忍たま乱太郎:13年ぶり劇場版 今までにない「忍たま」の挑戦 ギャグよりドラマ優先 藤森雅也監督インタビュー(1)

「劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師」の一場面(C)尼子騒兵衛/劇場版忍たま乱太郎製作委員会
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「劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師」の一場面(C)尼子騒兵衛/劇場版忍たま乱太郎製作委員会

 人気アニメ「忍たま乱太郎」の約13年ぶりとなる劇場版アニメ「劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師」が、12月20日に公開された。尼子騒兵衛さんの原作マンガ「落第忍者乱太郎」の小説版で、ファンの間でも高い人気を集める「小説 落第忍者乱太郎 ドクタケ忍者隊 最強の軍師」が初めて映像化される。劇場版の監督を務めるのは「忍たま乱太郎」の初代キャラクターデザインを担当し、2011年公開の劇場版「劇場版アニメ 忍たま乱太郎 忍術学園 全員出動!の段」で監督を務めた藤森雅也さんだ。「今までにない忍たま」「いつもと違う忍たま」を描こうとしたという藤森監督に制作のこだわりを聞いた。(※インタビューには本編のネタバレが含まれます)

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 ◇シリアスな「忍たま」を初めて映像化

 劇場版は、忍術学園一年は組の教科担当教師の土井先生こと、土井半助がメインキャラクターとして登場する。土井先生は、タソガレドキ忍者の諸泉尊奈門との決闘に向かった後、消息を絶ってしまう。山田先生と六年生による土井先生の捜索が始まる中、六年生の前に現れたのは、土井先生とうり二つのドクタケ忍者隊の冷徹な軍師・天鬼だった……というストーリー。乱太郎、きり丸、しんべヱたちは、土井先生を取り戻そうと奮闘する。

 約13年ぶりの劇場版は、土井先生の失踪、最強の敵の襲来といった、普段の「忍たま」とは違ったシリアスな展開が待ち受ける。藤森監督は、2023年放送の殺し屋たちの活躍を描く「REVENGER」を手掛けたこともあり、「今回の『乱太郎』もシリアスを求められる内容ということで指名してくれたのかな」と経緯を語る。

 「とはいえ、しばらく『乱太郎』から離れていたもので、忘れていることもすごくあったんですね。そういう意味でなかなかハードルの高い仕事だなと感じました。時代考証であったり、キャラクター同士の関係だったりすごく細かく決まっている作品世界ですから、もう一度勉強し直さないととてもじゃないけど歯が立たない」と語り、「忍たま乱太郎」の設定資料、忍術や戦国時代の資料、これまで発売されてきた関連書籍などに目を通し準備に時間をかけたという。

 ◇ギャグを抑えた大人向けの「忍たま」 映画ならではの画を

 原作小説「小説 落第忍者乱太郎 ドクタケ忍者隊 最強の軍師」は、2013年に発表され、ファンの間でも話題になった人気作。藤森監督は「大人向けと言いますか、ファン向けにすごく特化して書かれた小説だな」と感じたという。

 「『忍たま乱太郎』をずっと好きでいてくれるファンに対して『こういうシークエンスがあればすごくうれしいだろうな』ということを非常に考えて、そこに特化して書かれている」と魅力を語る。

 ただ劇場版アニメとして映画館で公開するとなると、「間口を広げていかないと、もしかしたら厳しいかもしれないなとも同時に感じました」という。「あまりキャラクターに詳しくない子供や、そのお子さんと一緒に来てくれる親御さんなど、そうした方が置いてけぼりにならないように、かなり意識しました」と語る。

 藤森監督は制作発表の際に「今までにない忍たま乱太郎。ぜひ楽しみにお待ちください」とも語っている。今作では制作陣のさまざまな挑戦があったという。その一つが、物語のドラマ性を重視することだった。

 「『忍たま乱太郎』はギャグアニメなんです。とにかく笑いを入れようということで、たとえ多少物語や気持ちの流れを分断してもギャグを入れるということが成立するんです。それを今回はキャラクターの感情の流れやドラマを一番優先させ、その脇にギャグの流れがあるという形で作っていきました。いつもの『乱太郎』の作りと優先順位が違う。普段の『乱太郎』では、思いついたらとりあえずギャグを入れるということをやっているんだけれども今回は『思いついたけど、ここに入れると物語が破綻するからやめとこう』と。それは『乱太郎』をやっていて初めてのことでした」

 ドラマを優先させるといっても「単調なフィルムにはしたくなかった」と藤森監督はこだわりを語る。

 「例えば、ダンスなど音楽シーンの要素を入れたり、普段はあまり使わない画面分割を多用したり。映画としてフックになる映像はいっぱい入れていこうと。内容的には重いところもあったので、大変ではあったのですが映画ならではの画(え)を見せられたのではないのかなと考えております」

 ◇土井先生の魅力 「天鬼みたいなものが実は潜んでいる?」

 劇場版は、忍者ならではのアクションシーンも見どころの一つとなっている。六年生が土井先生とうり二つの天鬼と対峙(たいじ)するシーンでは、「とにかく天鬼の強さを描く」ことを意識したという。

 「天鬼との対峙に至るまでの六年生をとにかく優秀に描こうとしました。そんな優秀な六年生が準備万端で出掛けて行ったにもかかわらず、天鬼には歯が立たない。その対比を最初に出したかったんです」

 ドクタケ忍者隊の冷徹な軍師・天鬼の正体は、土井先生であることが明かされている。なぜかドクタケ忍者隊の軍師となってしまった土井先生。藤森監督は土井先生と天鬼のギャップを描こうとした。

 「土井先生は人柄が良くて優しい。それからすごく世話焼きで、苦労性という可愛いところもある。そういうところがファンに愛されていると思うのです。そんな土井先生と天鬼というキャラクターのギャップをきっちり描きつつ、それでいて実は全くの同一人物。その内面においてはつながっているところがある、ということを意識して描きました。天鬼はとにかく虚無を抱えているキャラクターで、土井はすごく充足している目をしたキャラクターなんです。ただ、土井先生の中にも天鬼みたいなものが実は潜んでいるのかもしれない、というところを描画していきました。優しい充足した目つきの土井先生とずっと虚無を抱えたままの目の天鬼、というところで対比を出しています」

 一方、土井先生と天鬼の“動き”は同じで「土井先生のチョーク投げと、天鬼の棒手裏剣の投げ方は一緒です。面つきは変わって見えるんだけれども、体に染み込んだ体術は一緒という。そういうところは意識して描いています」と説明する。

 インタビュー(2)へ続く。

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