動物キャラクターによる不条理ギャグを30年にわたって連載中のいがらしみきおさんの4コママンガ「ぼのぼの」がアニメ化され、4月からフジテレビなどで毎週土曜午前4時52分に放送されている。20年前に一度アニメ化されたこの作品が選ばれたのはなぜか。「サザエさん」などで知られるアニメ制作会社エイケンの松下洋子プロデューサーと山口秀憲監督に話を聞いた。
ウナギノボリ
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松下プロデューサー (2013年放送開始の)「鉄人28号ガオ!」の後枠でマンガ原作を探していました。ところが今のマンガは、面白い半面、厭世(えんせい)的すぎてファミリー層に向けてアニメ化したい作品がなかなか見つからなかったのです。そんなとき「ぼのぼの」のグッズが女性に人気であることを知りました。原作マンガは読者のターゲットが広く、読後感も良い。エイケンの持つノウハウを生かし、ファミリー層向けに愛される作品が作れそうと思ったのです。
山口監督 実は原作の「ぼのぼの」が大好きで、プライベートでもグッズを持っているほど。だから企画が上がったときに「しめた!」と思って、手を挙げたら選んでもらえました。僕は「ぼのぼの」をやるために生きてきましたから(笑い)。ファンになったのは、コミックスの2巻ごろから。当時、模型雑誌を買っていたのですが、モデラーの方が「ぼのぼの」を勧めていたのです。じゃあどんな作品だろう?と読んでみると、青いラッコがいて、今までにないタイプのマンガ。どこに行くか先の読めないストーリーなのに、ちゃんとオチがある。また汗が大量に出る演出など当時は画期的だったんですよ。
山口監督 マンガの世界が動いていると思ってもらえたらうれしいですね。地に足のついた実写のようなイメージで作っています。難しいのは、アニメで説明しすぎると、原作の持つ世界観が壊れるので、なるべく一言で説明するのはもちろん、笑い、間、モノローグ、背景を駆使して、説明せずともわかってもらうように工夫しています。アニメで原作マンガの雰囲気を出すため、あえて原作マンガにあるナレーションを使っていません。
山口監督 そうですね。だからとり直しも多く、私からの要求も多いと思います。短いと一言に気持ちを乗せてくる場合が多いのですが、それだと(表現しすぎて)「違う!」となるんですよね。主人公のぼのぼのは、声に気持ちは出ないけれど、その気持ちを出せるかが大事。あと良いせりふも多い作品ですが、人間の心理として、良い言葉があると格好良く言おうとするのです。それが過剰演出になってしまうわけで、本当に大変だと思います。
松下プロデューサー 続けられる限りやりたいと思っています。流行を追うのでなく、じわりと浸透していけば。やる以上は3世代が見るようなアニメにしたいし、「クレヨンしんちゃん」や「アンパンマン」のようになりたいと思って取り組んでいます。アニメを作ると、安定するのに半年はかかるんです。声を当ててみて初めてわかることも多いし、それを受けて脚本やシナリオを変えることもあるんですよ。長くやりたというのはそういう理由があるんです。
山口監督 尺が短いので原作マンガのどこを選び、どこを落とすのか苦しんでいますが、短い尺はむしろ武器になると思っています。みんなが忙しい時代ですし、30分アニメを見るのはパワーが必要ですからね。「ぼのぼの」は好きなスタッフが多いので、社内での意思統一が容易なのは強みでしょうか。
松下プロデューサー これはエイケンの特徴ですが、監督から編集、撮影までほぼ自社内でやるんです。キャラクターデザイン、作画監督、色指定、仕上げ、美術監督もみな社員です。なので何かあれば集まってすぐ相談するわけです。制作がスピーディーで一体感があるのが強みだと思っています。
松下プロデューサー 午前9時半には出社していますね。これは会長の村田英憲の考えですが、ファミリー向けアニメを作るのであれば、作っている人が普通の人と同じ生活をしていないとダメだという考えなんです。ですからちゃんと休みも取りますし、徹夜も避けます。そうしないとアニメを長く作れないんですよ。
山口監督 23日にDVDとブルーレイの1巻が発売されました。ソフトで見ても楽しめるような作りになっているので、ぜひ見ていただけるとうれしいです。
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