マンガ質問状:「宮河家の空腹」 「らき☆すた」スピンオフ作 勘違いから誕生したヒロイン名

美水かがみさんのマンガ「宮河家の空腹」コミックス1巻の表紙
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美水かがみさんのマンガ「宮河家の空腹」コミックス1巻の表紙

 話題のマンガの魅力を担当編集が語る「マンガ質問状」。今回は、大ヒットマンガ「らき☆すた」のスピンオフ作品「宮河家の空腹」です。コンプティーク編集部の加藤剛さんに作品の魅力を聞きました。

ウナギノボリ

−−この作品の魅力は?

 お金もお肉もないけれど愛がある!? 宮河ひかげ(しっかり者の小学生)は、姉である宮河ひなたの浪費癖(オタク愛)のせいで、空腹の日々を過ごしている……。そんなちょっとせつないけど少し笑える、優しい姉妹愛を描いた物語♪……と単行本の説明にあるように、貧乏(なのかな?)ながらに姉妹で支え合って、日々の生活(特に食生活)を貧しくも楽しく過ごしているのですが、お姉ちゃんがほんの少し浪費癖(オタク愛)を直せば、ひかげちゃんは幸せになれるのではないかと思います。

 しかし皆さんも経験があるように、オタク愛を失って日々の生活を送るむなしさ、そしてはらぺこでも物欲で満たされる満腹感(精神的な意味で)、そんなすてきなスキルを可愛い妹に知ってもらうために、英才教育を施しているのですが、残念ながらノーマルな感性を持っているひかげちゃんとはすれ違いに……。

 結構、シビアなお話で、いままでの美水かがみ先生の作品(「らき☆すた」)とはだいぶ方向性が異なると感じるかもしれませんが、いろんな意味で美水節が効いていますので、「らき☆すた」が好きな人はもちろん、知らない方にもぜひ「美水かがみ劇場」を楽しんでいただければ幸いです。

 −−作品誕生の経緯は?

 05年12月に発売した「らき☆すた 萌えドリル」というニンテンドーDS用のソフトのために、美水先生にお願いして誕生したキャラクターが本編主人公の宮河姉妹で、この姉妹をモデルにして描いたエピソードをゲームの特典小冊子に収録したのが、単行本として世に出るきっかけとなりました。

 その後、「コンプH’s」という「コンプティーク」の増刊で連載になったのですが、「コンプH’s」という媒体が一定の役目を終えたタイミングで、「宮河家の空腹」もお休みをいただくことになりました。しかし根強いファンの後押しもあり、「コンプエース」で、改めて新連載という形でスタートを切らせていただき今回の発売へいたりました。ほんとーに、ファンの方々の応援が無ければ、一冊の本として世の中に出なかったと思いますので、皆様には感謝しております。

−−編集者として作品を担当して、今だから笑えるけれど当時は大変だった……、もしくはクスッとしたナイショのエピソードを教えてください。

 笑える話といえば、ひかげちゃんの名前の由来なんですが、当時、ゲームプロデューサーから「らき☆すた」のゲーム版権として「(主人公の泉)こなた」と「ひかげ」のイラスト発注をいただいたのです。そのころに「ひかげ」は存在しなかったので、「『ひかげ』って誰ですか?」と質問をしたら、「(主要キャラクターの1人・柊)つかさ」と頼むところを、なぜか「ひかげ」と間違えたと……。

 ただ、そんな勘違いが面白かったので、そのままの話を伝えながら「ひかげ」の版権をお願いしたところ、美水先生から名前の響きが可愛いということで、ひかげちゃんが生まれました。あとは連想ゲームのノリで、「ひかげ」がいるなら「ひなた」ということで、今のすてきな姉妹が誕生しました。このエピソード、面白くないですか?

−−今後の展開、読者へ一言お願いします。

 もちろん「夢は大きく映像化!」なんですが、まずは少しでも原稿をためて、次巻の発売を目指して頑張っていきたいと思います。そして「宮河家の空腹」とは別に、美水先生のもう一つの代表作「らき☆すた」が、年末でついに連載開始から10年という節目を迎えます。

 ほんとーに、ここまで長く続けてこられたのもファンの皆様のおかげです。改めて大感謝。ということで2013年は、「らき☆すた」10年&10巻といったメモリアルな年にしていきたいと考えています。さらに連載誌のコンプティークも来年は30周年という大きな誕生日が控えているので、共に盛り上げていければと思いますので、よろしければ応援お願いいたします。

 最後に、少しだけ宣伝を! いろんなジャンルでチャンスをいただいた「らき☆すた」ですが、このたびミュージカルに進出することになりました。

 一つの作品でここまで新しいジャンルにチャレンジできることは、そうそうないことなので少しでも話題につながるように頑張っていきます。こちらも合わせて応援いただけましたら幸いです。

 最後にみんながニッと笑える展開を目指しつつ! 長々とお付き合いいただきありがとうございます。

角川書店コンプティーク編集部 加藤剛

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