HY:自身のレーベルを設立 アルバム収録曲に「音楽を絶対続けていくんだという決意込めた」

アルバム「GLOCAL」について語ったHYのメンバー
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アルバム「GLOCAL」について語ったHYのメンバー

 沖縄県出身の5人組バンド「HY(エイチワイ)」が、2013年に設立した自身のレーベル「ASSE!!Records(アッセ!!レコーズ)」の第1弾作品となるニューアルバム「GLOCAL」を2月26日にリリースした。レーベル名の「ASSE(アッセ)」とは、沖縄の方言で驚いたときに口から出る言葉で、音楽を通して“驚きとワクワクを届けていきたい”というメンバーの思いが込められている。個人事務所及びレーベルを新たに作ったことで、地元・沖縄に再び拠点を戻した5人。そんな環境で制作されたアルバムの制作秘話や環境の変化などについて、ボーカル&ギターの新里英之さん、キーボード&ボーカルの仲宗根泉さん、ドラムの名嘉俊さんに聞いた。

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 −−個人事務所&レーベルを設立しようと思った経緯は?

 新里さん:それまではレールを引いてもらってその上でやらしてもらっていたんですど、HYが10年、20年続けていくためには、そのレールまでも自分たちで作っていって、その大変さを感じることで、曲が濃さを持ったり、(自分たちの)人くささが出てくるんじゃないか、それが大事なんじゃないかっていう思いで、その一歩を踏み出そうという選択をしました。

 −−「ASSE!!Records」というレーベル名にもある「アッセ」は普段もよく使うんですか?

 名嘉さん:使いますね。大きい魚が釣れたときとか。

 新里さん:(東京)スカイツリーを見たときも言いますね。

 名嘉さん:「アッセ高いなあ」っていうふうに使います。

 −−アルバム「GLOCAL」では、10年ぶりに全曲沖縄レコーディングが実現したそうですが、これまでとの違いは感じますか?

 仲宗根さん:地元でやれているってことがすごくリラックスにつながって、最終的には自分の家に帰って、また自分の家から出発してっていう時間の流れがすごくいい影響を促してると思いますね。

 新里さん:歌どりのときも自分で車を動かしてちょっと声を出しながらスタジオに向かって、どんどん高めていく余裕もあるし。

 名嘉さん:1日の使い方がすごいんですよ。レコーディングが終わったら、そのまま釣りに行って、少し休んで、またレコーディングして……みたいな。

 −−環境が変わったからこそ生まれた曲もあるのでしょうか。

 新里さん:「オーレ」という曲は、新しい一歩を踏み出すときってやっぱり勇気が必要で、不安もある中でここまで音楽を続けてこれたのはファンがいてくれたお陰なんだっていうことも思い返しながら、音楽を絶対続けていくんだっていう決意を込めましたね。たぶん自分たちで一歩を踏み出して刺激を求めていかなければ、こういう歌は生まれなかったと思います。

 −−一方、仲宗根さんが作詞・作曲した「言いわけ男と愛して女」は、女性ならではのラブソングに仕上がっています。

 仲宗根さん:私がダンナさんとケンカして、ケンカすると“どっちが悪い”みたいな感じになって収拾がつかなくなるんですよ。それで話も聞いてくれなくなるので、歌だったら聴いてくれるかなと思って、腹いせみたいな感じで書きました(笑い)。この曲を聴かせたら「俺のこと書いただろ?」って言ってましたね。それで(私が)、「これが世に出るから(言い訳ばかりすることを)直せよ」って(笑い)。

 −−また、ラストの「エール」はHYからの応援ソングともいえる曲ですが、どんなきっかけで作ったんですか?

 新里さん:メンバーも知ってる身近な方に作った歌なんですけど、その方が急に悲しい出来事があって元気をなくしてしまったんですね。それで、少しでも早く笑顔になってほしいという思いで書いていったんですけど、自分たちも独立したときで「これからやっていくよ」という思いも一緒に込めながら書きましたね。

 名嘉さん:これを英之(新里さん)が最初に作ってきたときは、久しぶりにアッパーな曲ができてよかったなって。四つ打ちでサンバのリズムもあって、土もにおいもして、最初に聴いたときは素っ裸でサバンナを走っているような感じがしました。

 −−アルバム1枚を通していろんな表情があって、かつ、どの曲にも温かさがありますね。

 名嘉さん:自然にそれを出せたとは思うんですけどね。優しさの中にしっかりとした強さも1曲1曲に出せたなという思いもあって。それはやっぱり、目まぐるしい環境の変化の中で確かになった強さだと思うし。自分たちが生活に溶け込んだ感じでレコーディングできたのと同様に、聴く方にとっても1日1日に溶け込んだアルバムになってほしいですね。

 新里さん:新しいレーベルを作ったときの不安と、でも夢を信じて5人でやっていかなきゃっていうはざまの中で曲が生まれていったので、新しいスタートを切りたいんだっていう方にはものすごく伝わる、少しでも勇気を分けてあげられるアルバムになってると思います。

 仲宗根さん:HYはミクスチャー(バンド)で、もっともっと音楽性は発展していくと思うんです。今、もうすでに次のアルバムの制作に入っていて、今回のアルバムよりさらに世界が広くなってきてるので、これはほんの始まりの一部。まずは「GLOCAL」を聴いて、HYってこんな音も出せるんだって感じてもらいたいです。

 −−タイトルの「GLOCAL」にはどんな意味合いがあるんですか?

 名嘉さん:これから「More Local,More Global」という思いを持ち続けて音楽を届けていこうっていうことで付けたんですけど、地域に根づいて地域で生活しながら生まれてくる感情や音楽を、次は世界に持っていって、そこで音楽をする中で生まれてきた感情や音楽をまた地域に持って帰りたい、というのを追求し続けていきたいなって。両極端な「Local」と「Global」を音楽を通してつなげられないかなと思っています。

 <プロフィル>

 新里英之さん(ボーカル&ギター)、名嘉俊さん(ドラム)、許田信介さん(ベース)、仲宗根泉さん(キーボード&ボーカル)、宮里悠平さん(ギター)の沖縄県出身・在住の5人組バンド。2000年に結成、翌年にアルバム「Departure」でデビュー。3月26日に発売される「私とドリカム−DREAMS COME TRUE 25th ANNIVERSARY BEST COVERS−」では「決戦は金曜日」に参加。「中学、高校のときから『決戦は金曜日』を聴いていて、ずっとカラオケで歌っていたので、ぜひこれをカバーさせてくださいって。それで、カバーするならHYっぽさを入れたいということで三線を取り入れたり。自分たちらしさを最大限に生かしました」(仲宗根さん)という。また新里さんが初めてハマったポップカルチャーは、映画「スタンド•バイ•ミー」。「小学校6年生くらいかな。近所にビデオ屋さんがあったので映画にハマってました。一番好きだったのは『スタンド•バイ•ミー』。あの曲(映画と同名の主題歌)を歌いながら(映画と)同じように地元を探検してました」と話した。

 (インタビュー・文・撮影:水白京)

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