オブリビオン:オルガ・キュリレンコさんに聞く アクションの根源に恋愛「相手を愛し続けると思う」

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 トム・クルーズさん主演の映画「オブリビオン」(ジョセフ・コシンスキー監督)が、全国で公開中だ。エイリアンの攻撃を受け全壊した2077年の地球を舞台に、クルーズさん演じる主人公が、墜落した宇宙船から美女ジュリアを救出したことで、さまざまな謎が浮かび上がるという近未来アクション作だ。ジュリアを演じているのが、「007/慰めの報酬」(08年)でボンドガールを演じたオルガ・キュリレンコさん。作品のPRのため来日したキュリレンコさんに話を聞いた。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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 「バブルシップ、スカブ、ドローン、スカイタワー……初めて聞く言葉ばかりで、正直、これってどうなの?と思ったわ。もちろん、監督と話をして徐々にイメージはつかめていったけれど……」と初めて脚本を読んだときの戸惑いについて語るキュリレンコさん。

 「オブリビオン」は、エイリアンに襲撃されたあとの崩壊した地球が舞台。キュリレンコさんが口にした、「バブルシップ」は、クルーズさん演じるジャック・ハーパーが操縦するパトロール機のことで、「スカイタワー」はジャックが妻(アンドレア・ライズブローさん)と暮らす地上1000メートル上空にそびえ立つステーションのことだ。ほかにも、「スカブ(ハゲタカ)」と呼ばれるエイリアンや、「ドローン」という無人偵察機も登場する。それらは、コンピューターグラフィックス(CG)などの最新技術を駆使して初めて目にすることができるもので、キュリレンコさんは今作の世界観に入り込むために、美術担当者が作り上げたビジュアルをプリントアウトし、当時住んでいたアパートの壁に貼っていつも目に入るようにしていたという。そうやってイメ−ジをつかみ、撮影に挑んだわけだが、「出来上がった作品を見たときには、想像以上の美しさに息をのんだわ」と驚きを隠せない様子。

 今作で初共演となったクルーズさんには大いに助けられたという。実はキュリレンコさんはジェットコースターが大の苦手だ。しかし、バブルシップに乗る場面の撮影では、ジェットコースターのような動きをする回転台に乗らなければならなかった。「それはもう、洗濯機に放り込まれたような感覚だったわ。私は全然楽しいと思えなかった。でも、さすが怖いもの知らずのトム。彼はこれまでもいろんなアクションをこなしてきていて、今回も強い忍耐力で私を安心させてくれたわ。彼がいなければ、私はあのシーンを撮れなかったと思う」と“トム様様”だったことを明かした。

 とはいえ今作は、単純な近未来アクションではない。作品の根源には「一人の人を愛し続けられるのか」という深遠なテーマが流れている。そもそも、キュリレンコさんが今作の脚本を読んで気に入ったのは、恋愛の要素があったからだ。「私は女だから、アクションだけじゃ飽きちゃう。ロマンスや、ほかのプラスアルファを求めてしまう。その点この作品には、恋愛という強いものが描かれていたわ」と語る。ただ、その恋愛は普通とは違う。ジュリアとジャックの間に存在する感情は、「愛」だけでは推しはかれない複雑なものだ。理解できない人もいるかもしれない。しかしキュリレンコさんは「私が当事者なら、相手を愛し続けると思う」とそこに描かれている感情を力強く肯定した。

 キュリレンコさんは、これまで「007/慰めの報酬」では家族を殺され復讐(ふくしゅう)を誓うボンドガールを、1986年に起きたウクライナ(当時のソビエト連邦)のチェルノブイリにおける原発事故を描いた「故郷よ」では、放射能を浴びてしまう女性を演じた。本人が「毎回違うキャラクターを演じたい」と語るように、彼女が見せる表情は、作品ごとにまるで違う。

 役を選ぶ際大切にしているのは「ストーリーかキャラクターの何かが、自分の心に触れること」だという。彼女にとって映画には「娯楽作品と、もう少し重たい、明確な主題がある、学ぶことができるような作品の2種類がある」といい、「もちろん、娯楽を求めて映画を見にいく人の気持ちは理解できる」としながら、キュリレンコさん自身は「テーマがちょっと重たい、シリアスな映画にも出演したいと思っている」と明かす。そこには、そうした作品を少しでも多くの人に見てもらいたいという、キュリレンコさんならではの願いがあるようだ。その点、今回の「オブリビオン」は、娯楽性がありながらもシリアスな面も併せ持つ。だからこそ、キュリレンコさんの女優魂がくすぐられたのだろう。

 ボンドガールに選ばれたほどの女性だ。美ぼう、スタイルともに抜群であることは、いまさらいうまでもない。実際、身長174センチの彼女が目の前に立ったとき、同じ人間とは思えない美しさに目を見張った。そんな彼女に、最後に、プロポーションを保つ秘訣(ひけつ)をたずねた。すると「ただただ、母に感謝だわ」という答えが返ってきた。なんでもキュリレンコさんの母親は、娘のキュリレンコさんから見ても「あの年になっても、私もあのくらいキレイでいたいと思えるような女性なの」だそうで、キュリレンコさん自身は、プロポーションを保つための運動や食事制限は特にしておらず、遺伝的要因が大きいようなのだ。

 日ごろ、体重計に乗り一喜一憂している女性には誠にうらやましい限りで、あまり一般的には役に立たない答えに落胆していると、「ただ……」と言葉をつないだので耳をそばだてたところ、彼女の口から出てきた“秘訣”は、「頭はしょっちゅう回り続けているタイプなので、頭の回転でカロリーを消費しているのかもしれないわ」。う~ん、やっぱりあまり役立ちそうもなかった。映画は5月31日から全国で公開中。

 <プロフィル>

 1979年、ウクライナ生まれ。16歳で、パリでモデルとして活動開始。その後、ニューヨークで演技を学び、小川洋子さんの同名小説を映画化した「薬指の標本」(04年)で映画デビュー。「007/慰めの報酬」(08年)のボンドガール役で世界的にその名が知られるようになった。また、チェルノブイリ原発事故を題材にした「故郷よ」(11年)では、舞台となったウクライナ出身だということから、「ああいう話は、映画という形ではなかなか語られることはない。だからこそ参加しなければ」という強い意志でオーディションに臨み、主役の座を勝ち取った。そのほかの出演作に「ヒットマン」(07年)、「マックス・ペイン」(08年)など。ベン・アフレックさん共演のテレンス・マリック監督作「トゥ・ザ・ワンダー」(12年)が日本では8月に公開予定。

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