降谷建志:全楽器を一人で担当したソロアルバムをリリース「俺はこつこつ積み上げるタイプ」

初ソロアルバムについて語った降谷建志さん
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初ソロアルバムについて語った降谷建志さん

 ミクスチャーバンド「Dragon Ash」のフロントマンとして知られるKjこと降谷建志さんが、初のソロアルバム「Everything Becomes The Music」を17日にリリースした。“すべては音楽になる”という意味のタイトルが掲げられた今作は、作詞・作曲をはじめ、すべての楽器演奏を自ら担当し、音楽への深い探究心を感じさせるアルバムに仕上がっている。早くも「できればもう1枚アルバムを出してツアーをしたい」と意欲を見せる降谷さんに、ソロ活動を始めた思いや今回のアルバム制作について聞いた。

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 ――ソロプロジェクトをスタートさせようと思ったきっかけは?

 デビューから18年、バンド、ユニット、映画や舞台の音楽、リミックス、プロデュース、客演(コラボレーション)という全部をやってきて、ソロというシンプルな形は唯一、手をつけてなかったっていうのと、昨年のDragon Ashのツアーが、今までにないような充実感や達成感を抱きながらやれたっていうのも後押しになって。俺、楽器の始まりはベースだったし、プロデュース業の時は、全部の楽器を自分でやって曲を作るので、気づいたら何となく全部の楽器を触れて、全部一人で演奏してアルバムを作れるっていうところにやっとなった、ということかな。

 ――Dragon Ashとの差別化という意味で、ソロアルバムの具体的な構想はあったんでしょうか。

 いや、唯一決めたのが、すべての楽器を自分でやろう、レコーディングも自分でやろうっていうことだったので、ソロで何をしようかっていうのも定まってない状態で。ただ、Dragon Ashに関しては、いい意味で縛りを設けてやっていて、簡単にいうとミクスチャーであるっていうことなんだろうけど、そういう縛りを設けることによってフォーカスは狭く強くなるから、強いエネルギーを発するという。自分が思うロックバンドってそういうもので、深く狭く愛してもらうか、広く薄く愛してもらうかだから、深さと広さみたいなものは(バンドでは)そんなに両立できないと思うんですよね。

 ――すべての楽器を一人で演奏することと、バンドメンバーと一緒に作っていく作業はやはり違いますか。

 全然違うよね。やっぱり魔法みたいなものは起きないし。バンドって、ズレがグルーブになってうねりになったり、いろんな発想がぶつかり合って信じられない側面ができたりするけど、そういう魔法はゼロなんだよね。でも一人でやってると、意思疎通は怖いほどとれるから、自分の設計図に限りなく近いものは作ることができるけどね。

 ――コツコツと積み上げていくような感覚ですか。

 そうそう。俺、裏方要素もだいぶ強い音楽家なんですね。一つのコードを変えたいがために、最後まで作ったものをすべて直したりとかは何度もしています。あと、テンポを上げたいっていうので全部作り直したりとか。“面倒くさい”という気持ちとの闘いですけど(笑い)。

 ――歌詞も、よりパーソナルな感情や出来事が題材になっているという印象を受けました。スケボーをモチーフにした6曲目の「P Board」の歌詞は、どんなきっかけから生まれたんでしょうか。

 息子がスケボーをやってて、その後ろ姿を見ていて、「一切振り向かないな、カッコいいな」みたいな感じからです。バンドじゃ(こういう歌詞は)ないですね。フィクションで書かない、自分が日々感じたものや見た風景、実体験を音楽にしていくっていうのはDragon Ashも同じなんですけど、Dragon Ashみたいに、帯を締め直して「おっしゃ、行くぞ!」みたいな曲よりは、より自分の等身大の温度に近い曲が多いですね。

 ――改めてアルバム制作を振り返って感じることは?

 曲も詞も、すべてにおいて比較的早産でしたね。まあ、一人で演奏するから、全部の楽器分の時間は要するし、それはもう膨大なものですけど、でもDragon Ashは300曲もの曲をリリースしてきて、300何曲目を作るのなんて、針の穴を通すような作業で「カッケー(カッコイイ)な、このリフ(フレーズ)。あっ、こういう曲あったわ」みたいな、そんなのばっかりだから。でもソロは、同じことをするにしてもすべてがキラキラするし、枯渇というものが皆無。ずっと週休ゼロでやってて、今も週休ゼロなんですけど、今すぐに、もう1枚アルバムを作り始めたいです。これなら全部自分でやってるわけだし、(ソロ活動は)期間限定のものじゃなく、ずっと続けられるフォーマットなので。

 ――制作の最初の段階から「Everything Becomes The Music(=すべては音楽になる)」というアルバムタイトルは決まっていたそうですが、どんな思いが込められているんでしょうか。

 みんながツイッターやブログ、インスタグラムとかをやるのと一緒なんだろうな。要は、あれは日常にあったことや思ったことを人にさらして、共感を得たいとか、自己表現をしたいわけで、みんなが「ブランチ行きました」とか「散歩に行きました」っていうのを書くのと一緒。俺はそういうことをしていない分、すべてを音楽にしてるので。だからたぶん、みんながブログに何を書こうって思うぐらいのタームで音楽が浮かんでるっていう。俺は人に何かを伝えたいっていうより、何かを生み出したいっていう気持ちの方が全然強いタイプで、音楽を生むために、物事を見たり聞いたりしていると言っても過言ではないくらい。例えば、ブログの文章を考えてる時間があったら、ワンセンテンスでもいいから詞を書きたいとか、ほかのことをやるぐらいだったら、その時間で音楽をやりたいって思う気持ちの方が強いかもしれないです。

 <プロフィル>

 1979年2月9日生まれ、東京都出身。97年にDragon Ashのボーカル&ギターとしてデビュー。2015年3月、配信シングル「Swallow Dive」でソロ活動をスタートさせ、5月には初のソロCDシングル「Stairway」をリリース。8月に「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015」などの夏フェスにソロで出演予定。

 (インタビュー・文/水白京)

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