注目映画紹介:「スティーブ・ジョブズ」アップル創業者の半生を描く カッチャーが晩年を好演

「スティーブ・ジョブズ」の一場面 (C)2013 The Jobs Film,LLC.
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「スティーブ・ジョブズ」の一場面 (C)2013 The Jobs Film,LLC.

 アップルコンピュータの創業者スティーブ・ジョブズの半生を描いた「スティーブ・ジョブズ」が全国で公開中だ。2011年10月5日、56歳の若さで亡くなって初めての映画化。ジョブズを演じているのは「バタフライ・エフェクト」(2004年)や「ベガスの恋に勝つルール」(08年)などの作品で知られるアシュトン・カッチャーさん。彼のジョブズ氏との瓜(うり)二つぶりも話題になっている。

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 映画は、2001年のアップルコンピュータの社内ミーティングで幕を開ける。スピーチをしながらポケットから画期的なデバイス(装置)を取り出すジョブズ。それこそが、のちに爆発的にヒットし、社会的にも革命をもたらしたiPodだ。映画はそこから時代をさかのぼり、彼の大学時代(実際は中退していたが)やビデオゲームメーカー時代の仕事ぶり、のちにアップル社の共同創業者となるスティーブ・ウォズニアック(ジョシュ・ギャッドさん)との出会い、さらにアップル社から追い出され、再び返り咲き、確たる地位を築いていく姿を駆け足で描いていく。

 横暴でわがままで、才能のない人間や努力をしない人間はあっさり切り捨てる。その一方で、何か一つヒントを得ると、そこに自分のアイデアをつぎ込み、新たな形を生み出す才能のすごさ。そうしたジョブズ氏の姿を映画では見せていく。ただ、数ある評伝を手際よくまとめた印象を受け、彼の人柄や偉業を総括的に知るにはよいが、そうではない、彼のことをもっと深く知りたいと思うジョブズファンは、物足りなさを感じるかもしれない。注目されたカッチャーさんの演技も、確かに晩年のジョブズは、それが本物かと見まごうほど酷似している。だが、その役作りが見られる場面は少なく、その点においても残念さはぬぐえなかった。1日からTOHOシネマズ日劇(東京都千代田区)ほかで公開中。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

 <プロフィル>

 りん・たいこ=教育雑誌の制作会社、編集プロダクションをへてフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。

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