね。

 --緻密なふすま絵や極彩色の背景など情報量の多い画面が、目まぐるしく切り替わっていくためか、まさにスクリーンから目が離せなくなりました。ものすごい映像に高揚感を覚えながらも、集中が研ぎ澄まされていくような。

 中村監督 不思議な感じになると思います。

 --神谷さんも、あの独特のテンポ感で演じるのは大変だったのでは?

 神谷さん 具体的に言うと、「モノノ怪が来る」というせりふがあったとしたら、「モノノ」「怪」「が」「くる」でカット割りされていて、こんなのは普通は合わせられない。でも、やっていると不思議と合うんですよ。もちろん合わせようとはしていますけど、1文字1カットなんて当てられませんから、収録の後、絵で合わせてもらうしかないな、という割り切り方もしていたんです。ただ、アフレコ素材として合わせられるようにはできてたんですよね。だから、何とかするしかないなと思って(笑い)。こういうものをやれと言うんだったらやりましょうと。「これは無理、できないよ」とは言わない……いや、文句は言うんですけど(笑い)。

 中村監督 いいですね! いつもの神谷さんだ!

 神谷さん 1文字1カットなんてどうかしているじゃないかと監督には言うんですけど、「はい! そうですね!」と。一応アイドリングトークとして文句は言っておくという(笑い)。

 中村監督 そういうコミュニケーションも大事ですから(笑い)。

 「モノノ怪」の約17年ぶりの新作「劇場版モノノ怪 唐傘」。そのすさまじい密度、情報量には圧倒される。まさに脳を揺さぶられるような映像体験を劇場で味わいたい。

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