この「しあわせな結婚 インタビュー」ページは「しあわせな結婚」のインタビュー記事を掲載しています。
俳優の阿部サダヲさんと松たか子さんが共演、脚本家・大石静さんのオリジナルストーリーで話題の連続ドラマ「しあわせな結婚」(テレビ朝日系、木曜午後9時)。ホームドラマでありながら、夫婦の愛を問う“マリッジ・サスペンス”と銘打つ今作は、現在第6話までが放送され、見逃し配信の再生数が累計1500万回を突破、各配信サービスのランキングでも上位となるなど、夏ドラマの中でもとりわけ反響を呼んでいる。中川慎子ゼネラルプロデューサーに、企画のいきさつやキャスティングについて話を聞いた。
◇令和の「長男の嫁」のような作品に
大石さん脚本、相葉雅紀さん主演で放送された「和田家の男たち」(2021年)も担当していた中川プロデューサー。「しあわせな結婚」は、その際に読んだある台本が出発点だったという。
「『和田家の男たち』はホームドラマだったのですが、私自身、それまでホームドラマの制作経験が乏しく、勉強のためにかつて大石さんが手掛けて大ヒットした『長男の嫁』(TBS系、1994年)の脚本を読ませてもらったんです。当時、私も一視聴者として夢中になって見ていましたが、改めて台本を読み返すと、セリフや構成、展開に圧倒されました。いつか令和の『長男の嫁』のような作品を作りたいと考えるようになったんです」
大石さんがその後、NHK大河ドラマ「光る君へ」(2024年)の執筆に入ったため、4年越しに企画が実現した。主演に阿部さんを迎えることも、企画時点で決めていたという。
「阿部さんとは単発のドラマ『スイッチ』(2020年)でご一緒しましたが、いわずもがな素晴らしく、いつか連続ドラマの主演をお願いしたいと思っていました。コメディーもシリアスも自在に演じられる阿部さんと、大石さんの脚本を掛け合わせた時、どんな化学反応が生まれるのか、どうしても見てみたかったんです」
主演が阿部さんに決まったことで、「独身主義を貫いてきた男が50代を過ぎ、一歩踏み出して結婚する」という物語になった。
「ただ、現在たくさんのドラマがある中で視聴者に見てもらうには、夫婦や家族の物語だけでは難しいのでは、と大石さんとお話していた際、大石さんが『妻に秘密がある』というサスペンス要素を提案してくださいました。そこから一気に世界観が広がりました。そしてミステリアスで魔性的、かつ芸術肌で品格を感じさせるヒロイン・ネルラ役は松さんに演じてほしいと、お願いすることになりました」
名脚本家と名優のタッグという盤石な布陣となったが、ホームドラマ×サスペンスという挑戦的な題材に、放送前は不安もあったという。
「ホームドラマとサスペンス要素は、一般的には対極にあると思います。勧善懲悪のような分かりやすい内容でもないので、視聴者に受け入れていただけるのか心配でした。でも、今の視聴者は配信で多様な作品に触れているので、目の肥えている方が多い。『違和感があって不穏だけど面白い』『ゾワゾワする感じが新しい』と好意的に受け止めてもらえて、ほっとしました。今の時代だからこそ受け入れていただけた作品だと思います」
◇世界に出しても通用するドラマ
阿部さんといえば昨年のドラマ「不適切にもほどがある!」(TBS系)が大きな話題に。松さんも、今年2月公開の映画「ファーストキス 1ST KISS」が大ヒットした。そして今作には、昨年のNHK大河ドラマ「光る君へ」に出演していた段田安則さんや玉置玲央さんらが参加している。だがそれは狙ったのではなく、「奇跡的に重なった」と話す。
「阿部さんも松さんも、出演をお願いした段階ではまだ直近のご活躍作が放送・公開される前。結果的に、皆さんが次々と話題作を誕生させた直後にお集りいただけたのは、本当にラッキーでした」
Netflixでも配信され、国内ランキング上位に入っている今作。海外展開も視野に入れており、190以上の国と地域で順次配信予定だ。
「国は違っても『家族の物語』は万国共通で響く要素。阿部さんと松さんという日本を代表する二人の俳優が、魂をぶつけ合うような芝居をしてくださっており、世界に出しても通用すると思います。また今作は、テレビドラマ畑だけでなく、映画や配信で実績のあるスタッフが多数集まっており、さまざまな分野の才能が融合したことで、テレビドラマとして非常に高いクオリティーを実現できたと自負しています」
物語の行方とともに、日本発のホームドラマが世界でどう受け止められるかにも注目が集まる。