5人組ボーカルグループ「ゴスペラーズ」の黒沢薫さんが、2枚目のソロアルバム「LOVE LIFE」を5日にリリースした。ソロとしては約7年8カ月ぶりのアルバムで、より濃密な男女のラブソングから、身近な存在に向けての大きな愛をテーマにした楽曲まで、まさに“愛にあふれた生活”を丹念に表現した1枚に仕上がっている。現在はゴスペラーズの活動も並行して行い、幅広く活躍する黒沢さんに、新作やソロ活動、恋愛観などについて聞いた。(水白京/毎日新聞デジタル)
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−−ファーストソロアルバムから今回のセカンドアルバムまで8年近くの年月がたっていますが、その理由は?
黒沢さん:グループとソロでは、例えば同じように最初から最後まで1人でリードボーカルをとっていたとしても、歌の表現や気持ちの出し方が違う、というのを最初のアルバムを作ったときに思ったんです。でも、それって分かっていてもなかなかできるものではなくて。ただその後、ソロライブというのは年に1回はやっていて、そこでソロで表現したいものというのが分かり始めて、7、8年でやっと固まってきたという。そういうバックボーンもしっかりしてないとソロシンガーとして出るっていうのは難しくて、だから、今回はもう1回ソロデビューしたような気持ちです。
−−前作が「Love Anthem」で今作は「LOVE LIFE」。“愛”というテーマで、今回はどんなストーリーを考えたんでしょうか。
黒沢さん:前作は、男女の1対1の関係を8曲かけて成熟させていくというか、最初は(男が)口説くところからスタートして、2人が寄り添って生活を共にし始めるみたいなところで終わっていると思うんですね。でも、この8年の間に震災(11年の東日本大震災)とかもあって社会の状況も変わったり。なので、最初はもちろん1対1の話なんですけど、今ならもうちょっと大きな愛にまで広げて歌えるんじゃないかと。「LOVE LIFE」、つまり生活というところで、そばにあるもの、友人や家族、そういう愛する者全体に向かって最後は歌うという形になってます。
−−ご自身で作詞した「そばにいて」という曲は、「寝ぐせのままで……」というフレーズなど、深い愛の情景が描かれていますね。
黒沢さん:寝ぐせのままで起きてくるって、けっこう許し合った関係っぽいなと思うんですよ。付き合い始めって寝ぐせは見せないし、わりと素になってるポイントですよね。そういうところをいとおしいと思えるっていうのは“LOVE”として一段階上にいってるんじゃないかと。そういう部分をこの「寝ぐせのままで……」で表現したつもりです。
−−また、鈴木雅之さんとコラボレーションした「心はいつも feat.鈴木雅之」も収録されていますね。
黒沢さん:どこまでもクール、でも恋愛に対して狂おしい、そんなマーチン(鈴木雅之さん)を見せたいと思ったんです。非常にみずみずしい歌い方をしてくださっていて、これがまたいいんですよ。
−−今作で特に、ソロだからこそできたと思うことは?
黒沢さん:例えば、表題曲「LOVE LIFE」はクワイア(合唱)スタイルで、ゴスペラーズでは歌えない曲。クワイアスタイルは絶対女性ボーカルが必要なので。あと、こういうユニバーサルな“LOVE”を5人の口で歌うと芯がボケるんですよ。逆に強烈なラブソングは、5人で歌うことで歯が浮くようなせりふも薄くなるところがあって、ゴスペラーズはそれを確信犯的にやってるんです。でも「LOVE LIFE」のメッセージはボケてはいけないので、ソロでないと歌えなかったと思います。
−−ところで、ソロ活動はグループのときと比べてどう違いますか?
黒沢さん:5人でいる時間もすごく心地いいんですけど、楽屋で1人で待ってる時間とかもすごくいいんですよ。何しろゴスペラーズは過干渉なグループで、(デビュー)19年目になるというのに、まだお互いすごく話しかけ合うんです。なかなか1人になれないグループなので、ソロの時間がリフレッシュになるし、すごく楽しい。でもそれは、ゴスペラーズというグループがあるからなんですよね。両方できるというのは、この上なく幸せだと思います。
−−初回盤の特典DVDについてもお聞きしたいのですが、花束をプレゼントとして手渡す「待ち合わせ編」から、黒沢さんが車の助手席に乗っている「ドライブ編」、ビリヤードをする「遊び編」、カレーを食べる「食事編」など、デートの光景が収められていますね。
黒沢さん:これ、リアルなんです。ギャグじゃなくて本当に運転免許持ってないし、とりあえずカレーを食いに行くし。プチプレ(ゼント)も好きなんですよね。僕はロマンチックな人間なんですよ(笑い)。ただ、ビリヤードの(ショットをミスする)シーンは笑うところです。名誉のために言っておきますが、もうちょっとうまいです(笑い)。
−−ちなみに、恋愛がうまくいく秘訣(ひけつ)を伝授するとしたら?
黒沢さん:男性と女性には違う価値観があるから面白い。そういうところからエモーショナルな恋愛が生まれると思うし、違いがあるっていうことを分かり合うことで深い愛に変わる。だからいっぱい会話をしてください。何も言わなくても分かり合えるというのは幻想です。ただ、これはゴスペラーズの曲「ひとり」の恋愛観の否定ではありません(笑い)。分かり合おうとしないでただ「愛してる」って言ってるだけではダメだよっていうことをあの歌は言ってるので。だから分かり合う努力をいっぱいしてください。そうしたら違う世界が広がってすごく楽しくなりますよ。
<プロフィル>
1971年4月3日生まれ、東京都出身。94年、ゴスペラーズとしてシングル「Promise」でメジャーデビュー。05年にファーストソロアルバム「Love Anthem」をリリース。黒沢さんが初めてハマッたポップカルチャーは、絵本。「5、6歳のときにうちの親が絵本セットを買ってきたことがあって、毎晩寝る前に読むのがすごく楽しみで。特に『トロールものがたり』という妖精の話が描いてある絵本がすごく好きで、それはすごく覚えてますね」と話した。
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