Dinosaur Pile-Up:90年代オルタナを現代的に「キャッチーさとヘビーさの最高のところをミックス」

ロックバンド「Dinosaur Pile-Up」の(写真左から)マイク・シールズさん、マット・ビッグランドさん、ジム・クラッチリーさん
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ロックバンド「Dinosaur Pile-Up」の(写真左から)マイク・シールズさん、マット・ビッグランドさん、ジム・クラッチリーさん

 1990年代のオルタナティブロック、グランジ、ヘビーロックを現代の感覚で表現した、今注目の英国発3ピースバンド、Dinosaur Pile-Up(ダイナソー・パイル・アップ)が、ニューアルバム「ELEVEN ELEVEN」をこの夏リリースした。アルバムについて、自分たちのルーツや曲が生まれるきっかけになった経験などについて来日した3人に話を聞いた。

ウナギノボリ

 ◇「11」は特別な数字だった

 ――Dinosaur Pile‐Upという面白いバンド名ですが由来は?

 マット・ビッグランドさん:子どもの頃に「キングコング」のリメーク映画を見たんだけど、その中で恐竜がたくさん転がってきて、どんどん積み上がっていくシーンがあって。本当くだらなくてバカバカしいシーンだったけど、いつかバンドを組むときは絶対バンド名に付けたいと思っていたんです。

 ――確かに、サウンドもヘビーでインパクトがある曲ばかりなので、「Dinosaur」というワードはぴったりですよね。「SUMMER SONIC 2015」では、最新アルバム「ELEVEN ELEVEN」からいち早く何曲か演奏したそうですが。

 ビッグランドさん:サマソニでは、去年よりもお客さんが増えていて、確実に僕らのことを知ってくれている人が広がっているなと実感しました。そのときやったのは、アルバムタイトル曲の「11:11」と「Grim Valentine」と……。

 ジム・クラッチリーさん:「Might As Well」と「Bad Penny」もやりました。

 ――アルバムのタイトル「ELEVEN ELEVEN」は、どういう意味で付けたのですか。

 ビッグランドさん:何か深い意味があるというわけではないけど、どこか導かれたような不思議な感覚もあります。というのは、去年のツアー中から「11」という数字をあちこちで見つけるようになって。例えば信号とか電光掲示板の表示が、たまたま縦に棒が並んで「11」に見えたりとか。

 クラッチリーさん:大阪から東京に来る飛行機のゲートが11番だったり、新幹線の乗り場が11番だったり。取材でインタビュアーが持っていたパスモの有効期限が11月11日だったこともあったし。日本のスタッフがセブン-イレブンで買い物をしたとき、電子マネーカードの残額が1111円だったこともありました。

 マイク・シールズさん:最初は、携帯で時計を見たら11時11分だったことが何度もあったことに始まって。それから「11」を見つけるたびに、メールで教え合うようになったんです。

 ビッグランドさん:それ以来バンド内での共通のツボというか、僕らだけの特別な数字になって。今回のアルバムは、去年の活動の集大成でもあるから、これはもう「11」を付けるしかないよねって。

 ◇ヘビーな作品を作りたかった

 ――アルバム制作にあたって、何かテーマにしたものは?

 ビッグランドさん:テーマは特になかったけど、ヘビーな作品を作りたいというのだけはあったかな。

 ――「Bad Penny」の歌詞には、モーターヘッドというバンド名が出てきますが。

 ビッグランドさん:僕が曲作りで大事にしているのは、いかにリアルであるかということです。単にクラウドを盛り上げるためではなく、自分が本当に体験したことを曲にしたいと思っていて。「Bad Penny」は、自分が若いときの気持ちで、今も持ち続けている気持ち。モーターヘッドを初めて聴いて衝撃を受けた気持ちを曲にしたいと思って歌詞に書きました。

 シールズさん:この曲は「SUMMER SONIC 2015」でもやったんだけど、ライブで披露したのはその日が初めてだったんです。だからやる方もすごく新鮮だったし、みんなは初めて聴くのにすごく盛り上がってくれて。「Bad Penny」をあれだけ気に入ってもらえたんだから、他の曲も間違いないって確信しましたね。

 ――皆さんの音楽的なルーツは90年代のグランジとかオルタナとかですか。

 ビッグランドさん:主に90年代の米国のオルタナティブロックかな。モーターヘッドはもっと古いけど、好きなバンドのルーツをたどる過程で知って好きになって。

 シールズさん:やっぱりヘビーな音楽が好きで、たとえば「ニルヴァーナ」とか。

 クラッチリーさん:あとは「レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン」とか「ウィーザー」とか。

 ビッグランドさん:それと「フーファイターズ」。それも初期の!

 シールズさん:ウィーザーのファーストアルバムとセカンドアルバムは、90年代ロックの代表作だからね。ヘビーポップっていうか、ヘビーなのにメロディーがしっかりしていて。かつ、グランジではないのにロックしている。僕らが目指すのは、まさにこういうことで。キャッチーさとヘビーさの、それぞれの最高のところをミックスさせるのがいいんです。ヘビーでノリがいいのに、メロディーはキャッチーという。

 ーーボーナストラックの「Cross My Heart」は、他の曲とは雰囲気が違いますが。

 クラッチリーさん:ドリーミンですね!

 ビッグランドさん:この曲は、東京からロンドンに戻るときの飛行機で書いたんです。周りの人はみんな寝ていて、自分もちょっとうとうとしていて。それで、なんだかふわふわ浮かんでいるというか、夢見がちな感じの曲になりました。僕はヘビーロックも好きだけど、こういうソフトな曲も好きですよ。

 ――歌詞に「YOU」と出てきますが、これは日本のファンのことですか。

 ビッグランドさん:誰かってわけじゃなかったけど……。確かに東京でライブをやってロンドンに帰るときだったから、自然と頭にあったかもしれないですね。日本のファンだけではなく、日本とか日本の文化そのものが潜在意識にあったと思います。

 ――ちなみに、曲が生まれるのはどういうときですか。

 ビッグランドさん:子どもの頃から常に曲作りをしていて、これが自己表現の一つになっているから、それは自分でも分かりません。ただ、不思議とシャワー中にいいメロディーが浮かぶことが多いです。朝起きて浮かんでいたメロディーを整理しながらシャワーを浴びるもんだから、シャワー時間が長くなっちゃって……。

 ――実際に今回のアルバムで、シャワー中に浮かんだ曲は?

 ビッグランドさん:たぶんあると思うけど、そこまではちょっと思い出せませんね(笑い)。ただ、「Gimme Something」という曲は、朝起きてすぐギターのラインが浮かんだので、すぐ作業部屋に行ってデモを作ったのを覚えています。

 ◇3人でつかんだライブ感を楽曲に落とし込んだ

 ――前回のアルバム「Nature Nurture」は、マットさんお一人でレコーディングされていて。今回は3人でやったそうですが、どんな違いがありましたか。

 ビッグランドさん:もともとバンドで作りたいと思っていたのが、やっとできたという喜びが大きかったです。3人のほうが断然やりやすかったですよ。ここ2年、ずっと3人でツアーをやってきてつかんだライブ感を楽曲に落とし込むこともできました。

 クラッチリーさん:最初から目標が定まっていたから、悩んだり煮詰まることもなかったし。すごくいいレコーディングでしたよ。

 ビッグランドさん:2人が、僕1人では決して思いつかないようなフレーズやアイデアをたくさん入れてくれました。

 シールズさん:ジムがいいフレーズを弾いて、思わずみんなで「イエース!!」って叫んじゃう場面が何度もありました。

 クラッチリーさん:お互いのプレーを聴いて「それ、いいね!」って言い合っていたんです。

 シールズさん:すごくエキサイティングでした。

 ビッグランドさん:ただ、スケジュールがタイトだったし、朝から翌日の朝までかかってしまったりとか、時間的な大変さはあって。でも、それも含めて楽しいレコーディングだったという印象です。

 ――では最後に、このアルバムからどんなメッセージを受け取ってほしいですか。

 シールズさん:僕らが世界で一番カッコいいバンドだということが伝わればうれしいです。

 クラッチリーさん:ナンバーワンだってことがね!

 ビッグランドさん:メッセージというよりも、フィーリングというか、何かを感じてもらえたらうれしいです。例えば僕が14歳のときに、レイジやニルヴァーナ、スマパン(スマッシング・パンプキンズ)などを聴いて、彼らの音楽に衝撃を受けたように、みんなにもそういう感覚を味わってほしいです!

<プロフィール>

 マット・ビッグランドさん(ボーカル&ギター)を中心に、2007年に英国で結成。メンバーチェンジを重ね、ジム・クラッチリーさん(ベース)、マイク・シールズさん(ドラム)で活動している。これまでに「NATURE NURTURE」「GROWING PAINS」など作品をリリース。14年には全24公演のUSツアーを行ったほか、「SUMMER SONIC 2014」で 初来日を果たし、2年連続でサマソニに出演。12月10日には、東京・渋谷CLUB QUATTROで待望の単独来日公演「Dinosaur Pile‐Up JAPAN LIVE 2015」を行う。

(取材・文・撮影/榑林史章)

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