ヤマトよ永遠に REBEL3199:“古代進”小野大輔が歌う 第2章「赤日の出撃」EDに込めた思い

「ヤマトよ永遠に REBEL3199」の第2章「赤日の出撃」のビジュアル(c)西崎義展/宇宙戦艦ヤマト3199製作委員会
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「ヤマトよ永遠に REBEL3199」の第2章「赤日の出撃」のビジュアル(c)西崎義展/宇宙戦艦ヤマト3199製作委員会

人気アニメ「宇宙戦艦ヤマト」のリメークシリーズの最新作「ヤマトよ永遠に REBEL3199」の第2章「赤日の出撃」で、主人公・古代進役の声優の小野大輔さんが歌うエンディング主題歌「「Reach for the Star」のリリックビデオがYouTubeで公開された。小野さんは、自ら作詞を手掛け、古代進の心情に寄り添った楽曲でヤマトの世界を彩る。小野さんが同曲に込めた思いを語った。

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 ーー作曲・編曲を渡辺拓也さん、作詞を小野さんが担当していますが、この楽曲を手掛けることになった経緯は?

 主題歌を歌わせていただけることが決まり、真っ先に思い浮かんだのが渡辺拓也さんでした。僕の音楽チームも満場一致で、渡辺さんにお願いしましょうということになったわけです。それはなぜかというと、自分の音楽の出発点であり、小野大輔の歌の真ん中にあるのが渡辺拓也さんの曲だからです。アーティスト活動はもう17年やらせてもらっていますが、スタートから渡辺拓也さんの楽曲があって。それからの僕の音楽活動は彼と一緒に歩んできたと言っても過言ではない。音楽において僕が古代進だとしたら、彼は島大介ともいうべき存在なんです。だから音楽面に関しては絶対に間違いないなと思ってお願いしたんですが、作詞はどうするんだと思ったときに、自然と自分で書きたいと口をついて出ました。それは自分でも意外でしたね。

 ーー古代進という役を12年やり続けてきたということもあるのでしょうか?

 この曲は第2章のエンディング主題歌となりますが、そんな大きな仕事を任せていただけるのは一生に一度のことなのではないかという思いもありました。これが最初で最後になっても構わないという思いで、やりきろうと。僕はヤマトにおいては、いち歌い手である前に古代進なんです。そんな僕が主題歌を歌う意味とは何なのかと考えた時に、やはり僕が歌うのは古代進の歌であってほしいなと思ったんです。だから自分で詞を書こうと、自然と思えたんだと思います。古代進を12年積み重ね、自分の中に蓄積していく中で、古代進と小野大輔がすごく近づいていった。古代の考えや思い、その行動の一つ一つをとってみても、僕が一番古代進のことが分かると言い切れるなと思ったんです。だったら誰かに書いてもらうんじゃなくて、自分が書かないと嘘じゃないかと。自分が歌うヤマトの主題歌なら、自分が思いを込めて書いた方が絶対にいいなと思ったんです。

 ーーアーティスト活動は17年。その中の12年が古代進を演じた時期と重なるわけなので、今までヤマトの主題歌をやってこなかったのが意外にも思えるのですが。

 「宇宙戦艦ヤマト」にはまさに「宇宙戦艦ヤマト」という主題歌もありますし、これまでいろんなアーティストが歌ってきました。島大介役の鈴村健一さんが参加したこともありましたし、おそらくその流れで僕も参加するか、しないかという流れはあったんですが、でも自分は古代進であるという思いが強くあって。

 ーーアーティストというよりは、声優であるという思いが強かった?

 そうですね。きっと古代進という役を背負いすぎていたんだと思います。なんだったらそれ以上に背負いきれなかったんだと思います。だから僕が「宇宙戦艦ヤマト」の楽曲に参加することはなかった。歌い手としての小野大輔で歌いきれる自信もなかったですし、ともすると古代進として歌ってしまうかもしれない。自分は古代進役の声優として参加しているのに、小野大輔としてヤマトの歌を歌うということに自分でもジレンマがあった。それは自分の声優としての矜持でもあるので、まずはとにかく古代進という役を全うすること、生ききることだけを考えてきた12年だったと思います。

 ーー心境の変化が生まれたのは?

 自分と役が一心同体です、というのはなかなか軽はずみに言い切れることではなくて、そう思えるのは古代進だけなんです。この役をいただいてからずっと自分っぽいなとは思ってきたんですが、12年演じ続けているうちに、生き方も感情も、全てがシンクロしてきたということです。

 ーー全てのタイミングがうまくハマった?

 そうですね。今だからやってみたいと思いましたし、実際に歌わせていただけることになり、さらに詞まで書かせていただくことができた。本当にスタッフの皆さんには感謝しかないですね。だからエンディング主題歌をお願いしますと言っていただいた時は、歌えるということの感動以上に、スタッフさんに信頼していただけているんだ、ということを確認できた気がして。それが何よりうれしかった。やはりエンディング主題歌ってただ単純に歌うだけでなくて、作品を背負うということなので。お前だったらいいよ、と言っていただけたように思えたんです。

 ーー歌詞に込めた思いは?

 主題歌を作詞するにあたっては、ストーリーを踏襲した上で、そのストーリーが行き着く先や、本当に伝えたいテーマにフォーカスしないといけないと思いました。ではヤマトが伝えたいものとは何なのか。今回の「REBEL3199」で印象的だったのは、過去を変えられないからこそ、今を一生懸命に、必死に生きるしかないということでした。いろんな困難が待ち受けているんですが、過去には戻れないし、過去は変えられない。だからこそ過去を忘れずに、その思いを大切に持ったまま今を必死に生きること。それが結果的に未来につながることだと思う。それが古代にとってはサーシャの存在だと思うんです。我々は一体何のために生きているんだろうと考えた時に、今、自分たちのためだけに生きるのではなく、きっと未来に希望を手渡していくために生きているんじゃないかと。その存在が古代にとってはサーシャなんだと思うんです。彼にとってのサーシャの存在って、今はまだ迷いなんですよね。でも途中からは、この未来のために今できることを必死にやらなきゃいけないことに気付くことになる。第1章で運命の渦に巻き込まれ、雪とも離れてしまった古代に、第二章ではさらなる悲劇が重なります。総監督の福井さんから言われたのは、「この第2章のあたりが一番、古代が失意のどん底にいます。今が一番落ち込んでいる状態です。でも逆にいえば、どん底のどん底までいったので、ここからは立ち上がるだけです。だから今は耐えてください」と。そのアフレコが終わって、その後の古代はだんだんと未来に向かっていくことになるなと思っていたわけですが、そんな時にこのエンディング主題歌のお話しをいただいた。だから古代が失意の底にいるところを歌うのではなくて、それがかなわない願いだったとしても、手を伸ばして思い続ける、願い続ける。そんなイメージが頭に浮かび上がって。それを歌にしたいなと思ったんです。そしてそこに自分が生きてきて感じたこと、小野大輔として感じたこともそのまま歌詞に落とし込もうと思って。ヤマトもこの12年の間にいろいろなことがありました。作中でも大切な人と離れ離れになって、大切な人を失うというシーンが折に触れてあるんですが、自分にとっても大切な人たちとの別れがありました。それは役としてもそうだし、人としてもそう。本当につらい時間もありましたし、そういうときはずっと下を向いていたと思います。でもどこかで上を向かなきゃいけないし、前に進まなきゃいけない。だから言葉にすると、すごくシンプルですが、ヤマトは人生そのものだと思ったんです。それはつくっている僕たちだけじゃなく、見ている人たちもヤマトとともに人生を歩んでいるのかなと。いろんな人たちが、このヤマトに関わって、ヤマトクルーになってくれて。ここまで艦が進んできたんだと思います。だから歌詞の最初が「あれからいくつもの 流れてく 星屑たちを見送った」と始まるのはまさしくそのことを表現していて。最初に思い浮かんだのは、ここの2行のフレーズでした。何度も何度も、書いては消して、消しては書いてということを繰り返していたんですが、この2行にそういう思いはすべて凝縮されています。過去のことは絶対に忘れたくないですし、その人たちがいたからこそ、未来があるということなので。

 ーー今回のリメークシリーズだけでなく、原作に関わった人たちの思いもすべて抱えこんだ上で、未来へ託すということではないかと思いました。実にヤマトらしいテーマだと思ったのですが。

 おっしゃる通り、(先代の古代進役を務めた)富山敬さんがやられていた頃の、僕が生まれた頃からずっと続いてきたヤマトの普遍のテーマでもありますし、それに関わってきた人たちの思いを未来に運んでいくことがヤマトの使命なのかなとも思います。

 ーー小野さんは「ここまでヤマトクルーがつないできてくれた熱い思いを、この歌で次の世代へと渡していければ」といったコメントを出されていましたが、そこにつながっていきます。

 実はそれは詞を書く前からずっと考えてきたことでもありました。ここに来て、その自分の思いとリンクしたんだなと。僕も声優として20年とちょっと活動してきましたが、今思うことは若手を導いていかなければ、ということなんです。いろんなことを教えたいし、僕たちが伝えたものを、さらに若い人に伝えてほしい。今はそういう思いがすごくあります。だから今回の歌詞も、5~6年前だったら書けなかったかもしれないです。それどころか2~3年前でも書けなかったかもしれない。コロナ禍もありましたし、今、人生の中でいろんな経験をしてきて、改めて声優として何ができるのかと思った時に、自分のことというよりは、人に何かを渡していかなきゃいけないなと強く思っていた時期だった。だから今こうやって主題歌の話をいただけて、詞が書けて良かったなと思います。

 ーーレコーディングの際は、どのようにして歌おうと心がけた?

 僕はレコーディングの時はいつも、ここはウィスパーで歌おうとか、そういった技術的なことはあまり考えずに歌うようにしています。特に今回はエンディング主題歌なので、物語が終わった余韻に浸りながらこの曲を聴くことになるわけです。そこで自分の感情をことさら聞かせようとするのは、むしろ邪魔だなと思います。もし自分がお客さんだったとしたら、古代進の声をやってる小野大輔が前に出るよりも、やはり作品の一部として、一つのパーツとして、いち要素としてこの楽曲があるといいなと思いました。

 ーーヤマトの音楽といえば数多くの名曲があるわけですが、その中で印象に残っている曲は?
 やはり「コスモタイガー(Wan・Dah・Bah)」ですよね。特に古代進は戦闘機乗りなので、こういう曲を聴くと気持ちが高揚してきます。やはり僕にとっては(宮川)彬良さんの劇伴というのがヤマトなんですが、それはまさにお父さま(宮川泰)から受け継がれたものでもあるんですよね。そういうところにも普遍的な魅力があるんだなと、あらためて思います


 ーーリメークシリーズも、監督が次々とバトンを渡していった歴史があります。

 確かに監督も「2199」の出渕(裕)さんからはじまって、次々と受け継いでいってるんですよね。本当に……みんなヤマトが本当に好きなんですね(笑)。昔のヤマトは良かったなと言いながら、それをずっと愛し続けるという道もあったと思うんですが、ヤマトはそうじゃなくて。こんなに素晴らしい作品なんだから、次の世代に渡していかなきゃいけないってみんなが思ったんですよね。そのことがすごく尊くて、とても素晴らしいことだと思いますし、そして僕は単純にそれが好きです。これも一言で言ってしまえば愛なのかもしれない。それはヤマトのテーマでもあると思うので、 “愛”は必ずどこかの歌詞に入れたいなと思いました。そういう意味で、イメージがぱっと浮かんだのが、古代が雪に手を伸ばす、ということ。そして雪と手を繋ぐんだけど、その手が離れてしまうというシーンがものすごく多いんですよ。今作でも描かれてますしね。せっかく手を繋いだのに離れ離れになってしまう。本当にすれ違いが多くて。自分は役者としても、いちファンとしてもそれがすごく歯がゆくて(笑)。そこで手を繋ぐというイメージがすぐに降りてきたんです。だからどこかに絶対“手を繋ぐ”を入れようと思ったんです。それって古代と雪だけでなく、古代とサーシャもそうだと思うんです。二人は家族みたいなものなので、いつかどこかで手をつないでほしい。もっと言えば地球とガミラスであったり、国家間が手を繋ぐことにもつながってほしい。そうやって詞を書けば書くほど、ヤマトはこういうことを描いていたのかと、いろんなことが腑に落ちたんです。

 ーー詞を書くというのは、小野さん自身のヤマト再確認の行為でもあったと。

 そうですね。冒頭のAメロの2行で過去を振り返って。これまでヤマトクルーたちのことを思って。Dメロで愛を描く、という構成を考えた時に、その後で全部がつながったという感じですね。本当に書いては消して、書いては消して、という具合にやっていたんですが、そういう意味では、実は渡辺拓也さんから一個ヒントをいただいてたんですよ。実は渡辺さんから送っていただいた楽曲音源ファイルのタイトルが「Reach for the Star」だったんです。それってなんなら「ヤマト主題歌(仮)」でもいいわけじゃないですか。でもそこは「Reach for the Star」だった。星に手を伸ばす、というのはものすごくいい言葉だなと思って。かなわないと知っても星に手を伸ばす。その手がいつか重なり合う、というイメージがそこからパーンと浮かび上がって。そこからどんどん書けたんですね。いいものをいただいたなと。ただ最初は単に“星に手を伸ばす”という意味なのかなと思っていたんですが、実はそれは英語の慣用句で“高望みをする”という意味だった。それはもしかしてあまりいい意味で捉えられないかもしれないですが、でも高望みしたっていいじゃないかと思ったんです。それは“あきらめないで思い続ける”ということでもあるわけですから。

 ーー第2章を楽しみにしている方にメッセージを。

 曲が完成したときに、福井晴敏さんに聴いていただいて。「失礼かもしれないですが、思ったよりすごく良かったです」と。さらに「この曲があったら、第2章をとてもきれいに、美しく終わらせることができる。本当にありがとう」と言っていただけて。それがもう何よりもうれしかったです。それは何より、自分もやっぱりヤマトの一員だったと思わせてくれた。古代進をずっと演じ続けてよかったなと心から思いました。と同時にホッとしました。先ほども言いましたが、実は第2章はすごく暗くて重い。「REBEL3199」の中でも、もっとも過酷な章になっているかもしれない。先が見えないし、希望を見出すことも難しい。福井さんの言葉を借りれば、どん底。とてもシリアスで重いお話だったと思います。ただその中に、必ず希望はあります。そして僕たちはやっぱり未来がどうなるか分からないからこそ、過去を大切に抱きしめて、今を生きるしかない。だからこそ必死に生きるんだと思います。自分もそんな思いでこの第2章、古代進として挑みました。見てくださった皆さんが、古代進と同じように挑む気持ちになってくださって、つらいことがあったとしてもどこかに希望を見いだして。そして未来に向かって進んでいくような、そんなポジティブな気持ちになってくれたらうれしいなと思います。そのためにこの「Reach for the Star」という楽曲があると思いますし、この曲を聞いていただいて、ヤマトから受け取った気持ちを未来へと繋げていってくださると、そしてずっとヤマトを愛してくださるとうれしく思います。

 「ヤマトよ永遠に REBEL3199」は、作家の福井晴敏さんが総監督を務め、シリーズ構成、脚本も担当する。福井さんは、リメークシリーズの「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち」でシリーズ構成、脚本を担当しており、最新作では総監督も務めることになった。ヤマトナオミチさんが監督を務める。全7章で、第2章は11月22日から上映される。

 「宇宙戦艦ヤマト」は1974年にテレビアニメ第1作が放送され、「宇宙戦艦ヤマト2」「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」「宇宙戦艦ヤマト 復活篇」なども制作されてきた。第1作をリメークした「宇宙戦艦ヤマト2199」が2012~14年、「2199」の続編「2202」が2017~19年に劇場上映、テレビ放送された。全2章の「2205」が2021、22年に劇場上映された。

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