朗読少女:乙葉しおりの本の小道 第123回 森鴎外「高瀬舟」

「山椒大夫・高瀬舟」著・森鴎外(新潮文庫)の表紙(左)と乙葉しおりさん
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「山椒大夫・高瀬舟」著・森鴎外(新潮文庫)の表紙(左)と乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。これまでに100万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが名作を紹介する「乙葉しおりの本の小道」。第123回は森鴎外の「高瀬舟」だ。

ウナギノボリ

 皆さんこんにちは、乙葉しおりです。

 1年の間で一番昼の時間が長い「夏至」も過ぎて、もうすぐ7月ですね。7月の別称といえば「文月(ふみづき)」ですが、その由来は七夕の日、短冊に歌を書き、書道の上達を願う行事「文披月(ふみひらきづき)」だとする説が有力です。他にも、稲の穂が見えてくる時期ということから「穂見月(ほみづき)」という呼び名が転じたという説もあるようですよ。

 声に出すことで見えてくる日本語の美しさ、私ももっと勉強したいと思います。私も七夕に向けてお願いごとを考えておかないと……。いざ短冊を手にすると、何をお願いするかいつも迷ってしまいます(>_<)願いごとがあまり多すぎると、効き目がなくなってしまう気がするんですよね。部長さんは「数撃ちゃ当たる」なんて言いますけど……(^−^;

 さて、6月28日は佐野洋子さんのお誕生日です。1938年北京生まれ、武蔵野美術大学でデザインを、ベルリン造形大学でリトグラフをそれぞれ学んだ後、「やぎさんのひっこし」で絵本作家としてデビューしました。

 代表作の「100万回生きたねこ」は、子供たちにとどまらず多くの人々に感動を与え、90年代には女優の大竹しのぶさんによって朗読されたCDも発売されています。子供の頃に読んだ、という人も朗読の魅力とあわせてもう一度ゆっくりと楽しんでみると、何か違ったことが見えてくるかもしれませんよ。

 ではここで朗読倶楽部のお話、前回に引き続き、「朗読劇」との出会いのエピソードです。

 「朗読って何だろう?」を知るため、朗読劇を鑑賞することになった私たち朗読倶楽部。朗読といえば1人で行うものだと思っていたのですが、舞台で演劇のように展開される朗読劇を目の当たりにした私たちは、それまで朗読に対して抱いていたイメージを一新させられてしまったのです。

 複数の語り手さんたちが交互に物語を紡いでいく様子は、まさに驚きの連続で……、語り手さんは椅子に座ったまま本を読んでいるだけのはずなのに、まるで身ぶり手ぶりを使って演技をしている様子が、目の前に浮かび上がってくるように感じられました。

 上演が終了したとき、部長さんはかなり興奮していましたし、みかえさんも感動しきりの様子でした。けれど、私はというと……、とても良かったと思う一方、ただでさえあがり症の私には、とてもまねできないように思えたのです。

 もし私たち朗読倶楽部が、朗読劇をしたら……個人の朗読で失敗するならまだしも、朗読劇での失敗は部長さんやみかえさんを完全に巻き込んでしまうということ……。そう考えると、私は暗い気持ちになってしまいました。

 けれど半年後、まさか同じ場所で「朗読劇」の舞台へ立つことになるなんて……このときの私に予想できるはずもなかったのです……と、いうところで、今回はここまでです。

 そして……次回からは、いよいよ朗読倶楽部の明暗を分ける5回目の朗読大会出場のお話をしていきたいと思います。

 次回もまた、よろしくお願いしますね(*^^*)

■しおりの本の小道 森鴎外「高瀬舟」

 こんにちは、今回ご紹介する一冊は、森鴎外さんの代表作のひとつ「高瀬舟」です。

 神沢杜口(かんざわ・とこう)さんによる江戸後期の随筆集「翁草(おきなぐさ)」に収録された、高瀬舟に関する1エピソードから着想を得たというこのお話は、1916年に発表されました。

 「高瀬」とは底の浅い川のことで、このお話の舞台となっている京都の高瀬川も、江戸時代に物流用として造られた底の浅い運河です。この底浅の川を通行するために、船底を平らに作った小型の運搬船を「高瀬舟」と呼ぶんですよ。

 およそ400年前の1614年に完成した高瀬川は、大正時代までのおよそ300年余りにわたって京の都の水運を支えたそうですが、その長い歴史の中で運び続けられたのは荷物ばかりではありません。重い罪を犯して遠島(島流しの刑)になった人を、大阪まで護送するためにも使われていたのです。

 時は江戸時代、弟を殺した罪で遠島が決まった罪人・喜助さんが、護送のため高瀬舟に乗せられました。看守として同じ船に乗り込んだ同心の羽田庄兵衛さんは、これまで護送した多くの罪人とは明らかに異なる彼の態度を不思議に思います。

 彼はおとなしく、礼儀正しく、かと言って権力にこびているような様子はありません。島流しとなる自らの境遇や罪の重さを悲嘆するでもなく、むしろ晴れやかで楽しそうです。見ようによっては、遊覧船で川下りを楽しんでいるようにすら感じられます。

 とうとう好奇心が抑えられなくなった庄兵衛さんは、「何を思っているのか」と、喜助さんに問いただすのですが……。

 森鴎外さんが高瀬舟執筆の経緯を記した「高瀬舟縁起」によると、「翁草」を読んだとき、「財産の観念」と「安楽死の是非」という二つの大きな問題を意識したと語っています。

 喜助さんが語る、罪人となった経緯……皆さんはそれを読んだとき、彼のしたことを罪と思うでしょうか? それとも……?ぜひ一度、読んでみてくださいね。

 ※本コラムをしおりさんが朗読する「乙葉しおりの朗読倶楽部」がiPhoneアプリ「朗読少女」のコンテンツとして有料配信しています。

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