テレビ質問状:ノンフィクションW「ロックフォトグラファー・長谷部宏の軌跡」 スター撮影の裏側

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 WOWOWは、毎週金曜午後10時に「ノンフィクションW」枠を設け、オリジナルのドキュメンタリー番組を放送中だ。この枠では、見る人を新しい世界へと誘うフルハイビジョンの“ノンフィクションエンターテインメント”番組をWOWOWプライムで毎週、テーマを変えて放送している。1月24日に放送される「ロックの鼓動を切り撮る一瞬 ロックフォトグラファー・長谷部宏の軌跡」を担当したWOWOW制作局音楽部の山下浩志郎エグゼクティブプロデューサーに、番組の魅力を聞いた。

ウナギノボリ

 −−番組の概要と魅力は?

 70、80年代の洋楽黄金期を盛り上げ、圧倒的な取材力で読者を魅了した音楽誌「ミュージック・ライフ」。中でもグラビア写真は、独自の撮り下ろしで読者を引きつけました。ステージ上、オフショット、リラックスした姿など下敷きに切り抜きをはさんでいた方々も多いと思います。それらを40年近く撮り下ろし続けたのは「ミュージック・ライフ」カメラマン、長谷部宏さんでした。日本で最初にザ・ビートルズを撮影し、世界で一番多くクイーンの写真を撮影し、ザ・ローリング・ストーンズの「山羊の頭のスープ」のレコーディングでは、世界で唯一人、スタジオ内で撮影をすることができたカメラマンです。

 多くのスーパースターの素顔を撮り続けてきた長谷部さん撮影の貴重な写真を紹介しつつ、当時の取材の裏側、そして彼の被写体へのアプローチをひもときます。

 −−今回のテーマを取り上げたきっかけと理由は?

 長谷部さんが撮影した100万点近くあるポジフィルム。来日時のザ・ビートルズを撮影した媒体社は多く存在しています。しかし、彼らのアビー・ロード・スタジオでの様子やUSツアーのザ・ビートルズを撮り下ろした雑誌、カメラマンは「ミュージック・ライフ」であり、長谷部宏さんだけです。特に初期のクイーンは、日本にしかまとまったアーカイブ写真は存在せず、世界中から貴重なものと知られ始めました。チープ・トリックは、長谷部さんのジャケット写真と一緒に世界に羽ばたきました。レッド・ツェッペリンをはじめ、来日したアーティストのステージ写真だけではなく、ツアー中の貴重なオフショットもあります。現在ではその価値は計り知れません。しかし撮影から40年、45年ほど経過したため、退色、カビといったダメージが進んできました。その写真をデジタルアーカイブ化に向けて修復するプロジェクトが始まると聞いたのが、きっかけでした。映像作品も少なく、ビデオで容易に音楽を楽しむことのできない時代に、一枚の写真が洋楽ファンの心を動かした長谷部さんの魅力を探りたく、このドキュメンタリーを企画しました。

 −−制作中、一番に心がけたことは?

 アーティストへ取材を重ねて行く中で、長谷部さんが彼らの信頼を得て、太い絆を重ねていったことをどう構成するか。これが苦労しました。アーティストと読者をつなぐファンクションである写真は、長谷部さんのどのような矜持(きょうじ)から生まれてくるのか……。

 −−番組を作る上でうれしかったことは? 逆に大変だったエピソードは?

 大変だったのは、撮影時のエピソードですね。長谷部さんが、アーティストと濃密な時間をカメラのレンズを通じて交流してきたことを知ることができました。ポール・マッカートニーさん、U2、ボン・ジョヴィ、ポリスなど楽しいエピソードを聞かせていただきました。その多くは番組に反映できなくてごめんなさい。個人の楽しみとなってしまいました……。

 −−番組の見どころを教えてください。

 退色した写真が輝きを取り戻す様子です。赤い写真が、鮮やかな色彩を取り戻します。その様子を「YOUNG GUITAR(ヤングギター)」誌の協力で、長谷部さんに撮影していただきました。番組ではその様子と、撮影した写真は「YOUNG GUITAR」誌に掲載されます。

 −−視聴者へ一言お願いします。

 若いときに聴いた音楽は、今でも心を動かしてくれます。長谷部さんの写真で僕はまた気持ちを若返らせてもらいました。懐かしい写真が登場しますが、ワクワクした瞬間を思い出して、新しい音楽との出合いを求めていただきたいと思います。

 WOWOW 制作局音楽部 エグゼクティブプロデューサー 山下浩志郎

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