flumpoolが、コンセプトディスク「FOUR ROOMS」を13日にリリースした。昨年リリースしたベストアルバム「The Best 2008‐2014『MONUMENT』」から1年ぶりのCDリリースとなる今作は、自分たちの原点に立ち返り、新たな一歩を踏み出す作品になった。
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――コンセプトディスクというアイデアはどこからの発想ですか。
山村隆太さん:flumpoolが、今後10周年、20周年と迎えられるようなバンドになっていくためにはどうしたらいいか、年末くらいにみんなで話し合ったんです。そこで、自分たちが本当にやりたい歌、flumpoolのコンセプトじゃないけど、4人が集まって音楽をやっている意味、そもそもどういうのが好きなのか。4人の根っこにあるものを、ちゃんと発信したいと思いました。それで、シングルでもアルバムでもなく、もっとも届くんじゃないかと思ったのが、コンセプトディスクという形態です。
――約1年前のベスト盤で一つの区切りを付け、新しい一歩を踏み出そうという。
山村さん:はい。 というのは……バンドにとってデビュー曲というのは、自分たちが音楽をやる理由とか、社会に何を伝えたいかとかが込められた、大きな根っこの部分だと思うんです。それが僕らの場合、「花になれ」というデビュー曲は、外部の人からいただいた曲で、もちろん大好きな曲ではあるんですけど……。その「花になれ」という根っこから幹ができて、枝になって花が咲いてというところに、どこか限界を感じたんです。「花になれ」をきっかけにして、いろいろな実(曲)がなった、それがベスト盤だったわけですが、それは前に進むためにやってきたもので。でも前に進むことに必死で、後ろにある原点や初心みたいなものを忘れていっているような気がしたんです。そこで、自分たちの本当の根っこに立ち返ることで、時代や流行に流されない大きな大木になれるんじゃないかと。そのための作品を作ろうという意識でした。
――「FOUR ROOMS」というタイトルには、どういう気持ちを?
山村さん:四つの心室、flumpoolの心臓です。心音というのは、静かだけど最も熱い音だと思うので、そういう音を出せたらいいなと思って。
小倉誠司さん:今回はコンセプトディスクなので、同じ方向を向いた曲が並んでいるんですけど、その中でもそれぞれ違った表情があるので、その部分を聴いてほしいなと思いますね。
――全体にアコースティックのサウンドがメインで、音作りや構成もシンプルで、グッと大人のイメージだと思いました。
阪井一生さん:アコースティックは、曲を作る上での重要なキーワードでした。年末に話し合ったときに、共通して出てきたのが、アコースティックとかコーラスワークとか、もっとシンプルなものという意見だったんです。だから、今までのようにいろいろなスタイルでいろいろな音を入れるのではなく、必要な音だけを重ねていくというコンセプトで作っていきました。
尼川元気さん:今の僕らは、そういう音を出す方が、演奏していて気持ちいいと感じているんです。昨年のファンクラブツアーでは、誰も求めていないのに自分らがやりたいというだけの理由で、ビートルズを10曲くらいカバーしたんです。「ツイスト&シャウト」とか「アイル・ビー・バック」とか、初期の曲ばかりやったんですけど、それがすごく楽しかったんですよ。シンプルだけど、ガシッとしっかりとしたものを感じたし、そういうほうが、やっていて楽しいと思った。その気持ちがみんな強かったんだと思うんです。だから、そういう方向でやるのが、健全だし楽しいよねということで。
小倉さん:ビートルズは、みんな好きなんです。人によって、オヤジの影響だったり、入り方はぞれぞれだと思いますけど。それに、ビートルズの曲っていろいろなところで使われていたり流れていたりするから、自然と耳にしているし。
――ビートルズみたいな曲を作りたいという気持ちも?
山村さん:ファンクラブツアーをやっているときは、そんな話もしていたと思います。ビートルズみたいなというよりも、手法とか雰囲気とかをやりたいねって。例えばビートルズの「HELP」では、メインのメロディーのバックで、コーラスが裏メロを奏でていて、ああいうのがいいねとか。それが実際に(阪井)一生から形になって出てきたのが、1曲目の「とある始まりの情景~Bookstore on the hill~」です。
――ビートルズの曲に「フール・オン・ザ・ヒル」という曲がありますが、そこに掛けていたりしますか?
山村さん:そこは、全く意識していなかったです(笑い)。単純に、風通しが良さそうな場所にある、本屋さんというイメージ。この歌詞自体、実際に本屋さんでできた歌詞なんです。
本屋さんには、バイクやグルメ、旅行とか、いろんなジャンルの本があって。そこで手に取る一冊は、無意識かもしれないけど、いちばんその人らしさが出ると思うんです。つまり、自分の中の狭くて小さくて深い部分というものを、ちゃんと見つめられる場所、それが本屋さんだと思いました。そういうものが自分たちには足りないと思ったし、そこから始まっていくものもたくさんあると思うし。僕らだけでなく聴いてくれる人にとっても、そういう瞬間に流れている音楽であってほしいなと思って作りました。
――タイトルの「とある始まり」という言葉からも、新たな一歩を踏み出すという意志を感じます。
山村さん:はい。ここからまた、かなえていきたい夢があるという気持ちを込めました。
――それは、例えばどういう夢ですか?
山村さん:もっともっと、一人でも多くの人に聴いてほしいし。そういう広さと同時に、聴いてくれる一人一人と深いところでつながっていたいし。そう思ってライブをやっても、思い通りにいかないことがいまだに多いですしね。だから、まだまだなんですよ。
小倉さん:全国のアリーナ会場全てを回るツアーや、アジアでのライブもツアーという形ではまだやっていないし。東京ドームもやっていないし。やっていないことは、まだまだたくさんあります。ワールドツアーにも挑戦してみたいし。それに、まだ誰もやったことがないことにも、どんどんやっていくバンドになっていきたいです。8月の野外ライブも、そのチャレンジの一つです。
――2曲目の「歓喜のフィドル」はちょっとカントリーっぽい感じの楽曲。実際に、フィドルを使っているんですよね。
阪井さん:前回のツアーでは、サポートメンバーでバイオリンの方に参加してもらって、バイオリンソロの気持ちよさを感じていたので、そういう曲をやってみたいと思って。フィドルを使った音楽をやっている人は日本にあまりいないし、どうせやるならフィドル全開の曲にしてやろうと。そういう遊べる曲にしたいなと思いました。
――バイオリンとフィドルは、具体的にはどう違うのですか?
山村さん:楽器自体は、バイオリンとさほど変わりはないんですけど、違いは演奏するフレーズです。映画「タイタニック」にも、フィドルを演奏しているシーンがあって。パブなんかがあって、そこでワイワイしているところで流れているイメージです。磨き上げたダイヤとは違った下町感というか、小さな幸せをみんながすごく共有している感じがあって。だから、この曲で伝えたかったのは、大きくなくてもいいから、小さな幸せをみんなと共有できたら、他には何もいらないんだという気持ち。それがライブという場だと思うんです。
阪井さん:実際にライブは意識していて。ハンドクラップ(拍手)とか、シンガロング(コーラスパートを一緒に歌う)とか、参加してもらえるところをたくさん用意しています。
――ライブといえば、8月8、9日には初の単独野外ライブ「flumpool 真夏の野外★LIVE 2015『FOR ROOTS』~オオサカ・フィールズ・フォーエバー~」を開催しますね。8日は「Day of Green」、9日は「Day of Sky」と異なる内容になるんですね。
山村さん:具体的には、来ていただいてのお楽しみということで。でも、2日間とも来ても、どっちも楽しめるものになっています。
あと大きいのは、僕らの地元で開催するということでしょうね。最初に根を張るという話をしましたけど、ここからまた改めて根を張っていきたいと思っています。音楽にはそれぞれ似合う場所があって、僕らflumpoolが一番似合う場所、flumpoolをベストな状態で楽しんでもらえる環境が地元の大阪です。だから、楽しみにしていてほしいです!
<プロフィル>
山村隆太さん(ボーカル)、阪井一生さん(ギター)、尼川元気さん(ベース)、小倉誠司さん(ドラム)。2008年にダウンロードシングル「花になれ」でメジャーデビュー。「星になれ」や「ビリーバーズ・ハイ」などがヒット。2013年には台湾のバンドMaydayとコラボシングルをリリースしている。昨年は、デビュー6年目にして初の学園祭ツアーとファンクラブツアーを開催した。8月8、9日には大阪・大泉緑地で初の単独野外ライブ「flumpool 真夏の野外★LIVE 2015『FOR ROOTS』~オオサカ・フィールズ・フォーエバー~」を開催する。
(取材・文・撮影/榑林史章)