鎧真伝サムライトルーパー:35年ぶり新作はいかにして誕生したのか 受け継がれた熱きサムライの魂 シリーズ構成・脚本 武藤将吾インタビュー

アニメ「鎧真伝サムライトルーパー」のビジュアル(c)SUNRISE
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アニメ「鎧真伝サムライトルーパー」のビジュアル(c)SUNRISE

 1988年4月~1989年3月にテレビアニメが放送された「鎧伝サムライトルーパー」シリーズの正統続編となる新作テレビアニメ「鎧真伝サムライトルーパー」が、1月からTOKYO MXほかで放送されている。1991年発売のOVA「鎧伝サムライトルーパー MESSAGE」以来、約35年ぶりとなる新作で、テレビシリーズとしては約37年ぶりの復活となった。新作はリメークやリブートではなく、“正統続編”として制作された。妖邪界の襲撃から35年後を舞台に、初代の魂を受け継いだ新生サムライトルーパーの活躍を描いている。新作はいかにして誕生したのか。シリーズ構成・脚本の武藤将吾さんに聞いた。

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 ◇リメークやリブートではなく続編を

 「鎧伝サムライトルーパー」は、サンライズ制作のアニメで、“鎧擬亜(ヨロイギア)”を持つ5人の少年が、運命に導かれて集結し、妖邪帝王・阿羅醐が率いる妖邪の軍勢と戦う姿が描かれた。1988年4月~1989年3月にテレビアニメが放送され、人気を受けてOVAも制作。「鎧伝サムライトルーパー 外伝」が1989年、「鎧伝サムライトルーパー 輝煌帝伝説」が1989~90年、「鎧伝サムライトルーパー MESSAGE」が1991年に発売された。

 新作は、「銀魂」「おそ松さん」などで知られる藤田陽一さんが監督を務め、「仮面ライダービルド」「クローズZERO」「テルマエ・ロマエ」などの武藤さんがシリーズ構成・脚本を担当する。分割2クールで放送されることが発表されている。

 武藤さんは企画が立ち上がったばかりの段階から参加し、作品の方向性を探るところから関わった。

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 「完全に真っさらな状態でした。リメークなのか、リブートなのかも決まっていなくて、『サムライトルーパー』をもう一度やりたいというところから始まっていました。僕自身、子供の頃は見ていなかったんです。スポーツをやっていて、当時はあまりアニメを見ていなくて、少し経ってから見ました。やはり鎧擬亜(ヨロイギア)の印象が強かった。僕は戦国時代が好きでしたし、躍動感があって、ヒーローものでもあり、そこに魅力を感じていました。エピソードというよりは、鎧擬亜の印象が残っています」

 リメークでもリブートでもなく、続編にすることを提案したのは、武藤さんだった。

 「35年後が舞台になる。作品と現実の月日の流れがリンクすることはあまりないと思ったことが最初のきっかけでした。少年だった主人公たちが大人になるという設定の続編はあるけど、リアルな時の流れがそのままアニメにも反映されている続編はあまりない。キャラクターたちだけでなく、当時のファンも年齢を重ねている。令和のサムライトルーパーをどのように見守ってもらえるかに興味が湧いたんです」

 ◇サムライの生き様と死に様を描く

 「俺の心を鎧が走る!」。旧作で有名なキャッチコピーだ。新作は、その魂を受け継ぎ、令和によみがえった。

 「改めて見て、感情を突き動かされるエモーショナルなストーリー、熱量のあるバトル、敵味方関係なく魅力あふれるキャラクターをしっかり表現したいというのが、まずありました。それと、僕の指針の一つになっていたのが『俺の心を鎧が走る!』というキャッチコピーです。この言葉を頼りに令和版を描こうとしたところはあります。タイトルに『サムライ』とある以上、僕は『葉隠』の『武士道と云ふは、死ぬ事と見付けたり。』という言葉を意識します。自分の使命を全うするために命を投げ打つ覚悟を持つ。悔いなく生きて、戦うという『生き様と死に様』をきちんと描こうとしています。死に関しては『鎧伝』ではあまりなかったけど、ヒロイックなアニメでそこを表現しようとしました」

 主人公・凱が「死とは何か」と誠実に向き合う姿も印象的だ。そもそも凱が妖邪界側、つまり敵側として初登場したこともインパクトがあった。

 「『鎧伝』との大きな違いです。今回のテーマを考えた時に、昔は『正義はこれだ!』と強く言えたけど、それが言いづらくなっている。そうは言っても正義が物語の根幹でもあるので、凱が敵側として現れたのは、正義を一つに定義したくなかったからなんです。自分たちは正義だと思っていても、視点を変えると、悪に見えてしまうこともある。そういう観点で、正義を捉えようとしました」

 ◇昭和の泥臭さや熱血を

 「涙のリクエスト」「Runner」「人にやさしく」「リンダ リンダ」「TOKIO」など1980年代の名曲、森口博子さんが歌った「鎧伝サムライトルーパー」第二部のオープニングテーマ「サムライハート」が劇中で流れるのにも驚かされた。当時を知る世代には懐かしく、若い視聴者には新鮮に響く。懐かしの楽曲を劇中に流すのは、武藤さんのアイデアだったという。

 「令和の時代と当時の橋渡し的に80年代の曲を流すアイデアが浮かんだんです。令和版のサムライトルーパーは新しいだけではなく、どこか懐かしさもほしかった。昭和の時代に自分が感じた泥臭かったり、熱血さをうまくトレースできればと考えていました」

 武藤さんは「ただ……」と続ける。

 「第1話のつかみだけにするつもりだったんです。監督が『サムライハート』を流したいと言っていたので、流すとしたら第5話しかないと思っていました。だったらほかの曲も……となったんです。でも、単に好きな曲を流せばいいというものではない。テーマに合う曲、キャラクターの心情に寄り添う曲、あるいはシーンと真逆の意味を持たせることもあります。曲を流すことで、物語を重層的に捉えられるようにしました」

 ◇第1クール終盤から逆算した

 旧作は、いわゆる男児向けのアニメだったが、女性の心もつかみ、熱烈な支持を集めた。草尾毅さんら声優陣による伝説のユニット「N.G.FIVE」も人気となり、その伝説は今も語り継がれている。

 「熱烈なファンの方が多く、思い出もあると思います。その全てに満足していただくことはすごく難しい。だから、スタッフがどうしても見せたいシーンを描き、それを第1クールの終盤の第11、12話に持ってこようとしました。そこから逆算して作っています。遼や純がああいう風になったことやナスティの今の立ち位置など気になるところもあると思います。全ては第11、12話のためなんです」

 旧作の魂を受け継ぎつつ、令和のアニメならではの魅力もある。テンポ感のよさも令和のアニメならではだ。旧作を知らない若いアニメファンも楽しめる。

 「『鎧伝』はバトルシーンを中心として、日常があまり描かれていなかったので、続編はキャラクターのさまざまな面を引き出し、より魅力的に見せていこうとしました」

 武藤さんらスタッフの旧作への愛によって「鎧真伝サムライトルーパー」は誕生した。受け継がれたサムライの魂は、令和の物語として新たに走り出した。(阿仁間満/MANTANWEB)

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