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劇場版ハイキュー!!:「ゴミ捨て場の決戦」 孤爪研磨の感情の動きを丁寧に 春高の臨場感を 満仲勧監督に聞く

「劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦」の一場面(C)2024「ハイキュー!!」製作委員会 (C)古舘春一/集英社

 古舘春一さんの人気バレーボールマンガが原作のアニメ「ハイキュー!!」の新作「劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦」が、2月16日に公開を迎えた。同作は、原作でも人気の烏野高校と音駒高校の戦い“ゴミ捨て場の決戦”が描かれ、テレビアニメ第1~3期を手掛けた満仲勧さんが監督を務め、脚本も担当することが話題になっている。「ハイキュー!!」には数多くのキャラクターが登場するが、満仲監督は、劇場版でライバル同士である烏野の日向翔陽と音駒の孤爪研磨の二人にスポットを当てたという。劇場版ならではのこだわり、制作の裏側を聞いた。

 ◇日向と研磨の二人のドラマ

 「ハイキュー!!」は、2012年2月~2020年7月に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載。中学時代の最後の公式戦で惨敗した日向翔陽が、惨敗した相手チームの影山飛雄と進学先の烏野高校バレー部で再会し、共に頂点を目指す姿が描かれた。シリーズ累計発行部数は6000万部以上。

 テレビアニメ第1期が2014年4月にスタートし、第4期まで放送されてきた。劇場版は、テレビアニメ第4期で描かれた春の高校バレー2回戦の稲荷崎高校戦に続くエピソードで、日向ら烏野高校が、これまで何度も練習試合を重ねてきた因縁のライバル校・音駒高校と初めて公式戦で対決することになる。

 満仲監督は、第1~3期の監督を務めた後、一旦「ハイキュー!!」の制作から退き、今回の劇場版で再びメガホンをとることになった。

 「テレビシリーズを第3期までやったことで、やりきったというか。これ以上、やっていても同じことの繰り返しになりそうだなと思いました。『キャプテン翼』や『黒子のバスケ』のように強さがインフレしていくようなスポーツマンガであれば、違う演出ができるのですが、『ハイキュー!!』はそういう作品ではないので、ちょっときついなと。そのため、第3期までで一旦区切りをつけて、違う監督さんで春高全国大会編を描いたほうが、違う見せ方ができるんじゃないかと思って、監督を降りたんです。今回は、テレビシリーズではなく映画ということで、テレビでできなかったこともできるんじゃないかと思い、お引き受けすることにしました」

 「ゴミ捨て場の決戦」では、日向が因縁のライバルである音駒の孤爪研磨と対決することになる。「もう一回」がある練習試合ではなく、「もう一回がない」公式戦での戦いが繰り広げられる。バレーボールが大好きな日向と、バレーボールの楽しさを実感できないまま部活を続けている研磨。満仲監督はシナリオを手掛ける際、この二人のドラマに照準を絞った。

 「全国大会に入ってから特にそうなのですが、キャラクター全員が主人公という感覚があって。一人一人にしっかりとポイントを当てるのは分かるのですが、一本の映画として見た時に、それではやはりバラバラになってしまうので、今回に関しては研磨と日向にスポットを当てて、試合やドラマを描いていこうとしました」

 中でも「研磨が主人公」という意識でシナリオ作りを進めたという。

 「なぜかというと、この試合を通して、研磨が一番感情が動くキャラクターというか。研磨は、今までずっとバレーボールが好きかどうかも分からないまま仲間に引きずられてここまで来てしまった。この試合を通じて、最終的に『バレーボールが楽しいんだ』という思いに至る過程をしっかりと描いているので、そこを丁寧に描いていければいいなと思いました」

 満仲監督は、研磨について「これまでのスポーツマンガでまずいないようなキャラ」と話し、「まず、このキャラでいこうと思った先生がすごいなと思います。今回に関しても、研磨が日向を追い詰めていくシーンがありますが、自分の作戦がうまくいきすぎると『面白くない』と思って、自分の予想外のことが起こると『面白い』となる。自分の思い通りにいかないのが面白いと感じられる。そんな感覚を持っている子は、なかなかいないタイプだと思うので、キャラとしてすごく面白いなと思います」と魅力を語る。

 「研磨は日向と出会えて本当によかったのではないか」とも感じているという。

 「日向を通じて、この試合を通じて、研磨がバレーボールの魅力を見いだす姿が描かれます。多分、研磨にとっても、高校までバレーを続けてきてよかったんだろうなと思います。研磨は下手すれば引きこもりになりそうなキャラだと思いますが、しっかり成長できている部分があると思います。また、日向もずっと待ち望んできた対決ではありますし。ただ対決するだけじゃなくて、研磨にずっと『バレーボールは楽しいよ』と伝えてきた中で迎える試合なので」

 ◇春高の雰囲気をリアルに アニメだからこそできる見せ方

 劇場版では、東京体育館を舞台とした春高の臨場感にもこだわった。実際の春高では、広い体育館で同時に複数の試合が行われ、プレーヤーのかけ声、歓声が飛び交っている。声優陣に対しても、「お互いの声が聞こえない中でしゃべっていることを意識しながら演技してください」とディレクションをした。

 さらに、カメラワークも映画館の大画面に合わせ、「これまではレシーブする人、トスを上げる人だけをアップで撮っていたりしたのですが、今回はそれもやりつつ、後ろにいる他の選手たちがどういう動きをしているか、どの位置でどんなポーズで構えているのか、観客がどんな応援をしているのかをもう少ししっかり見せるようにしています」と説明する。テレビサイズでは映らないところまで描くことで、より会場の臨場感を表現しようとした。

 満仲監督はテレビシリーズの頃から「実際にバレーボールをやっている人、見ている人たちが違和感のないように作りたい」とこだわってきた。

 「アニメでは、ウソをつけるところとつけないところがある。ボールをバーン!とアタックして、ボールがすごく変化しているとかはウソをついていいと思うのですが、『ローテーションで今誰がブロックに飛んでいるか』『今誰がリベロで入っているか、入っていないか』などルール的なところはウソをつけない。そういうところを含めて、実際バレーボールをやっている人たちが『分かっているね』と思ってくれるようなものを、違和感なくやりたいなと思っていますね」

 逆にアニメだからこそできる見せ方もあるという。

 「時間をコントロールできるので、シーンによって、スローモーションでゆっくり見せるようなことができます。あとは、テレビアニメ第2期でやったことなのですが、コート幅を変えることもできる。実は、第2期のクライマックスで及川(徹)が岩泉(一)にトスを上げるシーンがあるのですが、思い切りウソをついていて。トスがすごい速さで岩泉に届くというのを見せたくて、スピード感を重視するために、コート幅が実際の3倍ぐらいある(笑い)。多分誰も気付いていなくて、突っ込んでいる人もいなかったので、よかったと思って」

 今回の劇場版では「ラストプレーに特に力を入れた」といい、「かなり臨場感のあるものになっていると思いますので、楽しんでいただければいいなと思っています」と手応えを語った。満仲監督は「ハイキュー!!」の魅力を「バレーボールの魅力をいろいろな角度から最大限に伝えている作品」と語る。劇場版でも、バレーボールのさまざまな魅力を感じられるはずだ。

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