ダンダダン
第10話「キャトルミューティレーションを君は見たか」
12月5日(木)放送分
古舘春一さんの人気バレーボールマンガが原作のアニメ「ハイキュー!!」の新作「劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦」が2月16日に公開される。テレビアニメ第1期が2014年にスタートし、10周年を迎える節目の年に公開される劇場版では、原作でも人気の烏野高校、音駒高校との戦い“ゴミ捨て場の決戦”が描かれる。主人公・日向翔陽を演じる声優の村瀬歩さんにとって「ハイキュー!!」は初の主演作で、約10年にわたり、日向を演じ続けてきた。日向への思い、劇場版の見どころを聞いた。
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「ハイキュー!!」は、2012年2月~2020年7月に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載。中学時代の最後の公式戦で惨敗した日向翔陽が、惨敗した相手チームの影山飛雄と進学先の烏野高校バレーボール部で再会し、共に頂点を目指す姿が描かれた。シリーズ累計発行部数は6000万部以上。
テレビアニメ第1期が2014年4月にスタートし、第4期まで放送されてきた。劇場版は、テレビアニメ第4期で描かれた春の高校バレー2回戦の稲荷崎高校戦に続くエピソードで、日向ら烏野高校が、これまで何度も練習試合を重ねてきた因縁のライバル校・音駒高校と初めて公式戦で対決することになる。テレビアニメ第1~3期を手掛けた満仲勧さんが監督を務め、脚本も担当する。テレビアニメと同じく、Production I.Gが制作する。
前作となるテレビアニメ第4期が放送されたのは2020年。前作から時間をおいて収録に臨むことになり、村瀬さんは過去作を見返したという。
「『ハイキュー!!』というコンテンツに関わり始めて10年目になりますが、日向にとっては高校1年生のまだ途中の出来事なんですよね。ただ、時間がたつと、声優自身の体、声という楽器の使い方が変わってくるので、昔の感じをきちんと勉強した上で、それに近いところでやれたらいいなと思っていました。第1期の頃の自分の演技を聞くと、初々しいというか。『今だったらこうするな』ということもあれば、『このせりふは、すごく真に迫っている』ということもあって、いろいろな気付きが得られました。もちろん技術的にはすごく拙いんだけど、その時のパッションでやらせてもらっていたこともあったなと感じました」
「ゴミ捨て場の決戦」では、日向が因縁のライバルである音駒の孤爪研磨と対決することになる。「もう一回」がある練習試合ではなく、「もう一回が無い」公式戦での戦いが繰り広げられる。バレーボールが大好きな日向と、バレーボールの楽しさを実感できないまま部活を続けている研磨は対照的だ。村瀬さんは、シナリオを読み、「不思議な気持ちになった」と語る。
「僕自身、『ハイキュー!!』の登場人物で誰に近いかというと、日向じゃなくて研磨なんです。一つのことをコツコツやるのが好きだったり、自分から外にコミュニケーションを取りにいくよりも周りに人が集まるタイプだったり、あとゲームが好きだったり、研磨の様子を見ていると、一番共感できるというか。だから、研磨に対して『もっとバレーに夢中になってほしい』という日向の気持ちも分かりつつ、俯瞰(ふかん)で物事を見て本当の熱が入りきらない研磨のこともすごく理解できる。ちょっと不思議な気持ちでシナリオを読んでいましたね」
「研磨に近い」という村瀬さんは、自身が演じる日向を「エネルギーの塊」と表現する。
「日向って、頭で考えるより先に行動に移すタイプで、恐らく声にそんなにインテリジェンスがないタイプのキャラクターではないかと。でも、僕の声質は含みが入ったり、暗く聞こえたり、冷静に聞こえたりしやすいので、テレビアニメの最初の頃から音響監督さんに『ずっと汗をかくくらいやらないと、日向のエネルギーに追いつかないよ』という話をされていました。10年ぐらい日向を演じていますけど、ずっとそうだなと思っていて、毎回彼自身もすごく汗をかいているし、とても大きなエネルギーを持っている。また、本人は意識していないんだけど、さっと人の懐に入っていける愛され力みたいなものがすごくあって。好奇心がとどまることを知らないすごいキャラクターだなとずっと思っています」
自身とは真逆とも言える日向を演じる上で、そのエネルギーに追いついていくのが大変だと語る。
「いろいろなキャラクターを演じさせていただいて、ラクをしてできるキャラクターはいないんですけど、自分の声の元々持っている特性と近いところにいたりとか、感情の流れは理解できるとか、入りやすいキャラクターはいて。それに対して、日向はせりふをしゃべるために僕自身も結構汗をかかなければいけない。毎回、汗だくになりながら演じています」
エネルギーを使う収録に向けて、数カ月前からランニングも始めたという。
「少しでもスポーツマンぽい感じの雰囲気というか、どこかに日頃蓄積したものが出たらいいな、くらいの軽い気持ちなんですけど(笑い)。『ハイキュー!!』では、『しんどい時にもう一歩を踏み出す』ところがバレーボールの肝というふうに描かれているので、実際にランニングをしていて『しんどいし、もうやめたいけど、もう10分頑張るか』みたいなところは意外と近いのかな?と。それをもっと100倍ぐらいきつくしたら、恐らく彼らのメンタリティーになるんでしょうけど、実際に感じた薄いものを濃くするのが僕らの仕事でもあるので、ちょっと一抹を知れた感じというか」
村瀬さんは、「ハイキュー!!」で自身初となる主人公役に抜てきされ、約10年にわたり、日向翔陽を演じてきた。テレビアニメ初期を振り返り、「最初はしんどかった」と思いを明かした。
「それまでこんなにしゃべる役をやったことがなかったんです。『ハイキュー!!』の顔になるのは日向と影山で、影山役の石川界人くんは当時から主役やメイン級の役をいろいろやられていたので、やっぱり力量的に彼の方が圧倒的に上手だった。界人くんはさくさくと収録が進むけど、僕のところは全部録(と)り直しになるのも、なんかうまくいかないなと思っていて。やっているつもりでもできていないということって、最初の時はあるあるだと思うんですけど自分もそうで、気持ちをどんどん引き出そうとするんだけど、まだそこまで出し切れないというか。そういうのも含めて結構ずっと毎話しんどかったですね。下手な自分が嫌だったというか、その事実をずっと見せつけられている感じがしていました」
葛藤を抱えながら収録を続ける中で、「できないしんどさ」が少しずつ変化していった。
「最初はできないことをどうしたらできるようになるのか、解決方法がないのがしんどかったんです。それが青城(青葉城西)戦あたりから、ちょっとずつ自分がどういうふうにやっているのかとか、『お芝居ってこういう感じなのかな』みたいなのが、なんとなく分かり始めて、生みの苦しみはすごくあるけど、『お芝居って結構楽しいぞ』と思い始めた節があって。そこからは、ただしんどいというより、なにかカチッとハマったというか、『こういうことだったのか』と分かる“アハ体験”みたいなものがあって。不思議な感覚なんですよね。『あ、なるほど』と急に腑(ふ)に落ちるというか。今思うと、『もっと台本読めよ』って話なんですけど(笑い)。昔の自分に対しては『台本読んだら分かるやろ』と思うんですけどね」
村瀬さんは「ハイキュー!!」に「育てていただいた」という思いも大きいという。
「最初の頃の日向が運動神経がいいだけの下手くそみたいなところと、僕の下手くそなところ、未熟な感じがフィットして選んでもらったのかなとも思うんです。そういう意味で、すごく育てていただいた。しんどかったけど、自分を成長させてくれた作品だし、本当に日向がいなかったら、僕は今こんなに仕事ができていないので、そういう意味でもすごく感謝しています。日向はバレーボールでいろいろなことをしたい人だと思うのですが、その姿が僕にはまぶしくて、そういうのっていいなと。いつも背中が大きくて、とても格好いいなと思っています」
劇場版では、そんな日向がまた一つの壁にぶち当たることになる。
「日向が今の自分にできることを否定されるような作戦をとられて、音駒の戦術に悪戦苦闘するシーンがあって、そこの掛け合いは見どころの一つだと思います。日向自身、考え方も地に足がついてきて、成長したフィジカルだけでなく、経験則からくる思考で抜け出そうともがく日向が描かれるところがめちゃくちゃ好きで。かなり見応え、聞き応えがあるのではないかと思っています」
村瀬さんは「映像のクオリティーもすごいことになっていますし、役者陣も喉を枯らしながら力の限り魂を込めました」と力を込める。烏野VS音駒の熱い戦い、日向たちの“しんどい時のもう一歩”に注目したい。
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