日笠陽子&戸松遥:「劇場版モノノ怪」インタビュー(2) 同世代の2人が演じた正反対のフキとボタン 真剣“バチバチ”に「新鮮」

「劇場版モノノ怪 第二章 火鼠」に出演する戸松遥さん(左)と日笠陽子さん
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「劇場版モノノ怪 第二章 火鼠」に出演する戸松遥さん(左)と日笠陽子さん

 インタビュー(1)の続き。2007年にフジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」で放送された人気テレビアニメ「モノノ怪」の完全新作劇場版三部作「劇場版モノノ怪」の第二章「劇場版モノノ怪 第二章 火鼠」が、3月14日に公開された。劇場版は女たちの情念が渦巻く大奥を舞台に、薬売りが“モノノ怪”の正体を追うことになる。新人女中のアサとカメがメインキャラクターとして登場した第一章「唐傘」を経て、第二章では、天子からの寵愛を一身に受ける町人出身の御中臈・時田フキと、老中の娘・大友ボタンがメインキャラクターとなる。たたき上げのフキと、名家出身のボタンという対照的な2人を演じるのが、声優の日笠陽子さんと戸松遥さんだ。収録の裏側や、お互いの声優としての印象を聞いた。

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 ◇お互いの可能性に驚き 本気のぶつかり合い

 ――今作では、フキとボタンという対照的な役柄を演じられました。お互いの声優として印象、魅力を感じるところは?

 日笠さん 私の中の戸松遥が得意とするお芝居って何でしょう……でも、意外と真面目な役が多い?

 戸松さん どうだろうね。私って、なんだろう(笑)。

 日笠さん ちゃんとしているキャラを演じることが多いよね。本人は「イェーイ!!」みたいな感じなのに、意外と真面目な役が多い。

 戸松さん そうね(笑)。最近は確かに真面目な役が多かったかも。

 日笠さん 私が知っている戸松遥って、「~~じゃないか!」とゲラゲラ笑うようなタイプだから、ボタンと真逆だなと思いながら見ていたんですけど、演じているということは、表には出さないだけでそういう部分も持っているのかなと思うんです。

 戸松さん 持っていないとできないからね。

 日笠さん そう、持っていないものはできないよね。そういう意味では、ボタンという役は、戸松遥の無限の可能性をいまだに感じさせてくれるなと。第二章では、ボタンが道しるべ的な存在だから、監督からの細かい要望も結構多いキャラクターだったので、それにパキパキっと乗っていくのは、さすがだなと思いました。逆にフキは、第一章の時は、キャラ作りもふわふわしていて、結構苦戦したので。何回か直したんです。

 戸松さん へー。

 日笠さん 「へー」って、あなたも一緒にいたよ(笑)。忘れているかもしれないけど。

 戸松さん いたね(笑)。

 日笠さん 同世代なんですけど、学ぶものをいっぱい持っている役者さんだなと思います。

 戸松さん うれしい。

 ――戸松さんから見た日笠さんはいかがですか。

 日笠さん さあ、褒めて褒めて(笑)。

 戸松さん でも、日笠こそ、何でもオールマイティーにできるイメージだから。

 日笠さん でも、これっていうのがないんだよね。

 戸松さん いやいや、オールマイティーってすごいじゃん。熱血な役もやるし、淡々としている役もやるし、すごいふざけている役もやるし(笑)。

 日笠さん 本来はふざけているから。

 戸松さん そうだね(笑)。日笠は本当に何でもできるから、私がキャスティングする側だったら「日笠は入れたい」と思う。きっと期待に応えてくれるし、面白くしてくれると思わせる魅力があると思います。いろいろな作品で共演していますけど、作品によって「こんな役もやるんだ!」とびっくりすることがある。ギャグっぽい役が多いイメージだったから、真面目な役をやると「日笠……!」みたいな。

 日笠さん お互いに同じことを思っている(笑)。

 戸松さん 「モノノ怪」自体がギャグやコメディーではないので、真剣な感情のぶつかり合いというと、お互いに役を通して真剣にバチバチしたことは意外となくて。本気のケンカというか、特にフキは魂からキレるみたいな感じだったので、そんなふうに真面目にぶつかり合うのって、結構新鮮だったなと思います。フキはエネルギーがいる役だったと思うんですけど、その分、魂でぶつかってきてくれて。ボタンは、客観的に物事を見る人だから、一緒になってわー!と怒るというよりは、「それだけ怒って満足でしょうか?」くらいの冷めた部分があって、そのコントラストがすごく出たんじゃないかなと思います。

 日笠さん 私は、本気でぶつかりにいった結果、いなされるみたいな。

 戸松さん そうだね。

 日笠さん やっぱり収録が終わった後に、フキとボタンは、見えている世界線が違ったんだろうなと思うんです。フキは、自分や自分の家のことしか見えていない狭い世界で、自分の中だけで自分を燃やしている。恨みとか怒りとかを相手に出しているように見えるけど、大奥って出せない場所なんですよね。だから、ずっと自分の体の中に恨みや怒りを溜め込んで、それで口から出てくる言葉は、相手を威嚇するものや、「私のほうが上よ」という優越感、嘘で、自分の中で火鼠が燃えちゃっているみたいな感覚。フキにとってボタンって、初めてそれを表に出せた存在なんでしょうね。ボタンもボタンで、何を言っても変わらないこの世界をどうしたらいいのか分からないと、多分こらえてきたんだと思います。共通のものというか、形は違えど大枠は一緒みたいな感覚だったので、ある意味でライバルであり、戦友だったんだなと。やっぱり、やり合える存在ってなかなかいないので。

 同世代の日笠さん、戸松さんが演じた真逆のようで似ているフキとボタン。2人がどのようにすれ違い、交わるのか、注目したい。

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