人気ミクスチャーロックバンド「Dragon Ash(ドラゴンアッシュ)」が、約3年ぶりのオリジナルアルバム「THE FACES」を15日にリリースした。2012年にベースのIKUZONEさんが急逝するというバンド内の危機を乗り越え、現メンバー6人が「The Show Must Go On(それでもショーは続く)」というスローガンを掲げて作り上げた渾身(こんしん)の作品だ。アルバムに込めた思い、制作作業などについてメンバーに話を聞いた。
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−−この3年の間にIKUZONEさんが急逝されて、バンドを続けるか否かということをへた上でアルバムが完成したのでしょうか。
桜井誠さん:まあ、そうですね。スイッチを入れるタイミングはみんな違うと思うんですけど、そこ(バンド継続)に至ったからアルバムもできたんだと思います。
Kjさん:3年、オリジナルアルバムを出してないというのもプロ人生で初めてだったので、すべてにおいて加速できるようなアルバムにしたいと。「THE FACES」というタイトルは、例えば好きな服装、好きなバックグラウンド、気が合うとか人との共通点はいろいろあると思うんですけど、顔はその人にしかないもので、オリジナリティーもあるし、すべてを表すものでもあるだろうし、Dragon Ashの顔を多面的に見て、より立体的に理解してもらえるようにっていう意味と、面と向かって演奏して歌ってるような曲が多いので、“顔をつき合わせて”っていう意味もあるし。だから「The Show Must Go On」というのはあくまで姿勢というか、俺らの性根のテーマで、アルバムの曲のテーマは「THE FACES」っていうことなんだよね。
−−なるほど。では具体的な音作りについてはどうでしたか?
桜井さん:曲が立つための音作りはみんなが意識してるところだと思うんですけど、うちのバンドは「俺が俺が」っていう人は一人もいないと思うので、出しゃばらずに自分の色を織り込みつつ曲の完成度を上げるっていう作業をした結果、1曲が輝くっていう感じだと思います。
BOTSさん:新しい(DJ)機材を使ってみようというのは今回の試みの一つというか。分かりやすくいうと“テレビにリモコンが付いた”みたいな感じで便利になったんですけど、それを進化と取るか退化と取るかは別で、その便利さをうまく落とし込めたらいいなとは思いました。
−−レコーディングにはダンサーのお二人も立ち会っているそうですが、音作りを客観視できる立場としていかがですか?
ATSUSHIさん:頭の中でいつも(ダンスのイメージを)考える作業をしてます。自分は主観と客観視を分けるくせがあって、例えばライブハウスだったら天井にもう一人の自分がいて、踊っている自分を見てるんですよ。そういう感覚で踊りを作ってるんです。
DRI−Vさん:ボクサーの筋肉みたいにムダがない(サウンド)というか。それで真ん中に塊がある。そんな感じがしますね。
−−歌詞も、前に進もうという強い意志を感じるとともに、それを歌うことで自分を奮い立たせているような印象を受けますね。
Kjさん:100%幸福だったらたぶん歌も歌わないだろうし曲も作らないと思うんだよね。何か乾いてて足りないものがあって、悔しいとか劣等感とかいろんなエネルギーが音楽になってると思うし。ムカつくこと、悲しいこと、うれしいことがあって「もっとこうしたい」「こうあるべきだ」っていうことを歌うことで自分を洗脳して、そのマインドに本当に至る、みたいなことも少なくないし。
−−ほかのメンバーが詞の感想を言ってくることはありますか?
Kjさん:たまに言う人もいますね。アツ(ATSUSHIさん)は詞の世界観とかキーワードを拾って(ダンスを)やるタイプだし、サク(桜井さん)は基本的に歌のリズムを聴いてドラムをたたいてるっていう感じなんで。だからうちは特殊なグルーブというか、屋台骨というよりは歌みたいなドラムなんですよね。あとHIROKIさんは歌詞とか一切読まない(笑い)。人によって違いますね。
−−全体の流れもしっかりあって、「The Show Must Go On」から最後の「Curtain Call」まで一つのショーを見ているようですね。
DRI−Vさん:1本の深い映画を見てるような感じがすごくしていて、一瞬もすきがないというか、すごく内容が濃いなと思います。
Kjさん:アルバムを通して、貫いて言いたいことを言ってやりたいことをやらないと、スタンディングオベーションも起きないし、終わったあとのカーテンコールもないと思うので、そういう意味で、疲労感、充実感、すべての感情をアルバムに置いてこれたという感覚や手応えも自分としてはあって。アイデアも枯渇せず、音楽的好奇心が枯れないまま作り終えることができてよかったです。
BOTSさん:聴いてほしいという気持ちが(まんたんウェブの取材だけに)“まんたん”に詰まったアルバムになってます!
−−貴重なコメントありがとうございます(笑い)。そしてツアーも2月から始まりますが、ツアーに向けての気持ちは?
HIROKIさん:とりわけ(アルバム制作は)集中していたし、緊張感がまだとれなくて、そのままライブモードに入っちゃってるんです。でも、今できることを全力でやるっていう思いでやってましたし、それが出来上がってツアーに出られるのはうれしいです。
Kjさん:ロックバンドですから、やっぱライブで鳴らして共感してもらって、踊らせて「カッケー(カッコイイ)な」って言われるのが仕事。会場を“まんたん”にしたいです!
<プロフィル>
1997年、Kjさん(ボーカル&ギター)、IKUZONEさん(ベース)、桜井誠さん(ドラム)の3人でミニアルバム「The Day dragged on」でデビュー。後にBOTSさん(DJ)、HIROKIさん(ギター)、ATSUSHIさん(ダンス)、DRI−Vさん(ダンス)が加入し、7人編成になるが、2012年にベースのIKUZONEさんが死去。13年から現メンバー6人での活動を本格的に開始した。3年ぶりのオリジナルアルバム「THE FACES」を14年1月15日に発売。自身初となる日本武道館公演を3年ぶりの全国ツアー「Dragon Ash Tour THE SHOW MUST GO ON」のファイナルとなる14年5月31日に行うことが決定した。Kjさんが初めてハマったポップカルチャーは「光GENJI」。「小4か小5ぐらいのときに光GENJIが一世を風靡(ふうび)して、俺らの世代はみんなローラースケートをやってたし、親の帯じめを頭に巻いて、音楽室で先生にピアノを弾いてもらって『ガラスの十代』とかやってました。俺は冒頭(の歌い出し)の山本(淳一)さん役。自分のルーツで、結果的に(バンドに)ダンサーを入れるきっかけにもなりました」と話した。
(インタビュー・文・撮影:水白京)
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