ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない
#13「やばいものを拾ったっス!」
12月5日(金)放送分
テレビアニメ化されることも話題のうめざわしゅんさんのマンガ「ダーウィン事変」が連載5周年を迎えたことを記念して、うめざわさんとアニメを手がける津田尚克監督が対談し、作品の誕生秘話や、アニメの制作の裏側について語った。
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うめざわさん 生命倫理にまつわるテーマで何かを描きたいな、と元々考えていたんです。「えれほん」という短編集を出す際、そのアイデアから「もう人間」という作品を作ったのですが、描き終わった後、そのテーマをもっと広い世界観で描きたいなと感じるようになって。そこでウェブや文献をあさって知識を増やしつつ立てた企画が「ダーウィン事変」でした。すぐに企画を何社かに持ち込んだんですけど、ほとんどの編集者さんが「面白いとは思うけど、どうやって売るか見当もつかない」とおっしゃるので、私も頭を抱えてしまい……。ただ、月刊「アフタヌーン」の担当さんは興味を示してくださって、連載につながることとなりました。
津田監督 月刊「アフタヌーン」で連載が始まった時のことは、今でも覚えていますよ。当時は純粋な一読者として作品に触れましたけど、こんなに映像化が難しそうな作品が始まるとは……という印象を受けました。いや、それもある意味「アフタヌーン」っぽい作品なのかもしれませんけどね(笑)。僕はどのマンガにもアニメ化するならどういうアプローチをするのか軽く考えてしまう職業病がありますけど、「ダーウィン事変」はいい意味でアニメ化が難しい作品だなと感じていました。ハリウッドで映画化ないしドラマ化ならあり得るかも、と。
うめざわさん 元々海外ドラマっぽく見える構成を目指していたので、そう思っていただけたのであれば成功です(笑)。
うめざわさん 情報感度ですかね。扱っているテーマの軸はブレずとも、そのテーマをどう受け取られるのかを考えるようにしています。例えばヴィーガンという単語がこの作品には出てきますが、連載開始時点と現在とではそれに対する知識や出来事もどんどん変わってきていますよね。なので、ちゃんとその移り変わりを時事的に捉え、対応するように描いていくことが大事だと感じています。
津田監督 実は「どの原作でアニメを作りたいですか」といくつかの作品をプロデューサーから渡されたことがあって、その中の一作が「ダーウィン事変」でした。僕としても、難しいことは百も承知で、やりがいのある作品はこれだろうと「ダーウィン事変」を推したんです。僕らが日常生活の中で考えなければいけないテーマをしっかりと描いている、当たり前のようだけど難しいことにうめざわさんが挑んでいるので、同じ船に僕も乗ってみたい。その思いから「ダーウィン事変」の企画が始まりました。
うめざわさん 連載が始まった頃、全くアニメ化するとは思ってもいなかったので、お話を伺った時にはとても驚きましたね。それと同時に、取り扱っているテーマから逃げずに真正面から描いてほしいこと、その上で差別的な表現にしないことはもちろん、そう受け取られてしまいかねない描写にも気をつけてほしい、とお願いしました。特に後者はマンガを描いている際にも意識しているのですが、作者側に差別的な意図がなくとも、一コマだけ切り抜かれて「ひどいことを言っている!」と言われてしまう可能性があります。個人的にアニメはマンガよりもその危険性が高いと思っているので、細心の注意を払ってほしいと津田監督にお願いしました。
津田監督 なので、シナリオ会議ではこの表現はどうなのか、スタッフ一同で意見を出すようにしました。これまで携わった作品の中でも最もロジカルなやり取りが求められるので、とても根気がいる現場ですね。
津田監督 猪爪さんにお願いしたのは、今までご一緒した作品の中で、ロジカルに物事を考えることにたけた方だからです。アニメはオープニングとエンディングを除くと各話21分ほどの尺と決まっていますから、展開こそ原作に準じたとしても、どうしてもオミットするページが生じてしまいます。特に本作は、一見飛ばしても問題がなさそうな展開であっても、一コマ省くだけで後の展開が成立しなくなることもある難しい作品なんです。なので、猪爪さんにはどうしたらうまく尺に落とし込めるのか、細心の注意を払って書いていただきました。
うめざわさん 引きの部分をどこにするのか、尺の都合で構成は変えざるを得ませんからね。でも、シナリオを読んだ時、この面白い話を考えたのは誰だ?と思うほどに素晴らしかったですよ。
津田監督 先生が考えたんですよ(笑)。オリジナル要素は基本的に入れず、原作がそのエピソードで何を一番伝えたいのか、どのセリフを一番届けたいのかを考えて、シナリオやコンテを作るように意識していました。
うめざわさん 多分、セリフを声優さんが演じることを前提に組み立てられていることも、いい意味で原作との違いを生んでいると思うんですよ。シナリオだけでもそう感じていましたけど、収録の時はさらに驚きましたね。声優さんが演じたことによって、このセリフにはそんな捉え方もあったのか、と僕がハッとさせられたほどでした(笑)。
津田監督 友岡さんは「ダーウィン事変」の制作を務めるベルノックスフィルムズの社員さんで、その腕を見込んで参加していただくことになりました。原作をとても読み込んで設定に落とし込んでくださっていて、常に「ダーウィン事変」をアニメ化するならどんな線が最も良いのかを模索しながら作業されていますね。そんな彼に僕がオーダーしたのは、あまり原作から要素を省略させないでほしい、ということです。デフォルメするとアニメーターは描きやすいのですが、作品のテーマ性と乖離(かいり)してしまいます。制作カロリーは高くなることは承知で、しっかりと描いていただくようお願いしました。
うめざわさん 僕自身そこまでアニメを見るわけではないですけど、いい意味で日本のアニメっぽくないビジュアルで驚きました。僕からはマンガとアニメでは動かしやすいデザインは異なるので、調整していただいても問題ないですとお伝えしていたんですよ。でも、チャーリーという存在を描くと、自然と周囲のキャラクターの人種を描き分けないといけないので、細かいデザインが必要になってきてしまいます。そこをしっかりと掴み取ってくださったので、実際にキャラクターたちが動いた映像を見るのが楽しみでなりません。
津田監督 確かに梶田さんが元davidではあるのですが、友岡さんのようにSeven Arcsの流れを汲むスタッフもいたり、他のスタジオから移籍してきた方もいらしたりと、多種多様のチームになっています。僕も元々davidで監督をしていましたが、せっかく別のスタジオに来たのだから、同じようなフィルムにはしないよう、新しいものを模索しながら制作中です。
津田監督 中山さんはこれまでにもご一緒したことがあったのですが、とてもお力のある方なので、刺激を受けられるんです。今回は、僕の監督業務の中でもメインプロダクション――実制作部分を中山さんにかなりの部分を背負っていただいていています。ベルノックスフィルムズはまだ若い会社なので一つずつ試行錯誤していかなければならないのですが、僕や中山さんが一段、もう一段とスタッフの力を引き上げて、素晴らしい映像をお届けできるように頑張っていきたいと思っています。
うめざわさん どんなふうにチャーリーたちが動くのか、非常に楽しみです。アクションシーンだけではなく、チャーリーがアメリカの日常に溶け込んでいる姿がアニメだとどう描かれるのかも楽しみです。
津田監督 アメリカって日本より空間が広いですよね。なので、日本が舞台の作品とはレイアウトも変わってくるので、美術も細部まで気をつけながら進行しています。テストを繰り返して、今よりもっと完成度の高い映像にしていきたいですね。
「ダーウィン事変」は、2020年から「月刊アフタヌーン」(講談社)で連載中。ヒトとチンパンジーの間に生まれた“ヒューマンジー”のチャーリーがテロ、炎上、差別といった“ヒト”が抱える問題に向き合うことになる。シリーズ累計発行部数は180万部以上。テレビアニメは2026年1月から放送される。
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2025年12月06日 11:00時点
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