ヒップホップアーティストのKREVA(クレバ)さんが、ソロデビュー10周年を記念したベスト盤「KX(ケイテン)」を18日にリリースした。今作は、10年前の6月18日に発売したインディーズデビュー曲「希望の炎」から最新シングル「トランキライザー」までのシングルの表題曲を主に収録し、それに新曲を加えた内容になっている。ソロデビュー前はLITTLEさん、MCUさんとの3人組ユニット「KICK THE CAN CREW」として活動し、今夏のライブイベントではグループ名義での再集結も決定しているKREVAさんに、ベスト盤の話や10年間のソロ活動への思いなどについて聞いた。
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−−ソロデビュー10周年とKICK THE CAN CREWのイベントでの復活のタイミングが同時期になったのは偶然だったんでしょうか。
俺が10周年、ROCK IN JAPAN FES.が15周年、もう一つ(主催イベントに)呼んでくれたFM802が25周年で、周年が重なったんでオファーを受けたという感じです。(この10年間にメンバーの)2人を(ゲストで)連れて行ったのがROCK IN JAPAN やFM802のイベントだったりしたので、そういう縁もあったと思います。特にメンバーと(今回の復活について)話し合ったとかっていうのはなくて、復活といってもその2本しか今のところないし、グループで本格的にやっていくという気持ちはないですね。
−−そもそも、KICK THE CAN CREWの活動を休止してソロ活動を始めたきっかけは?
ソロデビュー曲「希望の炎」とメジャーデビュー曲「音色」が湧き出してきてしまって、全編を自分で思いついてしまったので、一人で形にしたいと思ったんです。グループをやりながらその曲をちょっと出してみましたっていう感じじゃなくて、本気で勝負してみたいと思ったので。そういう「希望の炎」や「音色」での「やってやるんだ」っていう気持ちの強さみたいなものは、テクニックに置き換えられないと思うので、そのときどきの気持ちが詰まったままのものをみんなに聴いてもらったほうがいいなと思って、(ベストの既発曲は)とり直しをせずにそのまま収録してます。
−−この10年間では、2010年発売のミニアルバム「OASYS」がターニングポイントになったそうですが、それはどういう意味合いで?
世の中の閉塞(へいそく)感みたいなものがどんどん強くなって、音楽シーンだけじゃなく、世の中全体がそれを感じているなというのがあって、楽しむだけの音楽というよりは閉塞感を打ち破るヒントになるようなものをと考えて、歌詞を書いて自分の考えを伝えていくぞっていう覚悟がついたタイミングだったかなと。震災(11年の東日本大震災)も一つ大きくて、そのときは何もやる気がしなかったけど、そこから「KILA KILA」という曲ができて音楽に戻って来られた感じですね。2年前ぐらいに「君はミスター向上心だね」っていわれたことがあって、いわれたらそうだなと思うし、アウトプットするものは、自分の暗い部分よりも明るい部分を出していきたいので、結果的に向上心が詰まってるものになってると思います。
−−それと同時に、今回のベスト盤を聴いた限りでは、いわゆる男女の恋愛を歌うラブソングが減ってきている印象を受けたのですが……。
それはあると思います。たぶん結婚したからじゃないですかね(笑い)。そのことか、2人目の子供が生まれてからかなと思います。
−−今作には(スピッツの)草野マサムネさんやさかいゆうさんなど、J−POPの方たちとのコラボ曲も収録されていますが、これらに限らず、どの曲にもすごくポップセンスが感じられますね。
中学生ぐらいまでは普通に歌謡曲を聴いてきたので、ポップセンスはあると思います。また、久保田利伸さんの曲を聴いていたので、共演できたときはホントにうれしかったし、姉の影響でTMネットワークが好きで、小室(哲哉)さんをステージに呼べたときはホントにビックリして、そのときの自分に教えてあげたい感じがしました。ポップにしようと思って曲を作ったことは一度もないんですけど、キャッチーにしたいなっていうのは常に考えてますね。
−−また“KREVAさんの今”という意味で、2曲の新曲「全速力feat.三浦大知」「Revolution」に込めた思いは?
この2曲には“トライ、エラー”という言葉を合わせて入れました。トライ&エラーのエラーのほうが大事というか、エラーを“失敗”じゃなくて、「こういうふうにすると物事がうまくいかなくなる」という“経験”だととらえることが、10年で感じたことの一つだし、今、自分が発したいメッセージですね。
−−ちなみにこの10年間で印象的だった出来事は?
06年に「THE SHOW」という曲を出したとき、NHKの番組に呼んでいただいて、NHKホール(東京都渋谷区)で収録があったんです。そのとき、たまたま自分以外の出演者のほぼ全員(の曲)がバラードで、自分の「THE SHOW」はかなりイケイケの曲だったんですよ。それで、バラードが続いて自分の番がきたら、流れ的にそのまま座って見るじゃないですか。でも自分が歌いだしたら、1階の真ん中くらいの女性がスッと立って一人で応援してくれたんですよ。それまで、自分はバラードばっかりの中でこれだけイケイケの曲で大変そうだなっていう気持ちがあったんですけど、客席の周りはみんな座ってる中、自分が会場にいたらスッと立ち上がれるかって考えたら、それに比べればこれはもう頑張らなきゃと思えたし、ファンへの感謝の気持ちが強くなった日だから、あの光景はホントに忘れない。それ以降、自分の活動はアウェーのところに乗り込んでいって、少しでもファンの裾野を広げる戦いみたいな感じになったし、もっともっとみんなに知ってもらいたいので、それはこれからも続けなきゃいけないなと思ってます。
<プロフィル>
1976年6月18日、神奈川県生まれ、東京都江戸川区育ち。2001年、3人組ヒップホップユニット「KICK THE CAN CREW」のメンバーとしてデビュー。04年からソロ活動をスタートさせる。7月9日のZepp DiverCity TOKYO公演まで、10周年記念ライブハウスツアー「K10」を開催中。KREVAさんが初めてハマッたポップカルチャーは、3歳のころに始めたギター。「お母さんの自転車の後ろに乗せてもらっているときに『お母さん、ギターやりたい』っていったらしいんですよ。3歳のときから小学校3年生の途中まで習って、音楽的理論とかはまったく残ってないんですが、音をキャッチする耳はそこで鍛えられたと思います」と話した。
(インタビュー・文・撮影:水白京)
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