大ヒット中のディズニー映画「アナと雪の女王」の日本語吹き替え版でヒロインのアナ役を演じた神田沙也加さんが、新ユニットTRUSTRICKでデビューした。25日にリリースした初アルバム「Eternity」について、またユニットが目指す方向などついて2人に聞いた。
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−−「アナ雪」の反響は神田さんご自身どのように感じていますか?
神田さん:自分の中で二つの感覚があって。一つは、うわーすごいなあ、ブームになっているなあって客観的に見ている感覚。一方で、おかげさまで街を歩いていても声をかけてもらえることが多くなって、自分自身を取り巻く環境も変わったということを感じました。客観と主観と両方の感覚がありますね。
作品は、ダブルヒロインということが注目を集めましたが、他のどのキャラクターもどの歌も主役級のエネルギーを持った作品だと思っています。そういうパワーを持ったものに参加できたことは、私自身、誇りです。「アナ雪」で得た経験や引き出し、みなさんからいただいたパワーを、しっかりこのTRUSTRICKでも発揮していけたらと思っています。
−−このユニットの結成は、「アナ雪」が日本公開されるもっと前から準備されていたそうですが、どうしてユニットで活動をしようと?
神田さん:ユニットにするかバンドにするか、限定せずにメンバー集めをして、結果的に2人組のユニットという形になりました。思い返すと、私は15歳から歌っているのですが、17歳のときに初めてサポートメンバーを入れて、生音でリハーサルをやったとき、とっても楽しかったんですよ。そのときから、ソロではなく誰かと一緒にやりたいとずっと思っていて。だから、そこから数えると、構想は10年くらいになります。
−−Billyさんは、デモテープオーディションのような形で選ばれたとか。Billyさんが感じた、神田さんの歌声の魅力は?
Billyさん:一番は透明感です。でも、レコーディングが進むにつれて、こんな引き出しもあるのかって、何度も新しい引き出しを見せてくれて。まさかここまで振り幅が広いとは思っていなかったので、驚きの連続でした。それで結果的に、アルバム「Eternity」は、バラエティーに富んだ作品になりました。ミュージカルを通じてクラシックのセンスも持っているので、独特な才能を持っているという点では、僕が今まで関わってきた歌い手さんとは、決定的に違うなと思いましたね。
−−神田さんは、Billyさんの作る楽曲にどんな魅力を感じていますか?
神田さん:Billyの作る曲は、歌い手の適正をすごく考えてくれています。キー設定にしても、どこが一番歌い手のよさを生かせるか、どこが一番気持ちよく歌えるかなどを、すごく考えてくれている。歌い手がオイシくなるっていうか。独りよがりではなく、ユニットということを、すごく考えてくれています。あと、楽曲だけを聴くと、エレクトロなもの、すごく可愛らしいもの、少し懐かしいテイストもあったりとさまざまですが、一貫しているのは、良質なポップスであるということですね。
−−TRUSTRICKとして、どんなコンセプトを持っていますか?
神田さん:名前にそのまま表れていて。TRUSTは信頼、TRICKはイタズラや策略。私がソロでやっていた昔から聴いてくれているファンの方や、「アナ雪」で知ってくださった方が、私のどういう歌声を聴きたいか、どういうジャンルの音楽を聴きたいか、そういう信頼には応えていきたいです。ただ、それを素直に提供しているだけでは予定調和になってしまう。音楽的な遊び心も必要ということで、Billyが多彩な楽曲を作っていく……。二面性ではないけど、期待に応える部分と、いい意味でそれを裏切っていく部分、その両面を活動の軸にしています。
−−アルバムのタイトル「Eternity」には、どんな気持ちを込めたのでしょうか。
神田さん:“不朽”という意味もあるので、せっかく新しいことを始めたことだし、時代をへても色あせずに残っていくいい曲を作っていきたいという気持ちを込めています。みんなにではなくても、誰かの中で不朽の作品になれたらいいなと。
Billyさん:歌い手が神田沙也加なので、彼女の持つ透明感や、ジャケット写真などにも表現されているゴシック感などを大切にして楽曲を作りました。良質なポップスであることを心がけ、特にメロディーがポップであることを意識して作りました。
僕はもともと、(ギタリストの)布袋寅泰さんをきっかけに音楽を始めたのですが、布袋さんの書くメロディーは、特に女性の声に合うメロディーラインが特徴的で、実際に多くの女性アーティストに曲を書いています。そこから吸収したものが、今回うまく反映できていると思いますね。
−−TRUSTRICKとして、こういう曲が歌いたいというものはありますか? たとえば、誰かの力になれるような歌をうたいたいとか。
神田さん:よく1曲のうちに、最初はすごく悲しく始まったのが、最後にはもう大丈夫ですってなるものがありますが、私はすごくうそくさくて予定調和な感じを受けるんです。誰かに対して、無責任に頑張れって声をかけるのは、少し抵抗がある。だから、すごく落ち込んだとき、より落ち込むために聴いてもらったりとか、泣きたいときにひたれるような曲とか、そういうものであればいいなと思っています。最後まで悲しいままの曲だったとしても、そこから脱する糸口は、きっと聴いてくださる方が見つけてくれる。うれしいことを共有したり、気持ちを後押ししたいというよりは、人の傷や痛みに寄り添いたいという気持ちがありますね。ただ、それを癒やしたいとか支えたいとかじゃなくて、ただ寄り添いたい。そういう部分では、聴いてくださる方と、すごく近い距離感で歌うことを心がけています。
−−そんなアルバムのレコーディングは、どういう雰囲気でしたか?
神田さん:エンジニアさんを含めて少人数でやっていたので、締め切り間際のときは、ほとんど合宿状態でした。ほんと、寮で寝食を共にするみたいな感じだったので、ファミリー感があって、チームという感じしたね。ただ、Billyはすごくマイペースで。年齢的には私よりお兄さんなので、そのへんはもう少ししっかりしてほしいと思うところもありますね(笑い)。
Billyさん:はは(苦笑い)。
−−お二人は、タイプがだいぶ違うようですが。
神田さん:正反対ですよ(笑い)。でも、自分に持っていないものを持っていると思ったからこそ、組んだというのもあって。私の場合は、私自身にも周りに対しても結構、厳しくしてしまうので、なかなか(気の)抜けどころがなかったりするんですね。そんな中に、Billyのようにマイペースな人間がいると、すごくホッとする。Billyは、緩衝材というかバランサーのようなところがあります。そうやって、お互いに持っていないものを持ちながら、互いに補い合っているともいえます。
−−では今後の活動についてお願いします。
神田さん:ライブをどんどんやりたいですね。デビュー作がシングルではなく、アルバムだったというのも、お客さんの手元にカードがいっぱいある状態で、ライブを心待ちにしてほしいという気持ちからでした。アナとはまた違った、神田沙也加というカテゴリーの中から生まれた歌詞、Billyから生まれる多彩で良質なポップスが一つになった、TRUSTRICKの楽曲をぜひ楽しんでほしいです。
<プロフィル>
「ピーターパン」「レ・ミゼラブル」などミュージカルで活躍、ディズニーの劇場版アニメ「アナと雪の女王」の日本語吹き替え版のアナ役で注目を集める神田沙也加さんと15歳からギターと作曲を始め、元WANDSの上杉昇が率いるバンド「猫騙」などで活動していた、ギタリストのBillyさんで結成。
(インタビュー・文・撮影:榑林史章)
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