東映アニメーションがスマートフォン向けゲームの開発に本格参入する。アニメ「ワンピース」や「ドラゴンボール」などを世に送り出してきた老舗アニメ会社がなぜ今、スマホゲームなのか。同社ネット・モバイル事業室のプロデューサー・松浦寿志さんに話を聞いた。(毎日新聞デジタル)
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現在のアニメについて松浦さんが懸念しているのは消費スピードの速さだ。「1クール(3カ月)では短すぎ、1年以上欲しいのが本音。売れても商品を出すスピードが追いつかない」という。例に挙げたのは、看板作品の一つ「プリキュア」シリーズ。初代からヒットしたように思われる同作だが、本当の意味で火が付いたのは、2年目に放送した「Max Heart」からだった。
そうした放送期間が短い現在のアニメを補完するのにふさわしいのが、インターネットを活用したゲームというわけだ。アニメが終わってもゲームはサービスが続けられるため、息の長い展開が可能になるのだ。パソコンでの展開も検討したが、スマートフォンの市場に将来性があると判断したという。
さらに制作費の安さも魅力という。アニメの制作費は1話(30分)だけで1000万円以上、1クールで1億円以上かかるが、ゲームアプリなら数百万、豪華な仕様でも数千万円で着手できる。つまりアニメより安価で、テレビ局の思惑に関係なく作品を生み出せるというわけだ。
企画は2年前からあったというが、当時、スマホゲームというと、後に問題となり廃止された「コンプガチャ」全盛の時代。そのため、一部ゲームファンの間でスマホゲームのイメージが悪く「肝心のキャラクターが嫌われてはダメ」と見送ったという。また社内では「ゲーム作りなら他社に任せたら?」という意見も強く、理解してもらうのにも時間がかかったという。
そうして実現した東映アニメーションのスマホゲーム第1弾が、今月中にサービス開始予定の「円環(えんかん)のパンデミカ」だ。謎の新種ウイルスで凶暴化した感染者(ゾンビ)たちによって世界の大半が奪われた現代を舞台に、生き残るために戦う……という内容だ。
根底には、アニメ会社らしく全年齢を意識した考えが随所にある。「パニックもの」にしたのは、「タイタニック」や「踊る大捜査線」など映画やテレビの人気分野だから。また敵キャラクターの感染者を美形のキャラクターにしたのも理由がある。松浦さんは「女性に嫌われる作品であってはいけないし、我々はそういうアニメを作ってきた」とアニメの老舗としての伝統的な考えが生かされている。
ゲームがあればアニメの放送がない期間の人気を支えられるというのが松浦さんの考えだが「アニメ会社でも、アニメがコンテンツの最初の窓口である必要はないのです」と今後は、ゲームを起点にアニメ制作などのマルチメディア展開し、海外展開も視野にいれるという。
強みになるのが、過去の東映アニメーション作品のキャラクターをゲームに登場させるアイデアだ。松浦さんは「ゲームから何十年も愛してもらえるようなキャラクターを作りたい」と展望する。老舗アニメ会社の挑戦は、コンテンツビジネスの仕組みを変える可能性がありそうだ。
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