俳優の吉沢亮さん主演の映画「国宝」(李相日監督)の快進撃が止まらない。興行収入142億円を超え(9月14日時点)、歴代ランキングでは、邦画実写において「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」(2003年公開、173.5億円)に次ぐ第2位になるなど、まさに“社会現象”とも呼べる勢いだ。同作で、芸に人生をささげる歌舞伎俳優・喜久雄を演じた吉沢さんの演技が称賛を集めているが、ここでは吉沢さんの俳優としての魅力とともに、その圧倒的な演技力が光る映画3本を紹介したい。
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吉沢さんと言えば、「国宝級イケメン」とも称される美しい顔立ちが話題になることも多い。「国宝」の劇中で、喜久雄が人間国宝である小野川万菊(田中泯さん)に「きれいな顔は邪魔も邪魔、そのお顔に喰われちまいますからね」と言われるシーンがあるが、これは吉沢さんの俳優としての葛藤を表現した言葉でもあるように思う。6月20日に放送されたNHKの「スイッチインタビュー」で、吉沢さんは「イケメンって言われることに嫌な思いはしないけれど、お芝居を見てくれよと思っていた」と吐露。そんな吉沢さんが「国宝」で見せた演技は狂気をはらんだ鬼気迫るもので、俳優としての底知れない実力を感じさせた。
「国宝」で俳優として完全に“覚醒”した吉沢さんだが、これまでの出演作でも、主役から脇役までこなし、「国宝」のようなシリアスな演技から、マンガ実写作品などで見せる振りきったコミカル芝居、激しいアクションシーンまで、幅の広い演技で見る者を驚かせてきた。
そんな吉沢さんの高い演技力を堪能できる映画の一つが、2018年公開の「リバーズ・エッジ」(行定勲監督)だ。1993~94年にファッション誌「CUTiE」(宝島社)で連載された岡崎京子さんの青春マンガが原作の群像ストーリーで、吉沢さんは同級生からいじめを受けながらも、どこか達観した独特の雰囲気を持つゲイの美少年・山田一郎を演じた。
目には生気がなく、鬱屈した感情や闇を抱えた側面を、表情の変化やたたずまいだけで見事に表現。終盤のあるシーンで、山田が見せる狂気の表情は鳥肌ものだ。「国宝級イケメン」というパブリックイメージとは対照的な役を繊細に演じきり、ルックスだけではない、俳優としての実力を見せつけた。
これまでに数々の話題作に出演し、2次元から飛び出してきたような端正なルックスから、マンガやアニメの実写化作品での演技にも定評がある吉沢さん。映画「銀魂」シリーズ(福田雄一監督)の沖田総悟役、「東京リベンジャーズ」シリーズ(英勉監督)のマイキー役など、その完成度の高さが話題になった。
そんな中でも、吉沢さんの演技力の高さが存分に発揮されたのが、原泰久さんの人気マンガを俳優の山崎賢人さん主演で実写化した映画「キングダム」シリーズだろう。戦災孤児の主人公・信(山崎さん)の幼なじみで親友の漂と、漂が影武者になる秦の若き王・エイ政を一人二役で好演。境遇が違いながらも瓜二つである2人を見事に演じ分け、シリーズ第3作目の「キングダム 運命の炎」ではエイ政の9歳の頃のエピソードも担い、反響を呼んだ。
吉沢さんの近年の出演作では、聴覚障害者である両親のもとで育った主人公・五十嵐大の心の軌跡を描いた映画「ぼくが生きてる、ふたつの世界」(呉美保監督)での繊細な演技も光っていた。
吉沢さんは手話をゼロから学び、中学生から社会人までの主人公を演じた。年齢によって変わる多感な青年の心の動きを抜群の演技力で表現し、その圧巻の演技で「第34回日本映画批評家大賞」で主演男優賞を受賞した。
心揺さぶる演技で、見る者に鮮烈な印象を残す吉沢さん。9月29日スタートの連続テレビ小説(朝ドラ)「ばけばけ」では、ヒロイン・トキ(高石あかりさん)とのちに夫となるヘブン(トミー・バストウさん)の人生に大きな影響を与える英語教師・錦織友一役で出演する。「ばけばけ」をはじめ、今後吉沢さんが出演する作品で、どのような表情を見せてくれるのか。楽しみでならない。