話題のマンガの魅力を担当編集が語る「マンガ質問状」。今回は、「マンガ大賞2017」の大賞を受賞した柳本光晴さんの「響~小説家になる方法~」です。「ビッグコミックスペリオール」(小学館)の待永倫(まちなが・とも)さんに作品の魅力を聞きました。
ウナギノボリ
10年前の朝ドラ「花子とアン」 当時の吉高由里子インタビュー
--この作品の魅力は?
「圧倒的な天才を描きたい」という作者・柳本光晴さんの思いから生まれた、天才文学少女である主人公・鮎喰響(あくい・ひびき)の魅力だと思います。彼女が初めて描いた小説「お伽の庭」が、とある文芸誌の編集部に届くところから物語は始まります。その圧倒的な内容はまたたく間に文芸界を変え始めますが、同時に作者である響という少女の、天才ゆえの生きざまが、周囲を打ちのめしてゆく……。その痛快さをぜひ体感してください。
--作品が生まれたきっかけは?
柳本さんの前作「女の子が死ぬ話」の第1話が他社の雑誌に掲載された時点で、前担当が連絡をして会いに行きました。「皆が知っていることで、かつ、まだ誰もマンガでは描いていない」物語の縦軸となる分野を考えたとき、柳本さんに「文学」が降りてきたそうです。柳本さんのお話では、前担当はあだち充先生の「タッチ」を柳本さんに渡し、「あだち先生は1億部です。まず1000万部を目指しましょう!」と口説いたとか。
--編集者として作品を担当して、今だから笑えるけれど当時は大変だった……、もしくはクスッとしたナイショのエピソードを教えてください。
私は2代目の担当なのですが、前担当より作品を受け継ぐ際、私自身も作品のファンだったことと「柳本さんは響のような人」だと聞いていたこともあり、緊張しました。しかも引き継ぎ当日、柳本さんより「あなたにだけは担当されたくなかった」と言われてしまい(どうやら前年の謝恩の会での酔態を見られていたようです)、さながら響にパンチを食らったような状況でした。しかしそれは、創作においては本音でぶつかり合うという作家・柳本光晴の姿勢そのものですので、今ではむしろすがすがしい記憶です。
--今後の展開は。
この作品は響という圧倒的な才能による波紋が大きくなる様子を描くと同時に、彼女の高校3年間を描くという作品でもあります。高校1年生でデビュー作「お伽の庭」を描き、芥川賞・直木賞を受賞した響は現在高校2年生。なんと、友人が勝手に自分の小説をライトノベルの賞に応募してしまったことから、ライトノベルの部門で賞をとってしまう……という「ライトノベル編」に突入しています。きっと皆さんが想像しない展開となりますので、楽しみにお待ちください。
--読者へ一言お願いします。
読み始めは響というキャラクターの大胆な行動に驚く方もいらっしゃると思います。ですが読み進める内に、実は筋の通った彼女の行動と、時に見せる可愛らしさの虜(とりこ)になること請け合いです。まずは一度手にとって、お読みいただけるとうれしいです。その先に実写化やアニメ化など、うれしいご報告ができる日がくることを祈っております。
ビッグコミックスペリオール編集部 待永倫
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