中国のマンガが原作の深夜アニメが増えつつある。現在放送中のテレビアニメ「銀の墓守り(ガーディアン)」もその一つで、手がけるのは中国系のアニメ制作会社「絵梦(えもん)」だ。上海を拠点とする上海絵界文化伝播の子会社で、手がけたアニメを日本や中国で放送、配信している。日本にスタジオを構え、日本でアニメを放送する狙いとは? 同社の唐雲康プロデューサーに聞いた。
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絵梦は、上海絵界文化伝播の子会社として、2015年10月に設立された。16年に放送された中国のマンガが原作のテレビアニメ「霊剣山 星屑たちの宴」などの制作にも携わってきたが、同作は上海の本社と日本のアニメ制作会社「スタジオディーン」が制作したこともあり、「銀の墓守り」は初めて絵梦が本格的に制作したアニメになった。中国企業で日本人、中国人のスタッフが働いているが、「銀の墓守り」は監督、作画監督、脚本、原画などほとんどを日本人スタッフが手がけ、中国人スタッフは、中国とのやり取りなどでサポートする形で制作に携わっているという。
唐プロデューサーは、中国のマンガを日本でアニメ化し、放送する理由を「中国の人気のある作品を、日本でも皆さんに見ていきたい。中国のアニメはこれからで、日本に比べるとクオリティーはまだまだです。素晴らしい日本の技術と手を組んで作品を作り、中国、日本の両方のファンにリーチできる作品を目指すためです」と説明する。「銀の墓守り」の原作は、全世界で累計40億回以上閲覧されたという人気作で、アニメは中国、米国などでも配信している。人気作を世界に広げるのがアニメ化の狙いのようだ。
唐プロデューサーは「日本と中国は文化的にも近い。中国で人気のコンテンツは日本でも人気になる」と考えているというが、文化には違いがある。「日本で作ることで、日本、全世界に通じる作品にできるようにしています」と日本で制作することでローカライズもしているという。
唐プロデューサーは「日本のアニメは世界的に人気があり、クオリティーも高い。中国の若者は日本のアニメをよく見ていますし、声優も好きです。日本には、すごい作品がたくさんあり、憧れがある」と話す。中国のアニメファンは「10~40代が多く何千万人といる」といい、「私は1986年生まれで、小さい頃から日本のアニメを見て成長してきた。若い人たちも同じです。私の世代で日本のアニメを見たことがない人はほとんどいない。以前は男性のアニメファンが多かったが、女性ファンも増えている」と説明する。
アニメ、マンガなどが大きなビジネスになると捉えている企業も多いといい、「最近、中国ではエンターテインメントに対して投資家も興味を持っています。長いスパンで考えるようになり、アニメ化だけでなく、ゲーム、実写なども展開する動きもあります」と語る。一方、中国ではグッズなどの海賊版が問題になることもあるが、「グッズは海賊版が多いのですが、最近は政府が海賊版を取り締まっています。商品化は弱い部分ですが、成長できると思います」と状況の変化を明かす。
日本動画協会の「アニメ産業レポート2016」によると、日本のアニメ産業市場は15年は約1兆8255億円で、3年連続で最高額を更新した。特に海外への輸出が好調で、15年は過去最高の約349億円だった。中でも数千万人のアニメファンがいるという中国はまだまだ伸びしろがあるとされる。唐プロデューサーは「絵梦は世界的に皆さんが理解できる作品を全世界にアピールしていきたい」と話しており、日本と中国のアニメ市場を熟知した同社が台風の目になっていくかもしれない。
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