ちいかわ
第301話 未来を信じている
12月12日(金)放送分
「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載された堀越耕平さんのマンガが原作のテレビアニメ「僕のヒーローアカデミア」の最終章となる“FINAL SEASON”が、読売テレビ・日本テレビ系で毎週土曜午後5時半に放送されている。約9年にわたり放送されてきたヒーロー、敵<ヴィラン>の物語がクライマックスを迎える。2016年に放送を開始したテレビアニメ第1期から、“平和の象徴”オールマイトを演じてきた三宅健太さんは、作品とキャラクターと向き合う中で「ヒーローとは何か?」を問い続けてきたという。“FINAL SEASON”の収録の裏側、作品に懸ける思いを聞いた。
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“FINAL SEASON”は、パワードスーツ&サポートアイテム・エルクレスを装着した“アーマード・オールマイト”とオール・フォー・ワンとのバトルから始まった。オールマイトは奮戦するもオール・フォー・ワンの圧倒的な強さを前に窮地に陥る。そこに駆け付けたのが、心停止から復活を遂げた爆豪勝己。爆豪がオールマイトの窮地を救い、巨悪のオール・フォー・ワンを撃破する展開は、ファンの間で大きな話題となった。オールマイトを演じる三宅さん自身は、同シーンの収録で「かっちゃんが来てくれた時、すごく自分を責めました」と心境を明かす。
三宅さんは、前シーズンの第7期で爆豪が死柄木弔に倒された場面で、爆豪がオールマイトのカードを手に「俺 サインほしかったんだよなぁ」というシーンが「すごく印象に残っている」という。
「いつもの強がっていたりするかっちゃんも全部脱ぎ捨てて、少年が照れながらぽんと言っている。あれを見て以降、展開的にも、立ち位置的にも致し方ないとは思いつつ、『なんで、かっちゃんにもっと目を向けなかったんだろうな』と、なぜか自分がすごい自責の念に駆られちゃったんです。岡本くん(爆豪役の岡本信彦さん)にすら申し訳ないという気持ちになってしまう。ずっと慕ってくれていたんだよなって。でも、オールマイトは後継者である緑谷少年と共に歩んで守り育てると誓っていて、根っこの部分で、演じている僕自身も緑谷少年に気持ちが行き過ぎてたのかなと。なんだか分からないけど、めちゃくちゃ反省して、自分を責めてしまいました」
三宅さんは「オールマイトと完全に気持ちが入り混じってしまった」と語り、「そのシーンは、かっちゃんが救(たす)けに来てくれて、まさに運命がねじ曲がった瞬間だったわけじゃないですか。でも、そのうれしさよりも『ごめん……』という、そっちのほうが強かったです」と振り返る。
オールマイトは、緑谷出久(デク)や爆豪はもちろん、世界中の人々に愛されてきた“平和の象徴”。三宅さんは、オールマイトを演じながらも「『ヒーローってなんだろう』という答えが、ずっと出なかったんです」と思いを吐露する。
「ますます出なくなったというか。みんなを守る、平和を守るのがヒーローということなのか。でも、死柄木のように悪には悪のヒーローが存在するということを考えたら、結局分からなくなりました。ただ、ふと思ったんです。『では、三宅健太にとってのヒーローって何?』と考えた時に、ポンっと出た答えは、デクを演じる山下大輝くんであったり、爆豪を演じる岡本信彦くんだったりしたんです」
その答えを見いだした三宅さんは、第167話「緑谷出久:ライジング」で、最後の戦いに挑むデクに「あの日からずっと、君は私の、最高のヒーローだったよ!」と声をかけるオールマイトを演じることになった。
「緑谷少年に『最高のヒーローだったよ!』という言葉を投げた時、初めて、僕はオールマイトと等身大で気持ちがシンクロしたなと感じたんです。やっと10年かかってオールマイトと同じ気持ちに持っていけた、と。だから、要するに山下少年=緑谷少年、三宅健太=オールマイトなんだと。僕、(原作の)先を読まずに演じるものですから、この台本をいただいて見た時に涙が出ました。僕は下手くそだから、あっちゃこっちゃ行っては、音響監督の三間(雅文)さんに『そっちじゃないよ、お前。こっちの線に行け』と、いつもかじ取りをしてもらいながらやっているんです。それでも、なんとかそこにたどり着けて、本当に心底ホッとしたというか。このセリフを言った後は、行くべきところに行き着いたんだといううれしさがありました」
約9年もの間、オールマイトに真摯に向き合い続けた三宅さん。最後に三宅さんにとっての“Plus Ultra(プルスウルトラ)”を聞いた。
「結局、クライマックス付近になっても、僕はやっぱりいろいろな方の力でもって、なんとか演じさせてもらっているので、正直、自分がどこまで成長して、何ができるようになったかと言われると、分からないんです。ただ、山下大輝くんや岡本信彦くんは、現場でも僕に対して平和の象徴オールマイトとしてずっと接してくれるんですよね。あと、三間さんがかじ取りをしてくれたりして、そんな中で一つ気づいたのは、役作りって、一人でやっていくだけのもんじゃないんだなって、改めて思いました。『人間』って『人の間』って書くじゃないですか。三宅健太がいて、そこに大輝くんや信彦くんがいて、いろいろな人が関わることで、また新たな像が生まれてきて、そういう作用でもって役ってできていくんだなと改めて再認識しました。それは僕にとっては収穫です」
その収穫は、長きにわたり同じ役を演じてきたからこそだと語る。
「同じキャラクターを10年、物語もそれだけ続いていく中で演じ続けたというのは、僕のキャリアの中でも初めてに近いことだと思います。本当に財産です。誰しもが経験できることじゃない。かけがえのないことです」
アニメ「僕のヒーローアカデミア」は、いよいよクライマックスを迎えようとしている。三宅さんら声優陣の魂を込めた演技を最後まで見届けたい。
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