最近テレビやCMでちょくちょく見かけるけれど、実はあんまりよく知らない……。そんな、今さら聞けない“ネクストブレーク芸人”の基礎知識を、本人の言葉を交えて紹介。今回は、女性お笑い芸人の横澤夏子さんをピックアップする。アルバイトは30種類以上経験し、その細かすぎる人間観察で、合唱を教える音楽の先生など思わず「いるいる!」とうなずく絶妙な一人コントの達人。「目立ちたがり屋」から端を発して芸人になり、最終目標は「朝ドラヒロイン」だという横澤さんに、お笑い芸人になったきっかけ、ネタの誕生秘話、今後の夢などについて聞いた。
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よしもとクリエイティブ・エージェンシーに所属しているピン芸人の横澤さん(本名)は、1990年7月20日生まれの新潟県出身。2008年4月に、NSC東京校に15期生として入学し、10年5月から活動している。12年1月に「ぐるナイおもしろ荘」(日本テレビ系)で優勝。その後も「とんねるずのみなさんのおかげでした」(フジテレビ系)の「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」などのネタ見せ番組、昨年12月の「今夜くらべてみました 年末超豪華スペシャル!」(日本テレビ系)などのバラエティー番組でも出演が増え、認知度を高めている。
15年3月に東京・よしもと∞ホールで行われた若手対象のコンテスト「彩バトル」で、女性初の優勝を勝ち取り、実力を示した。さらに、同会場での約1年間のレギュラーライブを勝ち取り、6月から月に1回、お笑い以外のゲストを交えたトークライブ「横澤夏子売れ活パーティー」を開催し、27日にはフリーアナウンサーの福澤朗さんが出演する。満を持して東京・ルミネで3月に開催する単独ライブ「ダントツガール」の前売り券は、発売開始約2週間で完売となるなど、その人気は本物だ。
お笑い芸人を目指したのは、お笑いコンビ「タカアンドトシ」のファンで、東京・ルミネtheよしもとで生のライブを見たことがきっかけ。初めは「学校の先生になりたかった」というが、その動機も「先生って身近な芸能人みたいな感じ。みんなに覚えてもらえる職業なんじゃないかと思った」といい、「ただの目立ちたがり屋の延長線上」だと笑う。目立ちたいという思いは、「小・中・高で生徒会長を務めた」というほどだった。
当初は、地元の高校で組んでいた友人とお笑いコンビを組みたいと思っていたがそれはかなわず、「一人の方がバイトも別にできる、歩いていてもネタ練習ができる。要領よくできると思ってピン芸人になった」という。
芸風は主に一人コントで、身近にいるさまざまな女性たちを人間観察してまねをして作っており、代表的なものは「ちょっとイラっとくる女」や「音楽の先生」など。ネタの数は200本ほど持っているという。ネタは主に、久しぶりに会う友達と話し合う中で生まれるといい、「私が『こういう人がいて……』というと、共感してくれたり、それに追加してくれたりする。それで、だんだん(ネタが)出来上がっていくのが多いですね。女子会から生まれる」と明かす。「同居していたネイリストの友人は、いろんなタイプの女性を知っていた。あと、会うと絶対、(面白い話で)3ネタはもらえるお姉さんがいるので、その人とは定期的に会っています。有名人の物まねはないので。私の友達を紹介していますというスタンス」と笑う。
女子会以外にネタの源泉となっているのは、20~30個以上やったというアルバイトや、昨年「月2個」というペースで挑戦した習い事などの豊富な経験。やったアルバイトは、バスの添乗員、ベビーシッター、うどんやイタリアン、中華など自分が好きになった料理店の店員、習い事も料理教室やクラシックバレエと幅広いが、「違う世界を知っておきたい。ネタのためじゃなく自分のため。自己投資で火の車になっている女性もよく見るけど、そのひとりです」と笑う。
趣味も豊富で「3年前は美容の年、おととしは婚活パーティーの年、去年は習い事でした」という横澤さん。「大学に行ってなかったのがコンプレックスで、『人生で一番楽しかったのが大学時代』と言う人がいるのが悔しくて、取り返したかった。経験に勝るものはないと思った」と語る。人気ネタ「音楽の先生」の誕生も自身の趣味から。「カラオケで合唱曲を歌うのが大好きで、それで地元の友達と『懐かしいね』と歌っていてできました」と明かした。
最近はテレビ出演が増え、「ステージに来てくれるお客さんが、『自分の家族も好きです』と言ってくれる。お笑い好きの人以外、家族とか友達まで知っていてくれている」と、知名度が上がっている実感もあり「ネタのキャラクターで呼ばれるのがすごくうれしい。『音楽の先生』で、『渡辺』って言っているので、渡辺って呼ばれます」と喜ぶ横澤さん。ファンは同世代やその母親世代の女性が多いといい、「いい女ぶって果物が買えるようになりました。余裕はそんなにできていないんですけれどいいように見せたいという欲が満たせる」と語る。
ライバルは、女性お笑いコンビ「おかずクラブ」をはじめ、「デニス」「マテンロウ」「鬼越トマホーク」といった同期の芸人コンビたち。「初めてNSCに入ったときは『終わった』と思った。マテンロウは同じクラスですごく目立っていて、私はもう売れないと思った」と当時を振り返るが、「大口たたいて地元を出てきちゃったんで、絶対に戻れない。辞めるなら消息を絶とうと思っています」と笑った。特に同性のおかずクラブについては、「(芸人でない友人が)おかずクラブを知っているのが不思議な感覚。私の同僚知っているんだ、と驚いている」というが、「やっぱり負けたくない。おかずクラブは首席で卒業したので、悔しい気持ちはずっとある」と、思いを明かした。
一方、憧れている芸人は、同じく女性のピン芸人の渡辺直美さん。「プラスのキラキラの元気オーラしかもらわない。(会って)別れた後にも、『あー楽しかった』としか思わない人なんですよ。アイドルみたいな愛されキャラに憧れています」といい、「いつかああなりたい!」と切望した。
「すぐにでも結婚したい」と公言し、婚活パーティーにも積極的に参加する横澤さんの夢は「想像じゃなく実際のママさんネタをやれるキャリアウーマンなお母さん芸人」。最近芸能界に復帰し、それを実行しているお笑いトリオ「森三中」の大島美幸さんにも「うらやましい」と熱視線を送る。
そんな横澤さんの今後やってみたい仕事は「お笑いじゃ絶対無理だけど」と言いつつ、「最終的な目標は朝ドラ(NHK連続テレビ小説)のヒロイン」と宣言。朝ドラの大ファンで、物心ついたときから見ているといい、「朝ドラのヒロインになったら芸人を辞めるって言っている。『なかなか辞められないね』と言われてる」と笑う。演技力には自信があるというが、「出会った人しか演じられないんですよ。人に台本を書いてもらってやったりもするんですが、実際に見ないと分からない。架空の人物の演技は苦手」と明かし、「朝ドラやるには、(自分を主人公に)当て書きしてもらわないとできないかもしれない」と、ヒロインどころか自身の人生の「朝ドラ」化を望み、さらに夢のハードルを上げていた。