真田広之:米映画「ウルヴァリン:SAMURAI」に出演 「日本人が見ても納得できる作品に」

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 米マーベル・コミックの人気ヒーロー、ウルヴァリンが日本を舞台に死闘を繰り広げる「ウルヴァリン:SAMURAI」には、ハリウッド大作にもかかわらず日本人キャストが多数出演している。その1人が日本を代表する国際派スター、真田広之さんだ。真田さんに出演に至った経緯や撮影の裏話などを聞いた。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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 今作では、カギ爪に驚異的治癒力を持つヒュー・ジャックマンさん演じるウルヴァリンが、かつて命を助けた日本人・矢志田に請われ、日本にやって来る。矢志田は今では成功した実業家だが死のふちにおり、命の恩人のウルヴァリンに礼をいいたいと、自身のボディーガード・ユキオをウルヴァリンのもとに差し向けたのだ。ユキオを演じる福島リラさんも、矢志田の孫娘マリコ役のTAOさんもともに海外で活躍してきた日本人モデルであり、矢志田役のハル・ヤマノウチさんも、イタリアの市民権を得て俳優、振付師、翻訳家などとして活動しているが日本生まれ。そして、矢志田の息子シンゲンを演じているのが真田さんだ。

 今作の企画が立ち上がったのは、今から3年ほど前だった。真田さんは、この映画が作られるという情報を米ロサンゼルスでキャッチし、その段階で本屋に行き、日本を舞台にしている何冊かの原作を買って読んだところ、その面白さを認めつつも「え? 現代劇に忍者?」と驚き、「どう実写化するのだろう」と考え込んだという。それでも興味を持っているとオファーが来た。そこで今作のジェームズ・マンゴールド監督と会い、彼の日本文化に対するリスペクトの気持ちや、小津安二郎監督や溝口健二監督、黒澤明監督などの古きよき日本映画から受けた影響、その上でオリジナルな日本を描こうとしているマンゴールド監督の姿勢に触れ、「むしろ日本人には作れない日本、しかも、日本人が見ても納得できるものが作れるのではないか」「この監督となら意見をきちんと交換でき、その上でシリーズが背負っている世界観との折衷案が探せるはずだ」と今作への出演を決めたという。

 日本が舞台となれば、当然、日本文化に精通した人間が必要だ。真田さんの役はウルヴァリンの敵役だが、今作ではそれ以外に、日本の描き方についてのアドバイザー的な役割も担った。欧米のスタッフは日本について十分研究していたが、日本古来のしきたりなど日本人ですら間違えることもある部分を指摘する役割だ。他の作品で一緒に仕事をした美術スタッフが今回もたまたま一緒で、あるとき、その人物から図面を見せられ、「おかしなところがあったら指摘してほしい」といわれたという。「ほとんど大丈夫だったんですけど、道場の話になってそこに線が引かれていたんですね。それで、『それは何?』と聞いたら、『マット(畳)だ』と。マットは柔道。ここは(剣術の道場だから)ダークカラーの板張りにして、艶を出しておいてね。それから、映らなくてもいいから神棚は用意してね」とアドバイスしたという。ほかにも、小道具の置き方が毎回間違っており、カメラが回る寸前に「すっと直したり(笑い)」、日本刀を刀台に置くときの上下左右の正しい向きをチェックしたり。「でも、それも楽しいですよ。世界から日本がどう見られているかが分かるし、それに自分も勉強しておかなければならないから、もう一度日本文化を学び直すいい機会になるんです」と笑顔で話す。

 そんな真田さんだが、やはり今作での本分はウルヴァリンの敵役。当然、ウルヴァリンとの一騎打ちの場面もある。そのファイトシーンはかなり神経を使ったそうだ。アクションの振り付けについては真田さんのアイデアがかなり取り入れられており、ウルヴァリンが両手に爪を持つことから、彼と“二刀流”でやり合うのも、真田さんのアイデアだという。ただ注意が必要だったのは、ウルヴァリン役のジャックマンさんが上半身裸だったこと。「僕が持っていた刀は真剣ではありませんでしたが、それでもかなり硬い素材でできていました。ヒューにそれが当たってけがをさせるわけにはいかない。でも手加減し過ぎるとリアルに見えない」と撮影時はジレンマを感じたようだ。なるほど、スクリーンからにじみ出る緊張感は、そういった苦労のたまものだったのかと納得させられた。

 当初は、「映画を成功させて、日本を舞台にした作品がまた作られるよう、次につながるように踏ん張るのも、僕の一つの役目なのかもしれない」という思いと、「純粋にマンゴールド監督とヒューと仕事がしたかった」という思いで今作に挑んだ真田さん。一足先の7月に公開された米国では初登場第1位を記録。多くの米国人に、真田さんの存在感を見せつけた。日本でも13日から公開中で、よろいをつけ、日本刀を持ち、ウルヴァリンを相手に闘う真田さんのりりしい姿を、ぜひスクリーンで堪能してほしい。

 <プロフィル>

 1960年、東京都生まれ。子役を経て、「柳生一族の陰謀」(78年)で本格的に映画デビュー。日本を代表するアクション俳優として活躍する一方、「道頓堀川」(82年)、「麻雀放浪記」(84年)、「つぐみ」(90年)、「僕らはみんな生きている」(92年)、「眠らない街 新宿鮫」(93年)、「写楽」(95年)などに出演。主演作「たそがれ清兵衛」(2002年)は米アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた。99年にはロイヤル・シェークスピア・カンパニーの「リア王」に出演。ほか、03年の「ラストサムライ」、05年の「PROMISE プロミス」、06年の「上海の伯爵夫人」、07年の「ラッシュアワー3」「サンシャイン2057」、08年の「スピード・レーサー」、12年の「最終目的地」など海外作品に出演している。今冬、「47 RONIN」の公開を控えている。

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