スターダスト☆レビュー:根本要に聞く 36枚目のアルバムはKANと共同制作「違う刺激がほしい」

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 4人組バンド、スターダスト☆レビュー(通称スタレビ)が、前作「B.O.N.D.(ビー・オー・エヌ・ディー)」以来約2年ぶりのオリジナルアルバム「SHOUT」を6日にリリースした。ボーカル&ギターの根本要さんと、「愛は勝つ」のヒットで知られるシンガー・ソングライターのKANさんとの共同プロデュースによる作品で、KANさんの色と従来のスタレビらしさが絶妙にブレンドされたアルバムに仕上がっている。制作中もそのバランスが「すごく心地よかった」と語る根本さんに、新アルバムや最近の活動について聞いた。

ウナギノボリ

 −−今作「SHOUT」の共同プロデューサーであるKANさんとは、以前、事務所が一緒で親交もあったことからプロデュースの話をお願いしたそうですね。

 今回36枚目のアルバムだけど、そのくらい作ってくると、なんとなく「こうすりゃいいんだな」っていうのが分かってくる。でも自分の中で誇れるアルバムにしたいし、刺激的な部分もほしいし。12、13年前、「スタレビはこうじゃないの?」っていうのを(客観的に)言ってほしいところもあって、プロデューサーを立てて何枚か作ったことがあったんですけど、今回、また自分の中でそれを感じて、でも、もうちょっと違う刺激がほしいなと。ミュージシャン的な突っ込み方をしてくれるヤツがいいなと思ったんです。

 −−作業はどのようにして進めていったんですか?

 この話をお願いしたときに、KANちゃんはちょうどお休み期間で、中央アジアからロシアまで回ってくるという一人旅を3週間くらいやっていて、僕らだけである程度完成させた部分と、KANちゃんが帰ってきてから作った部分でアルバムができたという。あまりブランニューなものは作りたくなかったし、だからといって相変わらずなのは嫌だし、そのさじ加減としては、すごくいいものができたと思って。“おもちゃ箱をひっくり返し系”っていうのは最初から僕の中にあって、1曲1曲のタイトルを見ても変な凝り方をしているタイトルばかりで、アルバムタイトルの「SHOUT」とあまりリンクしてないところがあるんですね。でもそのちぐはぐさ、まとまらなさがとても具合がよかったというか。

 −−“背がほしい”という意味の9曲目「セガホ」も面白いですね。

 これは、僕が「褒めてくれ」っていう曲を書いていて、KANちゃんに見せたら「今さら“褒めてくれ”はないんじゃない」って全否定されて(笑い)。でも曲の中で「私はもう少し背がほしい。別に女にモテたいわけじゃないけど」みたいなことを書いたら、KANちゃんが妙に気に入って「これは要さんと僕の共通項ですね。これを中心にもっと広げたらいいと思うんですけど」っていって出来上がったという。だから、サウンド面の力はやっぱり大きいけど、それ以上に歌詞のアイデアはうまくもらえたかなって。

 −−今回は恋の歌が多くて、しかも一人の女性をずっと思い続けている男性が主人公で、でもその女性には別の男性がいたり、という内容のものが何曲かありますね。その理由は?

 今回はリアルなものを作ろう、ある意味ノンフィクションでいこうっていうのを決めたんです。僕は実は恋愛経験がものすごく少なくて、嫁さんぐらいしかいないから、嫁さん(との付き合い)がものすごく長くて、その間に浮気していたかどうかは知らないけど(笑い)、ドラマを作るためにはそういうことも入れなきゃいけなかったり。ただ自分がずっと思っている気持ちっていうのは「あれもいいな、これもいいなっていう中から君を見つけた」とは僕は言えないし、歌にはしづらいですよね。あと、「おぼろづき」という曲は唯一フィクションの物語なんですけど、中国とか、そういう大陸の歴史的な恋みたいなものを思い浮かべるサウンドになったので、遠くから見つめる恋、成就しなくてもいいと思う恋というか。そういうのもドラマだし、恋をしてわけが分かんなくなっちゃう「恋は医者でも治せない」とか、あと僕の家は子供がいないけど、これからの地球に対しての愛「拝啓 子供たちへ」とか。そのへんはうまく広がったかなと。

 −−6曲目「熊谷の風」はベースの柿沼清史さんの楽曲ですが、歌詞にあるように皆さんは実際に熊谷(埼玉県)で出会ったんですか?

 出会ったというか、僕らはそこで音楽活動をしていたんですね。この歌にも出てくる八木橋という老舗デパートはいまだにあるけど、その新館を作ったときに旧館がまるまる空いて、それを取り壊すことなく、地下の食品売り場を若者たちに開放してくれたんですよ。それを僕らのサークルの先輩が借り受けてライブハウスを作ったんです。僕たちはいつもそこで練習をしていて。だから僕らの歴史を作ってくれた町です。

 −−ところで、先日、コンサートで募った義援金を福島大学の子ども支援基金「福島めばえ助成金」に寄付したそうですね。その際、南相馬市で無料のアコースティックライブも行ったとか。

 「木蘭の涙」という曲を歌って、歌い終わったときの拍手が「大丈夫だよ」「ありがとうね」って言ってるように聞こえた拍手だったんです。今まで熱い拍手というのは感じたことはあったけど、拍手に語りかけられたのは初めての経験で。やっぱり、結局僕は音楽で人とつながりたい、音楽を通じたエンターテインメントをやりたいんだなって。今回は震災(東日本大震災)後、2枚目のアルバムで、前作はつながることの大切さを書いたけれど、今回は切なさも含めて生きていく楽しさというか。僕らって生まれたら死ぬわけだから、生きること自体は悲しいものかもしれないけど、でもそれを“生きる喜び”っていえるんだから、悲しくても生きている、悲しくても楽しいっていうのを伝えたかったところはありましたね。

 <プロフィル>

 スターダスト・レビュー メンバーは、根本要さん(ギター&ボーカル)、柿沼清史さん(ベース&コーラス)、寺田正美さん(ドラム&コーラス)、林“VOH”紀勝さん(パーカッション&コーラス)の4人。1981年にシングル「シュガーはお年頃」とアルバム「STARDUST REVUE」でデビュー。根本さんが初めてハマッたポップカルチャーは、映画「ウッドストック/愛と平和と音楽の三日間」。「中学1年生のときに兄貴に連れられて見て、すごくショックを受けましたね。ウッドストックは1969年にNYの郊外で行われた大フェスティバルだけど、ジミ・ヘンドリックス、ザ・フーといった英国のロックミュージシャンもいれば、キャンド・ヒートっていう米国のブルースバンド、フォークの女王といわれていたジョーン・バエズ、カントリー・ジョーっていう反戦歌を歌う人もいる。ベトナム戦争が行われてることも、“ラブ&ピース”っていう言葉も知って、当時の米国文化を僕はあの映画で全部手に入れたというか。いまだにウッドストック関連のものは集めていて、僕の家の入口にジミ・ヘンドリックスのフィギュアが置いてあるんですけど、それも『ウッドストック』のシーンのやつです」と話した。

(インタビュー・文・撮影:水白京)

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