注目映画紹介:「ル・アーヴルの靴みがき」カウリスマキ監督の“非日常的”な人情物語

(C)Sputnik Oy photographer:Marja−Leena
1 / 6
(C)Sputnik Oy photographer:Marja−Leena

 「街のあかり」から5年ぶりのアキ・カウリスマキ監督の最新作「ル・アーヴルの靴みがき」が公開中だ。「労働者3部作」「敗者3部作」ときて、今度は「港町3部作」の第1弾。フランスの港湾都市ルアーブルを舞台に、靴みがきの初老の男が大活躍を見せる。

ウナギノボリ

 北フランスの港町で靴みがきをする元芸術家のマルセル(アンドレ・ウィルムさん)は、妻アルレッティ(カティ・オウティネンさん)と2人暮らし。ある日、アフリカから不法難民のコンテナが漂着。マルセルは難民の少年と偶然出会い、家にかくまうことにする。しかし少年の行方を警視モネ(ジャン・ピエール・ダルッサンさん)が追っていた。一方、アルレッティが入院するが、夫のことを思い、病気を秘密にする……という展開。

 カウリスマキ監督自身が「非現実的な映画」と表現しているが、もちろんそれはいい意味でだ。パン屋、雑貨屋が並ぶ裏通りの親しみやすさといい、そこでささやかな生活を送るマルセルとアルレッティ夫妻らが、日本の下町を舞台にした人情物語のように描かれている。マルセルは難民の少年を助けようとするヒーロー。追ってくる警視もさほど悪い人ではなさそうだ。そこに、乾いた笑いを誘うカウリスマキ流せりふの数々が乗っかり、妻役でカウリスマキ監督作品の常連女優オウティネンさんの顔、犬などにホッとする。おとぎ話のようなラストで、港町に優しい風が吹き抜けるような清涼感を感じた。4月28日からユーロスペース(東京都渋谷区)ほか全国で順次公開中。(キョーコ/毎日新聞デジタル)

写真を見る全 6 枚

映画 最新記事